とある朝
「此度の人生、お疲れ様でございました。」
「・・・はい、?」
なんてやりとりをして半年が過ぎようとしていた。
ビュンビュンビュンビュン
小屋の外から聞こえる音を目覚ましに俺はゆっくり目を開ける。
目を開けると窓から差し込む光に、思わず手で覆いたくなる。
「朝か...」
はだけた寝巻きを整えながらベッドから降りる。小さな小屋には2つのベッド。最低限の生活スペースを整えただけの1ルームだ。木を積み上げただけのお部屋は、隙間風いらっしゃい防音0の訳あり物件だ。
そんな空間なので、当然布団から出たくないが、このビュンビュン聞こえる空間では満足に二度寝もできそうにない。
「やむなし」と自分に言い聞かせ、はだけた寝巻きを整えながらベッドから下りようとする。自分が寝ていたベッドの傍にある鏡の自分と目があう。自分の姿を確認する。
「寝起きでも可愛いな...。」
そんなことを呟きながら相変わらずビュンビュン音のする方へと足を運ぶ。
ドアを開けてやれば、心地よいとは言い難い冷たい風が体に突っ込んでくる。と同時に視界に入ってくるのは、自分の身長と同じくらいの大剣を剣道さながら素振りをする1人の男。
「朝から元気だねぇ。このクソ寒い中ご苦労様です。」
そう声をかけると、奴は剣を置き、こちらの方を向く。
「何をおっしゃいます。もう既に六刻も半を過ぎておりますよ。」
「ええ?!」
六刻半すぎ...日本で言ったら11時過ぎじゃねぇか。
「相変わらず朝弱いなぁ。俺...」
「弱すぎです。」
「なんでお前は、朝から大剣振れるほど元気なの...。」
「この時間はもう昼ですよ。まあ、日の出前には起きて鍛練はしておりましたが...。眠気は気合いで乗り切れます!」
「なんでそんなに脳筋なの...」
「ノウキン...?」
「はあ...」とため息吐きながら、寒いことを言い訳に扉を閉める俺。再びビュンビュンと音がし始めた。「向上心のないやつはバカだ」とは言うが、向上心ありすぎるのも考えもの...いや、そうでもないのか。
そんなことを考えながら朝の身支度をするのであった。