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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

悪霊パンチ

作者: はやぶさ

僕は昔から運が悪い。

じゃんけんが弱いとかそういうものだけではなく、よくないものとの遭遇率も格段に高い。

それは不良に絡まれるとか、事件に巻き込まれるとかではなく、何というか......悪霊とかそういうものに遭遇してしまう。

何を言っているかわからないかもしれないが、僕もわからない。

小学校を卒業したころくらいからそういったものを感じ取るようになってしまい、引き寄せるようになってしまった。

悪霊に対して僕らができることは逃げることだけだった。

そして僕の悪運は僕以外の人にも牙をむいた。

友人や家族、周辺に歩いていた知らない人全てを巻き込んでしまう。

僕は疫病神なのだ。



僕は今押入れに隠れている。

追われているのだ。

今回は人による悪霊で、なにか恨みとか特有の血筋とかそういったのもで変質してしまった悪霊だ。

屋敷を探索していてそういった資料がこれ見よがしに転がっていたので多分そうなのだろう。

幸い僕は正露丸を持ち歩いていたので殴られても何とかなったのだが、肝心のものが見つかっていない。

今回は死んだ人間が作用しているようなので、死体を埋葬するとか、焼却するとかすれば解決すると思うのだが、全然見つからないのだ。

パターンとしては単純な見落としや、身体能力的に届かない場所にあるや、悪霊当人が持っている、もしくは遺族とかが持っていて今ここにないなどの可能性がある。

大体前者三つなのだが、後者の場合は......考えたくないな。


もちろん逃げ出すという選択肢もあるのだけど、それをすると半分くらいの確立で悪霊が解き放たれてしまうのだ。

僕は自分の悪運で傷つく人を易々見過ごしたくはない。

だから解決を目指しているのだ。


近くで襖が開く音がした。

畳を歩く音。近い。

足音が止む。

押入れの隙間に影が差し込む。

(気づかれている......一か八か飛び出すか)


押入れが勢い良く開かれる。

僕は勢い良く押入れから飛び出る。それと同時に悪霊にぶつかった。

勢い良くぶつかったので両者転倒する。

(......両者転倒?)

悪霊から僕はいつも逃げてきていた。

それは悪霊と対峙できるような技能を持っていないからだった。

しかし冷静に考えると悪霊が僕に触れられるのならば、僕も当然触ることができるのだ。


急いで起き上がり未だ転倒している悪霊を見る。

顔は老婆、身長は170ほどありかなり高いが、かなり瘦せている。

爪は武器のように伸びていて唇はなく、歯がむき出しになっていて黒く汚れている。

黒い髪も足元まで伸びていてとても長くて、肌は陶器のように白い。


起き上がって見下ろす僕に唸り声をあげてとびかかってくる。

僕はとびかかってきて無防備な頭に上から拳を叩き込んだ。

悪霊の体重は見た目通りかなり軽く地面に押さえつけることができた。


(......勝てるじゃん)



朝、僕は清々しい気持ちで屋敷を出た。

今まで心臓に負担をかけて逃げ回っていたことが馬鹿らしい思いだった。

ふと門のほうを見ると、僕と同年代くらいの女子高生が立っていた。

人間だ。しかし綺麗だがどことなく顔立ちが悪霊に似ている。

傷だらけの僕を見てぎょっとした顔をしている。

そして抱えるようになにかお守りみたいなものを握りしめている。

僕は清々しい気持ちだったので彼女を無視して門を出た。


少女は意を決したように声を出す。

「あ、あの......ここで何をやっていたんですか?」

僕は清々しい気持ちだったのでこう言った。

「プロレス」

「あの、ちょっ......」

何か言いたげな少女を無視して僕は月一で悪霊イベントがおきる一人暮らしのアパートへの帰路に就いた。

途中で悲鳴が聞こえたような気がしたが、僕は清々しい気持ちだったので特に気にすることは無かった。

ただ、道中ホームセンターに寄ってバールを買った。

僕は清々しい気持ちだった。

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