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12 とりあえずの状況把握

 善は急げとばかりに、シュゼットはレアを伴い屋敷を回り、使用人たちへの挨拶……と見せかけ、例のユベールの甥について探っていった。


「いえ、その……私の口から申し上げるようなことでは……」


 そう口を堅く閉ざす使用人もいれば、


「もう、見ていられませんよ! あの子たちだってご両親が亡くなって寂しがっているでしょうに、ユベール閣下とはどうも折り合いが悪いようで……あっ、私がこんなことを言っていたなんて閣下には秘密にしてくださいね?」

「確かに家庭教師はついていますよ。……短期間での退職が続いていて、現在は十二人目ですが」

「坊ちゃま……いえ、閣下の兄君が亡くなられて以来、あの子たちはほとんどこちらの本館には近寄りませんね。私も気になって入るのですが、立場上勝手な行動を取るわけにもいかず……奥様、どうか奥様から閣下に進言してはいただけないでしょうか?」

「……善処するわ」


 一通り屋敷を回り、自室へ戻って来たシュゼットは大きくため息をついた。


「なるほど……ね」


 もっと難航するかと思いきや、意外と込み入った事情を教えてくれる使用人が多かったのは嬉しい誤算だ。

 逆に言えば、それだけ内部情報を漏らす使用人が多いということで、統率が取れていないともいえるが――。


「……やっぱり、皆問題だとは思っているのよね」


 いくら雇われとはいえ、シュゼットがユベールの(未来の)妻という立場である。

 だからこそ、彼らはシュゼットがこの状況を打開してくれるのではないかと期待を寄せているのかもしれない。

 家族殺しの疑惑がある死神侯爵と、残された忘れ形見の子ども……。


(それも、一人じゃないなんて)


 先ほど話を聞いて驚いたのは、どうにも亡くなったユベールの子どもというのはあの少年一人ではないらしい。

 なんでも彼には妹がいるのだが、彼女は兄に輪をかけて別館から出てこず、本館の使用人たちも心配しているのだという。


 兄の名はアロイス。シュゼットが泥団子をぶつけられそうになった子だ。

 妹の名はコレット。両親が生きていた頃から、体が弱くおとなしい子だったという。


「そんなことすら、教えてはくれなかったのよね……!」


 お前には関係ないとでもいいたげなユベールの態度を思い出し、またむかむかとしてきたが……なんとか怒りを抑えシュゼットは情報整理へと戻る。


 現在、ユベールの兄の忘れ形見である兄妹は、新しく当主になったユベールと折り合いが悪いようで、ここ本館には近寄らず別館で生活している。

 面倒は別館の使用人が見ているというのだが、同僚である本館の使用人ですらはっきりした状態は把握していないのだという。

 ユベールが言った通り彼らには家庭教師もついているが、ここ一年ほどで十二人も――ほとんど一月も持たず、早い時では数日で家庭教師の方から辞めてしまうのだという。

 原因は不明だが……シュゼットが出会った少年の態度を思い出せば、なんとなく想像はつく。

 あらためて現在の状況を整理し、シュゼットは再び大きなため息をついた。


(なんていうか……かなりまずい状況じゃない?)


 ユベールがきちんと二人の状況を把握し対策を打っているというのならシュゼットの出る幕ではない。

 だが現状は、とてもそうは思えないのだ。

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