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封印が解かれた悪魔たち 魔導士が残した少女を連れて未払いになってる契約の対価を回収する旅に出る

GC短い小説大賞にチャレンジしました。いつもより長めとなっておりますが、最後までお読み頂けましたら幸いです。

 ルマンド共和国のマロクリム村の山奥、小さな山小屋に住む老人と少女は、牛や山羊などの酪農で生計を立てていた。生活は豊かではなかった。祖父ジョセフが病で床に伏せる事が多かったからだ。


 少女ルーシーには夢があった。魔導士になることだ。


 魔法が使えるようになれば祖父の病気を治せるかもしれないし、稼ぎの良い仕事にありつけて、栄養があって美味しい料理を食べて貰えると考えた。看病と仕事の合間に、村の人から貰った魔法書で勉強した。だがルーシーは一度も魔法を使えた事はない。

 

 ジョセフの心境は複雑だった。


 ジョセフはイステリア王国の権力者に都合よく利用され裏切られた過去を持つ。将来魔導士となったルーシーが、自分と同じように酷い目に合わされないかと心配だった。

 ルーシーが日頃「魔導士になって病気を治す」「美味しい料理をごちそうする」と目をキラキラさせて言い張るために、魔導士になりたいという夢に反対は出来なかった。夢のままであって欲しいと思っていた。


 日が追うごとにジョセフは目に見えて衰弱していった。


 家畜の数も収入も減り、生活は厳しくなった。明日食べるものさえ悩ましい状況に追い込まれた。山小屋に残されたのは、牛のモーラと黒山羊のバフ、家畜の数が減ったために仕事の無くなった牧畜犬マルコだけになった。


 ルーシーは懸命にジョセフの看病を続けた。毎日毎日祈るように。


 「お願い、もう少し生きてて!魔法が使えるようになるまで待って!わたしを置いて行かないで」


 しかし・・・


 ルーシーの願いは届かなかった。声を掛けても体を揺さぶっても、ジョセフは眠ったままで、もう目を開ける事は無かった。ジョセフの体に顔を押し付けたルーシーは、悲しみで体を震わせながら声にならない声で泣いた。


 小屋に入り込んできた牛のモーラと黒山羊のバフ、犬のマルコが、ルーシーの後ろでジョセフの様子を伺っていた。


 「じじぃ、逝っちまったな」


 喋ったのは、牛の顔を付けた大男。


 「お陰で封印が解けた訳だが」


 今度は黒山羊の顔を付けた女。


 「ああ、ジョセフとの契約も切れたから我らは自由だ。だが待てよ。我らは契約の対価を貰ってなくないか?」

 

 背中に翼が生えて、尻尾が蛇になっている狼が契約の話を持ち出した。


 それらはジョセフが使役していた悪魔たち。ジョセフの命が尽きたために封印が解かれ、本来の姿に戻った。牛頭のモラクス、黒山羊頭のバフォメット、そしてグリフォンの翼と蛇の尻尾を持つ狼のマルコシアス。


 「ああそうだ、そうだとも。地獄に落ちるのならいずれは対価の取り立ても出来るだろうが、彼は善人だった。恐らく天国へ行ったと思うのだが、天国だと取り立ては少々面倒だ」


 バフォメットは片手で天を指差した。もう片方の手は床を指差している。


 「何を言う。戦争や魔物討伐など、てめぇの都合で幾多の命を奪っておいて善人とは言わねぇだろう。それはともかく俺は対価は貰ってねぇ。そもそもはイステリアが呪いをかけたからじじぃは死んだんだ。奴らに対価を払って貰えばいいじゃねぇか。ほら、『悪魔使役の代償は国民の命』って自分たちで言ってたんだからよ」


 モラクスは、良いアイデア浮かびましたって感じで、手のひらを拳で叩く。


 「それは妙案だ。ジョセフに我らを使役させ働かせたのがイステリア王国。その対価をジョセフから回収出来ないなら、その上位であるイステリア王国が責任を果たすべきである。理にかなっている」


 マルコシアスも賛同した。


 「いやちょっと待て。貴様ら対価は契約時に決めていたのでは無いのか?」


 バフォメットはニ体の会話を遮った。


 「それが実はな、契約満了時のサプライズって言われてな。中身知らねぇんだわ」


 モラクスは目をつむって、昔を懐かしむような、楽しい思い出に浸っている。


 「貴様よくそれで契約したな。まあ、私もなんだが」


 バフォメットはニヤッとし、手の甲でモラクスの厚い胸板にツッコミを入れた。


 「だよな!今までそんな契約持ち掛けてくる人間なんていなかったから、面白れーって思ってつい契約しちまったんだがな。じじぃが死ぬとは思わなんだわ。

 マルコシアス、お前は真面目だから、ちゃんと契約交わしてるんじゃないか?」


 「ジョセフは信用に値する人間だった。ゆえにジョセフの提案を素直に受け入れた」


 蛇の尻尾をブンブン振り回しているマルコシアスも昔を懐かしんでいる。


 「つまり、俺ら全員対価を知らされてねぇサプライズ契約って訳だな」


 悪魔たちは対価の内容がさっぱりわからない事がウケて、「何が善人だ?詐欺師じゃねぇか」とか「対価を払わず死ぬとは不届きな。殺してやる」とか「我らが驚くとんでもないものを用意する計画だったのだ」などと言いながら盛り上がっている。故人の前なのに。


 「あのぉ・・・」


 涙でグズグズになった顔のルーシーが、三体に向けて恐る恐る手紙を差し出した。


 「おじいちゃんが『三体の悪魔が現れたらこの手紙を渡せ』って。皆さん悪魔さんですよね?」


 モラクスが手紙を受け取って開封した。その手紙を三体が取り囲んで期待に胸を膨らませながら眺めている。


 そこには・・・


 『この子を頼む』


 とだけ書いてあった。


 悪魔たちは顔を見合わせた。モラクスは手紙の裏面を見たり、ひらひらさせて紙が重なっていないか、何か仕掛けが無いかを確認してみたが、何も無かった。


 「なぁルーシー、じじぃの手紙はこれだけか?」


 ルーシーは少し下向き加減で両手を胸の前でちょんとしながら『うん』と頷く。


 悪魔たちはまた顔を見合わせた。てっきりサプライズ契約の対価が示してある紙だと思っていたが、予想が大きく外れてしまった。


 「詐欺かよ」

 「騙された?」

 「おぉジョセフよ・・・信じてたのに」


 ルーシーは上目遣いで悪魔たちの様子を見ている。祖父が亡くなった途端に現れた得体の知れない悪魔たち。自分はどうなってしまうのか。涙は止まった。泣いている場合ではない。運命の分岐点に立たされている事を直感した。


 悪魔たちは、残されたルーシーをどうするべきか、使役され損にならないよう対価をどう回収するかを検討していた。


 「あの・・・、牛の頭をした悪魔さん?ちょっと聞きたいことがあるの・・・ですけど」


 ルーシーは勇気を出して聞いてみた。


 「俺はモラクスだ。今まで通りモーラって呼んでくれても構わねぇぞ」

 「えっ、モーラ?」


 ルーシーは凄く驚いてモラクスを凝視した。この悪魔が、いつまでも買い手がつかず売れ残り、最後まで生き残った大きな牛のモーラだったとは。確かに顔だけはモーラだ。図太っぽさでわかる。


 「そうだ。で、聞きたい事とはなんだ?」


 モーラはルーシーの目線に合わせて怯えさせないようにゆっくりと顔を近づけた。


 「さっき聞こえてきたのだけど、おじいちゃんが死んだのはイステリアの呪いのせいだって。おじいちゃんって、イステリアで悪い事してたの?」


 「その質問には我が答えよう」


 マルコシアスがしゃしゃり出てきて語り部口調で喋りだした。


 ***


 大魔導士ジョセフ。悪魔を使役し、イステリア王国の領土を侵略しようとする他国との戦争や魔物の討伐で大きな功績を収めた。その絶大なる力と、困っている人を見捨てない優しい人間性で多くの国民から慕われていた。悪政を敷いて国民を虐げていた国王よりも。


 その人気ぶりが癪に障った国王は、執行部に命令して『悪魔使役の代償は国民の命』などや『国家転覆を目論んでいる』と虚偽の情報を流布させた。それはもう執拗に執拗に。ジョセフを庇う者たちにも嫌がらせをして、あらぬ罪で捕らえたりもした。

 表立って庇う者が居なくなったところを見計らい、反逆罪の容疑でジョセフを捕らえた。その上で秘密裏に“魔力を放出できない呪い”と“真相を語れない呪い”をかけて国外追放した。


 当時の王国内では『処刑されなかったのは英雄の功績を踏まえた王国の温情によるもの』と言われていたが、それは国民に対する王国執行部の印象操作で、実際は違っていた。


 イステリアから追放された後もジョセフと悪魔たちは幾度も刺客に襲われた。魔法を封じられたジョセフ、家畜に封印された悪魔たちは反撃するすべが無く、逃げ延びるのが精一杯だった。牛になったモラクスに皆が乗り、走って逃げた。事情を知らない他国の兵士に『暴れ牛が爆走している』と通報されて騒ぎが大きくなった事もあった。そして流れ着いたのがイステリアから遠く離れた今いるルマンド共和国だ。この事を一度もルーシーに話さなかった、いや話せなかったのは、真相を語れない呪いのせいなのだ。


 また、魔力を放出できない呪いは、時間をかけて確実に魔導士を死に至らしめる恐ろしいものだ。魔力を体外へ放出する出口を、周辺の魔素を体内へ取り込む入口につないで塞ぐもので、魔力が放出できないだけでなく取り込む事も出来なくなる。

 魔法を使おうとすると、魔力が出口を探して減衰することなく体内を循環し続ける。体内の魔力コントロールも出来ず、魔力干渉が発生して内側から蝕まれていく。ジョセフの身体はこの呪いによって蝕まれ、死に至った。


 ***


 「・・・であるから、ジョセフはイステリアに対して悪い事はしていない。むしろ国と民のために良い事をした。だが、器が小さいくせに権力を振りかざす腐った人間に妬まれ、殺されたのだ」


 「そんな事でおじいちゃんを・・・」


 ルーシーはまたジョセフの体に顔を押し付け、怒りと悔しさで体を震わせながら声にならない声で泣いた。


 「マルコシアス、確かにそれは真実であるが、もう少し言い方があったのではないか?」


 バフォメットは呆れ顔になっている。マルコシアスは正しく真実を告げる事を是とする信条であるため、自分は間違っていないと首を横に振って応えた。


 この世の中には魔法と呪いが存在する。魔法は魔力で発動し制御がし易い反面、扱える魔力量つまり能力で効果が決まる。呪いは怨霊悪霊の思念をかき集めて発動する。一度発動したら術者が死ぬか滅多なことで解く事はできない。ろくなもんじゃないので禁忌の技である。


 「ともかくだルーシー、泣きながらでもいいから聞け。私らはイステリアへ行くが、お前の今後も気にしている。ジョセフの遺言であるから無下にもできんからな。

 どうだ、一緒に来るか?私らは対価を得られ、お前は復讐を成し遂げられるぞ」


 ジョセフの亡骸にすがって泣いているルーシーの背中に向け、バフォメットが問うた。


 「うわー、復讐をそそのかすとか、悪魔だなぁ~~」


 それをモーラが茶化す。


 「悪魔だが!!」


 バフォメットは少しキレ気味で、モーラの厚い胸板にツッコミを入れた。


 「ルーシー、我からも問おう。貴様がこのままこの山小屋に居座った所で餓死するくらいしか残されていない。復讐するか否かはともかく、我らに同行する事こそが生き延びる最適解だと思うがな」


 マルコシアスが背中を押した。


 ルーシーはすっくと立ちあがり、悪魔たちの方に向き直り、顔を上げた。


 「わかった。わたしもイステリアに行く。そして復讐する!」

 「そうだとも!共に行こうイステリアへ!」


 バフォメットは片膝を床につけ、片手でルーシーの肩を抱き、もう片方の手で玄関を指差した。


 「バフォメット、イステリアは貴様が指差した方向とは真逆。あっち」


 マルコシアスは顎で玄関の反対側であるイステリアの方角を示した。

 その直後、両側の頬をバフォメットに掴まれ、ぐりぐりされた。マルコシアスの尖った顎からは、むき出した牙と「ひひゃいひひゃい(痛い痛い) ひゃめへ(やめて)」という声が漏れた。



 山小屋の南側、見晴らしの良い崖の先端にジョセフは埋葬された。白い木の板で作られた十字架が刺さった場所の手前には、摘み取られた花が一束添えられている。ルーシーは両手を顔の前で結び、祈りを捧げた。


 ――おじいちゃん、今まで育ててくれてありがとう。わたしはおじいちゃんが使役していた悪魔たちとおじいちゃんの無念を晴らしにイステリアに行きます。またここに帰ってきたら成果を報告するね。それまでゆっくり休んでてください。


 「おいルーシー、準備が出来たなら行くぞ!」


 モーラが声を掛けてきた。ルーシーは立ち上がり、ジョセフのお墓に頭を下げて、モーラ達の元へ駆けていく。


 飛び立つ準備としてバフォメットとマルコシアスが翼をバサバサと広げている。ルーシーがその様子を見入っていると、マルコシアスが問いかけた。


 「乗りたいか?ルーシー」


 マルコシアスが『ここに乗れ』と首の付け根の翼の前辺りを蛇の尻尾で示した。ルーシーがマルコシアスに乗れた事を確認したバフォメットが号令を出した。


 「出発だ!」


 空高く舞い上がるバフォメット、マルコシアスとその背中に乗るルーシー。薄雲と太陽が段々と近付き、今まで住んでいた山小屋とジョセフの墓、そしてモーラの「おーい、おーい」という声が徐々に小さくなっていった。小さくなったモーラが手を左右に大きく振り、何か叫んでいる。


 仕方が無いので舞い戻った。


 「貴様、なぜ飛ばん!!」


 バフォメットがすかさずツッコミを入れる。


 「どうも使い魔たちが誰も集まらねぇんだ。家畜生活が長かったからか見限られたようだ。俺はお前らと違って翼が無いので自力では飛べん。使い魔頼りが仇になった。すまんがバフ、これは大変不本意なのだが、俺を抱っこして飛んでくれ」


 「そうか。じゃあ小屋の留守番、頼んだぞ」


 バフォメットは冷たくモーラの肩をポンと叩き、気を取り直して再出発だと号令をかけた。


 「いや待て待て、待ってくれ。ほら冒険、冒険者みたいに歩いて行かないか。旅行気分でもいい。馬車や、そうだな船を使ってもいい。ルーシーにとってもただの復讐なんかじゃなく、色んな経験を積ませてさあ、人生に厚みを持たせた方がいいんじゃないか。それにいきなり復讐しに行くにしても、鍛錬とか計画とか、時間も必要だろうしさあ」


 モーラは必死に説得しようとしているため早口になっている。身振り手振りも添えていて、わちゃわちゃ感が見苦しい。


 「仕方が無いな。ルーシー、イステリアに着くには随分遅くなるがそれでよいか?」


 マルコシアスに乗ったままのルーシーは、バフォメットの問いかけに『うん』と頷いてマルコシアスの背中から降りた。モーラはホッとして胸をなでおろした。


 「さて、徒歩での旅路となると悪魔の姿では悪目立ちするだろう。面倒事に巻き込まれない為にも人間の姿に擬態するぞ」


 そう言ってバフォメットは大人の女性に擬態した。


 「どう見ても悪女だなお前、確かに面倒事になりそうだから近寄って来んわ。相手がな」


 艶やかで黒く長い髪をなびかせた妖艶な美女となったバフォメットをモーラが茶化す。


 「何とでも言いなさいよ。取り合えず私はルーシーの母親役をやるわ。名前は今まで通りバフでいい。モーラ、あんたは父親役やってよね」


 「おいおい、喋り口調まで変えやがって。てかお前、そもそも女だっけ?」


 モーラは、屈強で精悍な、いかにも押しが強い男性に擬態しながらバフに喋りかけた。


 「私は男と女のどちらでもあるのだけど、ルーシーの事を考えて女にした訳。男ばっかりだと窮屈でしょ」


 モーラは「はいそうですか」という感じで肩をすくめた。


 「ところで我は何役となるか?」


 マルコシアスがバフに尋ねた。


 「あんたは犬!」


 「ああん?」


 「犬!」


 「貴様!馬車とか宿屋とかペット禁止かもしれないという懸念は無いのか!もういい!我はルーシーの兄役をやろうぞ」


 マルコシアスは15歳位の少年に擬態した。なんかチャラい。


 「さぁルーシー、お兄ちゃんだゾ☆ マルコ兄ちゃんって呼んでいいゾ☆」


 ルーシーは怯えた。変態風チャラ男マルコの精神攻撃から守ろうと、バフがルーシーを庇った。


 「マルコ、やっぱりあんたは犬。犬になれ!」


 「やだね☆ おいら、このキャラ気に入っちまったよ。身も心も軽くなってなんでも出来そうな気がするんだ!」


 皆は確信した。トラブルメーカーが誕生したと。そしてマルコシアスの最も優れていた知性と理性を失ってしまったと。


 そうして、父モーラ、母バフ、兄マルコ、妹ルーシーという擬態家族の、対価と復讐を目的としたイステリアまでの旅が始まった。


 ◇◇◇


 日が沈んだイステリア王国の城下町。戒厳令のために住民達の姿は無く、兵士や王国暗部の者が走り回っていた。


 「密告によると国家転覆を目論むジョセフらはこの辺りに潜伏しているはずだ。受肉した悪魔たちは目立つから、そう遠くへは逃げられん。お前たちはあちらを探せ」

 「はっ」


 小屋の外で王国暗部達の声や足音がする。灯りを消した小屋の中、奥の暗闇にジョセフと悪魔たちが隠れていた。


 「ジョセフ、何も隠れる事は無いではないか。我らは暗部など即座に屠れる。」


 マルコシアスが声をひそめながら言う。


 「おう、そうとも。なんだったら城ごと吹き飛ばしてやってもいいぜ」


 モラクスが小屋を出ようとするので、ジョセフが制止した。


 「そんな事をしたら、わしらを匿ってくれた者たちにも迷惑がかかる。ここは大人しく隠れておいてくれ。そうじゃ、家畜の姿なら奴らの目を誤魔化せるか」


 ジョセフは三体の悪魔の足元に一瞬で魔法陣を描き、詠唱を始めた。


 「待てジョセフ!我らは人間にだって擬態ぃぃ・・・」


 三体の悪魔は魔法陣の光に包まれた。


 「お前たち済まない。ほとぼりが冷めたら封印を解くからどうか許してくれ」


 そう言い残して、ジョセフは小屋を飛び出していった。


 「ジョセフがいたぞー!」


 大きな声とともに足音が大きくなり、ダンッという音とともに小屋の扉が勢いよく開く。兵士らしい男が入って来て小屋の中をざっと見渡す。牛と黒山羊と犬が隅でうずくまっていた。


 「悪魔はここには居ない。ジョセフを追え!」


 兵士は扉を開けっ放しにして駆けていった。


  :

  :


 日差しが降り注ぐ船首の甲板で、モーラは寝そべって昔を思い出していた。


 「そういやぁじじぃって、人の話は最後まで聞かないわ、早とちりするわでポンコツだったな。そのせいで長い家畜生活、今の俺の使い魔はゼロ?・・・ウケる」


 船はイステリア王国の隣、ゴイアバダ国の港町ブリガデロへ向かっていた。一行はルマンド共和国のマロクリム村を出て乗合馬車で最寄りの港に向い、そこから船を乗り継いできた。もう少しで港に到着する予定だ。


 船の中ではバフがルーシーに教育を施していた。復讐の炎が消えぬように、イステリア王国執行部や国王たち人間がいかに腐っていて悪政を行っていたか、その悪政に苦しむ国民をジョセフがいかに助けていたかを説いた。素直なルーシーは王国執行部と国王を憎み、復讐心をメラメラと燃やしていった。


 「でも注意して欲しいのは、腐った人間でも王国執行部や国王とはまるで違って、悪事は一切しない善人もいるって事。その人たちは見逃してあげてね」


 「知ってる。わたしに魔法書をくれた村のお姉さんが力説してた」


 対価の回収もざっくり決まった。モーラの発案で国王が大事にしてため込んでいるものを全て奪う事にした。


 「私らにとって価値が無いものであっても、嫌がらせとしては十分ね」

 「ついでに(ハート)も奪っちゃうゾ☆」

 「マルコシアス、あんたが懐かしいわ。帰ってきて」

 「おいらだよ☆」

 「ああ・・マルコシアス、どこいったの?」

 「おいらだってば☆」



 港町ブリガデロは、近隣諸国のハブ港の役目を担っているため商売人の往来が多く、様々な情報が得られやすい。悪魔たちがイステリアを離れて随分経っているために、ブリガデロで情報収集しておく事になった。

 港に到着した一行は一旦宿を取り、ルーシーを寝かしつけて夜の繁華街へ繰り出した。


 「情報収集ってのはセオリーってもんがあんだ。おいらに任せなって☆」


 そう言ってマルコは、ヤサグレ男が集まりそうな雰囲気のバーを見つけて、入口の扉を勢いよく開けて中に入っていった。そして間髪入れずに叫んだ。


 「おい!この中に『ガキはウチに帰ってママのおっぱいでもしゃぶってな』って言いそうな奴はいるか!」


 マルコに店内全員が注目した。いやフリーズした。いつも騒がしい店内に静寂の時が訪れた。


 「聞こえなかったのか?もう一度言ってやるゾ☆ ママのおっ・・」


 パ――――ンッ

 

 バフが店に入って来てマルコの後頭部を思いっきり叩いた。


 「あんた、いきなり何言ってんの!」


 店内がざわついた。「あれがママか?若くね?」などの声がした。


 マルコは叩かれた後頭部をさすりながら説明した。


 お酒が飲めない年齢の男がバーに入り、カウンターで何かしらを注文すると、店内から笑いが漏れる。そしてそのうち『ガキはウチに帰ってママのおっぱいでもしゃぶってな』って言う奴が出てきて、それがきっかけで乱闘になる。で、後日そいつが包帯ぐるぐるの痛々しい恰好で再登場して、欲しい情報をもたらす。だったら最初からそう言いそうな奴を探せば時短できるじゃないかと考えたとか。


 「ったく、そんなので情報屋が見つかれば苦労しないわよ」


 バフは呆れた。


 「あんたらが探しているのは俺の事かい?」


 一人のマッスルスキン男が声をかけてきた。『俺だ。ちょくちょく言ってるわ』とドキッとしたらしい。男にシンパシーを感じたモーラは熱い握手を交わした。


 「俺の名はロドリゲス。イステリアを往来するキャラバンの用心棒をやってる。キャラバンのリーダーがイステリアの内情に詳しいから、口を聞いてやるよ」


 キャラバンのリーダー、サントスの話では、イステリア王国の悪政はここ数年で一気に酷くなっていた。

 自由貿易は禁止され、多額の上納金を収めている業者しか商売が出来ない状態らしい。厳しい納税で富裕層を除いた国民の殆どが居なくなり、残された者も貧しい生活を強いられている。貿易品目も富裕層に向けた物しか取り扱えない。出入国も厳しく制限されていた。


 妖艶なバフによりあっさり手に落ちたサントスの計らいによって、キャラバンに紛れ込んでイステリアへ入国する事となった。モーラはロドリゲスと同じ用心棒として、バフはサントスの妻として。


 「それから申し訳ないが君たちは奴隷の檻に入って貰えないだろうか。手枷はすぐ外れるようにしておくから。奴隷以外の子どもを連れているキャラバンはこの辺りではあり得ないから目を付けられてしまうんだ。わかってくれるかい」


 サントスは申し訳なさそうにマルコとルーシーに頭を下げた。


 マルコとルーシーは奴隷が羽織る薄汚れた布を上から被り、檻を載せている幌馬車に乗り込んだ。檻の中には同年代の子ども達が手枷をして座っていた。瞳の光は消えており魂が抜かれているようで、兄妹が入って来たのにも関わらず無反応だった。


 キャラバンはイステリア王国の国境を越えて、中央城塞都市イステリアに向った。

 馬車から見える風景は見渡す限り荒れ果てていた。悪魔たちの記憶では、田園風景が広がる長閑な場所だった。街道沿いに町や村があって賑わっていたはずだった。しかし今は、町も村も廃墟になっていた。


 サントスは隣に座っているバフに語りかけた。


 「お気付きになりましたか。今やこの国は中央城塞都市イステリアくらいしか残っていません。それまであった町や村もみな、人は居なくなりました。納税が凄まじくて都市部に住む一部の富裕層しか暮らしていけないのです」


 バフはずっと荒れ果てた風景を眺めていた。サントスは更に続ける。


 「その富裕層も、奴隷などを強制労働させて財を成しているんです。まあ我々もその奴隷を運ぶのを手伝っている事にはなるんですが、奴隷を取り扱わないと行商の許可を得られないので仕方なくなんですけどね。嫌な世の中になってしまいました」


 バフはため息交じりに呟いた。


 「この国も国民もどうなろうが知ったこっちゃ無いけど、彼が命がけで守ろうとした国だったのよね」


 キャラバンは中央城塞都市イステリアの城壁まで到達した。ここはかつてジョセフが捕まり呪いをかけられた場所だった。


 城壁を超えた時、悪魔たちには違和感があった。


 「これは、悪魔除けの結界か。少し面倒な事になりそうだ。だが安心してくれルーシー。マルコ兄ちゃんがちゃんと守ってやるからナ☆」


 悪魔除けの結界は、並みの悪魔だと結界に弾かれてしまい、本来は結界内には入れない。モラクス、バフォメット、マルコシアスなど爵位を持つ高等な悪魔クラスだと結界の効果は薄く弾かれる事は無いが、それでもある程度の力は削がれてしまう。



 「そこの積荷、ちょっと待て」


 衛兵が駆け寄ってサントスに声を掛けてきた。他の衛兵も数名、キャラバンを取り囲むように駆け寄ってきた。


 「奴ら時々積荷に難癖付けて、賄賂を要求するんだ。元は城壁の外にいた盗賊かゴロツキだからな」


 警戒しているモーラに、ロドリゲスが耳打ちした。 


 一人の衛兵が奴隷の檻を載せた馬車に近づき、幌を捲って中を覗いた。ルーシーは衛兵と目が合ってしまったので「ひっ」と声を漏らした。それを聞いたマルコはルーシーを背中に隠した。

 衛兵はその様子を凝視していたが、そのまま幌を元に戻し、先頭の馬車でサントスと話をしている隊長らしき衛兵に駆け寄って小声で報告した。

 

 「衛兵長、奴隷の子どもが二名、洗脳処理されていません」


 「そうか」


 衛兵長はニヤリとする。口止め料と言う思わぬボーナスが舞い込んで来た。いやもっと稼ぐ事ができるかもと、お金の臭いを嗅ぎつけたようだった。


 「おいサントス、積荷を調べさせて貰うぞ!」


 積荷リストの紙をサントスから奪い取った衛兵長は、奴隷の檻の方へ歩いて行った。


 「すみません。前回多額の賄賂を徴収されたので今回は見逃してくれるはずだったのですが。少々不味い状況ですね」


 サントスがバフに耳打ちし、窓から手を出してロドリゲスに手信号を送った。ロドリゲスはそれを察知してモーラに耳打ちする。


 「騒ぎを起こす。それに乗じて仲間と逃げろ。俺らが出来るのはここまでだ」


 ロドリゲスは衛兵に気付かれないように、剣先で何頭かの馬車馬を突いた。驚いた馬たちが悲鳴を上げて走り出す。奴隷の檻の馬車も走り出したので衛兵たちは驚いて尻餅をついた。


 激しいスピードで走り出した振動で檻が揺れる。異常事態を察知したマルコは、予め渡されていた鍵で檻を開け、ルーシーの手を引っ張って馬車から飛び降りようとした。


 「待って。あの子たちは?」


 ルーシーは、激しく揺れる檻の中で身動き一つしない奴隷の子ども達を心配そうに見ている。


 「助けるチャンスはまだある。今は逃げよう!」


 手を強引に引っ張り、ルーシーの体を守るように覆いかぶさる体勢をとり、馬車から飛び出した。そのまま擬態を解いて空へ逃げようとした。が・・・


 「あれぇ?やべぇ」


 ズシャァッ


 マルコは擬態が解けず、そのまま道路に叩きつけられた。馬車もその先で壁に当たり大破した。

 衛兵たちの足音が近づいてきた。


 「かなり面倒な結界じゃないか。おいルーシー、大丈夫か」


 「う、う・・・ん・・・」


 幸いにしてルーシーは無傷なようだ。


 ザクザクッと槍がマルコ周辺の地面に突き立てられ、衛兵たちに取り囲まれた。その中で一番ガタイの良い衛兵が「これは上玉だ。金の匂いがぷんぷんするぜ」と言いながら、ルーシーをマルコから引き剝がし担ぎ上げた。マルコはその衛兵に食って掛かったが蹴り飛ばされ、他の衛兵の槍で服を地面ごと突かれ、身動きが取れなくなった。


 「小僧、観念しな。娘は貰ってく」


 「えっ、おいらは?」


 衛兵たちは大破した幌馬車から覗く檻を指差し、「ハウス」と言いながらハンドサインを出した。


 「くそぉっ、これがルッキズムか・・・」


 「マルコ兄ちゃん!!」


 ルーシーはガタイの良い衛兵に担がれたまま、手足を目一杯バタバタさせながらマルコに向って叫んだ。


 「初めて『マルコ兄ちゃん』って呼んでくれたね。嬉しいゾ☆って言ってる場合じゃねえ。ルーシー!!」


 衛兵たちは城壁と繋がっている建物へ向かって歩いて行った。

 マルコは幾つもの槍を引き抜いて追いかけたが、あと一歩の所で間に合わなかった。ルーシーは建物の中に消えた。そこに他の衛兵を振り払って追いかけてきたモーラとバフが合流した。


 「マルコ、大丈夫か!」


 「おいらは大丈夫だ。でもルーシーが」


 「私も見た。建物の中に連れて行かれた」


 「それと気が付いているだろうが、ここの結界は厄介だ。おいら擬態が解けなくなった」


 「そのようね。私も力が出ないわ」


 ロドリゲスやサントスなどキャラバンの人達は、騒ぎを起こしたために衛兵たちに連れて行かれてしまった。モーラとバフ、マルコでルーシーを救出するために、建物の中に侵入する事になった。しかし悪魔たちは擬態も解けないし、本来の力も使えない。


 「まぁ家畜よりは幾分マシじゃないか。まだ人間の方が使い魔ゼロにはなんねぇわ」


 モーラは余程恨みに思っているようだ。



 衛兵に担がれたルーシーは、神殿に運ばれていた。そこには白い布に金色の装飾が施された祭服を着込んだ、長い白髪に長いひげの老人が立っていた。衛兵はルーシーをその老人の前に降ろした。


 「大司教サイダー様、次の祭事にこいつを使えばどうでしょう。奴隷商の檻にいたガキですが、身なりもまあまあきれいですからいけると思います」


 「ほう、まあまあきれいか。どれ?」


 大司教はルーシーに近づきじろじろと眺め品定めしている。ルーシーは怯えた。声が出せず膠着している。


 「ふん、まあそこそこかのぅ。処置室へ連れて行け」

 「はっ」


 衛兵は再度ルーシーを担ぎ、神殿を後にした。



 建物への侵入経路を見つけるために周辺を探っていたマルコがモーラとバフのもとへ戻って来た。近くに大きめの排水溝があり、建物の地下に繋がっている。そこから侵入する事になった。

 ニオイの酷い汚水が垂れ流されている。排水溝の横に狭い通路があるので、汚水の中をじゃぶじゃぶ突き進まないだけ幸せである。途中の分岐点をいくつか過ぎて、狭い換気ダクトを無理やり通る。「あんたの尻がでかいのよ!」「俺のかよ!?」などすったもんだの末、ようやく建物の中に入れた。


 たどり着いた部屋は、甲高い声で笑うマッドサイエンティストが魔物を魔改造して最強ウェポンを作っていそうな研究施設のようだった。


 「ハァーーーーハッハッ、よく来たな人間ども!」


 声がする方に振り向くと、そこには檻の中に閉じ込められ、手枷足枷を取り付けられた豹の悪魔がドヤっていた。瞳がメラメラと燃えている。


 「さあ、早く檻から出せ!」


 「あ、お前、ハウラスじゃね?」


 マルコが気付いて声をかけた。豹の悪魔は『んんっ?』と目を細める。瞳から出る炎が邪魔で良く見えない。魔力感知に切り替えた。


 「そのオーラは・・・モラクスとマルコシアス?」


 「おう、久しぶりだな。元気だったか」


 「まあな。この通り囚われの身だがな。隣の檻にはグレモリーもいるぞ」


 ハウラスの後ろの檻の中に、美女の悪魔が寝台に手枷足枷+チェーンで固定されていた。


 「あら、お二人ともお久しぶりね。こんな姿でごめんなさいね。私も檻から出して欲しいのだけど。ところでモラクス、後ろにいるその女は何?」


 グレモリーは拘束された寝台から可能な限り首をあげて、バフの方を怪訝そうな顔で見ていた。


 「ああコイツはバフォメット」


 「バフォメット?昔の72柱の仲間にはいなかったわよねぇ」


 「同じ魔導士に使役されていた仕事仲間さ。今は訳あって夫婦やってる」


 その瞬間、グレモリーの手枷足枷+チェーンは弾け飛んだ。グレモリーはゆるりと寝台から立ち上がり、檻の柵を捻じ曲げて出てきて、顔を斜めにしてバフに詰め寄った。


 「なんだコラァオメーはよォ、どこのモンだか知ンねェが仲間に色目使ってンじゃねーゾォ!?アァ?」


 モーラが慌ててグレモリーを引き剥がす。


 「待て待て待て待て、夫婦っても便宜上だ。魔導士から預かった女の子を連れて旅をするための一時的なものに過ぎねぇ。落ち着けって、なあ?」


 グレモリーは、フーッフーッって息が荒くなっている。

 その様子を終始冷たく受け止めていたバフが口を開いた。


 「グレモリー、あなたよくわかってないようだから分かりやすく簡潔に説明してあげる。モラクスは私を選んだの」


 ガァーーーーーーンッッ

 ガラガラー・・・・


 ハウラスが入ったままの檻がバフに向って凄い勢いで飛んで行った。壁も床も研究だかで使われていた機材も何もかもぐちゃぐちゃになり粉塵が舞っている。ハウラスは檻から投げ出され、壁に当たって部屋の隅できゅぅぅと気絶している。檻はさらに転がって、隣の隣の部屋の奥の方に突き刺さっていた。

 フーッフーッって息をしながら投球モーションのままになっているグレムリーの横に、無傷のバフが現れた。グレムリーの肩をぽんと叩きながら耳元で囁いた。


 「冗談よ。私の好きな人は別の人。もう死んだけど。だから安心して」


 「死んでんだったら、鞍替えの心配があんじゃねーかョ・・・」


 その顛末を見ていたモーラとマルコ。


 「あいつ『男と女のどちらでもある』とか言っておきながら、ほぼほぼ女じゃん」

 「女の戦い怖ぇー☆」

 「好きな奴もう死んだって言ってたけど、ひょっとしてハウラス?」

 「いや違げーだろ、ハウラスは生きてっし☆」


 ハウラスも結果的に檻から出られ、手枷足枷も粉々に砕け散っていた。

 

 モーラとバフ、マルコ、新たに加わったハウラスとグレモリーの悪魔五体で、ルーシー救出作戦会議が開かれた。ハウラスはマルコと仲良しなので手伝うと言ってくれ、グレモリーは『モラクス(モーラ)のすることは私のすること』なのだそうだ。それでかグレモリーの距離感がおかしい。モーラにピットリとくっついて、時々バフに対して「ふふん」と自慢げな顔を見せつけている。


 まずは悪魔除けの結界をどうするか、それからルーシーの居場所はどこか、どう救出するかである。


 ハウラスは城内に詳しかった。城壁に沿って等間隔で魔法陣が描かれている。魔法陣は直列で制御されているから、どこか一つを破壊するだけで結界は徐々に崩れていく。


 「なんでお前がそんなに詳しいのサ。昔っから嘘つきだったから適当な事を言ってんだろ?」


 「仲間には嘘つかねぇって。この研究施設に出入りしてた奴らが『すげー秘密知ったから教えてやる。誰にも言うなよ』っていろんな奴にベラベラ喋ってるもんだから全部聞き覚えたんだって」


 魔法陣の破壊は、情報漏えいで得た知識を持つハウラスが担当することになった。


 「私も結界のせいでずっと檻の中で拘束されてて辛かったわ。これでやっと力が出せるのね」


 「えっ?」と、グレモリーを見るその他の悪魔たち。


 ルーシーの居場所は、グレモリーが探索できるそうだ。悪魔除けの結界の影響で今は難しいが、人間らしからぬ特殊のオーラを持っているために、結界を無力化できれば場所が特定できると言う。


 「ルーシーが特殊って?」


 「今まで一緒にいたあなた達が気付かなかったのは意外だわ。彼女には偽装が施されているようで、人間のようにも思えるけど多分違う。実態が掴めないというのが本音」


 グレモリーは説明を続ける。偽装によってオーラ放出の総量を調整している様子が伺える。総量を絞っているために、素人見えには一般人並みかそれ以下のオーラに見せかけているようなのだ。その偽装の影響で、グレモリーが感知すると相当特殊なオーラに見えるらしい。


 「しかし誰が何のためにこんな事をしたのかしら。とても興味があるわ。ともかく偽装を解いたらとんでもないオーラを発するでしょうね」


 グレモリーの知的好奇心をくすぐったようだ。


 「じゃあルーシーが魔法を使えないってのは、オーラを絞って不完全になっているせいなのか?」


 「さすがモーラね、その通りよ!多分だけど」


 ◇◇◇


 ドーーーンッ


 城壁のてっぺんから爆発音がした。ハウラスが魔法陣の一つを破壊したのだ。その音を聞きつけた城壁の保守員達が駆けつけてきて、破壊現場から離れようとするハウラスと通路で鉢合わせになった。保守員は豹の姿をした悪魔を見て驚きながら声をかけた。


 「な、何者だ!」


 「この先は通行止めだ。他を当たれ」


 ハウラスは通路に立ちふさがっている。瞳の炎がメラメラしていた。


 「あ、どなたか存じませんがご親切にどうも。よしみんな、迂回路から行くぞ!」

 

 保守員達は踵を返し、少し下がったところにある階段を下りていった。「見た目より優しい感じだったね」とか「瞳から炎が出てるから熱血系かと思った」「よかったー、火事現場に突っ込めって言われたら嫌だもんねー」という声が聞こえてきた。


 王国執行部室では執行部員が走り回っている。そこに大司教サイダーが衛兵を連れてやってきた。


 「この騒ぎは何事じゃ!」


 大司教は強い口調で執行部のリーダーに詰め寄る。


 「城壁魔法陣の一つが破壊されました。恐らく人為的にです。今、保守員が現場に向って復旧作業をしています」


 「遅い!結界が完全に無効化となる前に急いで予備魔法陣を起動させろ!なにをもたもたやっているのだ!」


 大司教は執行部のリーダーに怒鳴った。リーダーは袖で顔を拭った。飛沫がついたようだ。


 「だから今、保守員が現場に速攻で向ってて、復旧作業を決められた手順通りにやるってんだからさぁ。やる事はキッチリやってんの!毎回毎回大声上げないでくれるかなぁ?ホントうっとおしい」


 他の部員は「あの人、ついに言っちゃったよ」とか「リーダー、まじ尊敬」とひそひそ声で言った。


 「何を貴様!偉そうに口答えするな!首を切るぞ!」


 大司教は更に声を荒げた。


 「それはありがたいね。こちとら派遣で契約以上の仕事も遅くまでさせられてて、働きに見合った賃金頂いてないんだ。見渡して見ろよこの部屋を。全員派遣でプロパーが一人も居ないじゃないか。派遣に責任おっ被せんなよ。契約切ってくれた方が幸せってもんだ」


 執行部のリーダーは仕事内容に相当不満を持っているようだった。なお本来の執行部員=プロパーたちは、長期休暇などなどを取りまくっていて、ここ数年殆ど姿を見せていない。


 「衛兵!こやつを連れて行け!」

 「はっ」


 大司教と一緒に入って来た衛兵達が、リーダーの両腕を掴んで強制連行して行った。ずるずると引き摺られながら部屋を出て行くリーダー。


 「じゃあみんな、後はよろしく。引継ぎは出来ないけど、命あったらまた会おうね~」


 大司教も悪態をつきながら部屋を出ていった。


 残された執行部員はざわつく。

 「魔法陣一個壊れただけでこれとかヤバくね?」とか「もう終わりだねこの国も」などの言葉が飛び交う。そのうち「ちょっとトイレ」「私、用事を思い出した」と言って何人かが部屋から出て行き、その様子を見ていた他の部員たちも「帰ろうぜ」と言い、荷物をまとめて出て行った。

 王国執行部の内部崩壊が始まった。


 怒り心頭の大司教は衛兵達と別れ、玉座の間に向った。


 玉座の間の壇上では、王の椅子と王妃の椅子が向かい合わせでくっついており、窮屈なベットの状態となっていた。そこに国王が寝そべっており暇そうにしていた。そこに大司教が入って来た。


 「国王様、ここは危険です。お逃げください」


 大司教は早足で国王に近づき進言した。


 「はぁ?確かに爆発音はしたけど、逃げるほど危険な事でも起きてんの?」


 国王は大司教の進言を聞いても寝そべったままで、興味なさげに返答した。


 「魔法陣が一つ、何者かに壊されました」


 「だからさぁ、魔法陣が一つ壊されたからって逃げるほど危険なのかって聞いてんの」


 「その・・・悪魔除けの魔法陣なので悪魔が入ってくるかもしれなくて・・・」


 「悪魔が入ってくるかもって、そうなる可能性の話だよね。それに魔法陣だけが対策なんだっけか。そういや前に『捕まえた悪魔二体で最強ウェポン作る』って言ってたよね。あれどうなったの?結果を聞いてないんだけど」


 「その何と申しますか、担当していた科学者が頭おかしくなって退職して・・・それから忙しかったんで忘れてました」


 「忙しかったぁ?僕知ってるよ?あんた毎晩貿易系や他国の派遣斡旋とかの商人呼んで会食してたでしょ。同席させられた執行部の子らが愚痴ってたんだよね。『大司教がウザ絡みしてくるからやめてほしい』って。それで忙しいって何なの?無能なの?

 それにあんたさ、父の代から仕えてくれてるからアレだけど、父が死んだ時に『国政はお任せください』って言ったよね。それでこの国がたった数年でこのザマよ。どうすんの?まぁずっと見て見ぬふりしてた僕の方も悪いんだけど」


 大司教サイダーは涙目になって、賢者の杖を国王に向って投げつけた。そして玉座の間から走って出て行った。杖は王の椅子に当たって転がった。

 王国上層部で仲間割れが始まった。



 玉座の間から飛び出した大司教は憤慨していた。

 配下の者や権力者達に施した“操りの呪い”が効かなくなってきている。前国王に取り入り、長い時間をかけて気が付かないように国王や執行部に“操りの呪い”をかけてきた。現国王は王子の頃から無気力無関心だったので懐柔は簡単だと思って、ごにょごにょやって代替わりさせたが、全く思い通りに動かせない。何故こうも上手く行かなくなってしまったのか。何が間違っていたのか。


 ーーこうなったら小娘を生贄に使って、我が神から不老不死とともに絶大な力を得よう。処置室に監禁しているはずの小娘を神殿につれていかねば。



 衛兵長が廊下を歩いていたら、後ろから走って来た大司教に声をかけられた。怖い顔をしていたので怒られると思って身が竦んだ。


 「衛兵長、先刻の小娘は処置室におるのか?」


 「あぁっ、それがですね、処置室の出入り口扉に何故か研究施設のとこにあった檻がぶつかってて、壊れて入れなかったんで、仕方なく奴隷用の地下牢に入れてます」


 大司教は息を切らしながら、衛兵長に詰め寄って問いただす。


 「何で処置室の出入り口扉に研究施設の檻がぶつかっているのだ!?」


 「行ったらそうなってたんでわかんないっすね」


 「何故その原因を調べなかったのだ!」


 衛兵長は少しムッとする。


 「いや、それ保守員の仕事なんで。衛兵のやる仕事では無いですね」


 衛兵長からすれば、他人の仕事をなぜ自分がしなければならないのかという心境だった。


 「わかった。もうよい!」


 大司教は玉座の間の階から随分と下の階にある地下牢に階段を使って行くことになった。これまで走って来ただけに息も切れ切れ心臓バクバクであるが、だからといってどうにもならない。奴隷牢に閉じ込めた小娘を、国の為ではなく己のために使おうとしているのだから、他人に連れてきてとも言えない。


 「看守、小娘を閉じ込めた牢屋の鍵を渡せ!」


 「大司教様、小娘って具体的にはどんな子です?奴隷の女の子はそこそこいますけど、特長とか分かりますか?何歳くらいで、髪の長さはどのくらいでとか。

 っていうか、汗ぐっちょりじゃないですか。ぜーはー言ってるし顔色も悪いですよ。少し休まれてはいかがですか?」


 看守は、腰をかがめて壁に手をつけて今にも倒れそうで辛そうな大司教の身を案じ、大司教の体を支えた。


 「もうよい!鍵を全て渡せ!」


 大司教は看守の厚意を無下にして、看守の腰にぶら下げている鍵束を奪い取り、『邪魔だどけろ』という素振りを見せた。地下牢の入口を開けようとしたが、複数ある鍵のどれが入口の鍵なのか分からず、あれこれ試してはうまくいかず「くそっくそっ」と呟いている。


 それを見かねた看守が、大司教が奪った鍵束を取り上げ、地下牢の入口を開けてから鍵束を手渡した。大司教はそのまま奥へと入っていった。

 看守は大司教に向かって大声を出した。


 「牢屋の番号が鍵に書いてますからねー、ちゃんと見てくださいよー。ルーペがいるならここにありますからーーー。聞こえたかな?」


 大司教は手当たり次第に牢屋の鍵を開け、瞳の光が消え魂が抜かれて動かない奴隷の中からルーシーの姿を探した。しかし中々見つからず、結局全ての牢屋の鍵を開けた。そして一番奥の最後の部屋でやっとルーシーを見つけると、腕を引っ張って連れ出そうとした。


 「嫌ぁ、放してぇっ」


 「うるさい、大人しくついて来い!お前を生贄にして、わしは絶大な力を得て、ついでに不老不死になるんじゃ。わしがこの国を支配してきたんじゃ!」


 大司教は嫌がるルーシーを無理やり引っ張り、聞かれてもいないのに重要なことを口走りながら神殿に向った。



 悪魔たちは魔法陣を破壊したハウラスと合流し、グレモリーを先頭にルーシーを追った。


 「どうやらルーシーは神殿に向っているようね。ここからなら玉座の間を突っ切った方が早いかも」


 「それならついでに国王をひっ捕まえて、ルーシーを探しながら対価の回収品目の在り処を吐かせよう」


 悪魔たちはモーラの意見に賛同したが、手間取るようならルーシー救出を優先する事に決めた。玉座の間に入ると、壇上の王の椅子と王妃の椅子が向かい合わせでくっついているところに国王らしき男が寝そべっている様子が見えた。その椅子の脇には、折れた杖が転がっていた。


 「お前が国王か」


 モーラが問う。

 国王は半身をゆるりと起こし、モラクスとその後ろの悪魔たちを玉座から見下ろした。


 「ふぅん、悪魔が五体もお越しになったか」


 モーラとバフ、マルコは人間の擬態を解いていない。グレモリーはパッと見では人間であり、悪魔とすぐわかるのはハウラスくらいだ。それなのにひと目で全員悪魔と見抜くとは只者ではない。グレモリーがモラクスに近づいて耳打ちした。


 「この人は多分人間じゃないよ。オーラが最上位の悪魔を凌駕するくらい凄い」


 モラクスがそれを聞いて驚く。その様子を察知した国王が続ける。


 「そうか、わかっちゃうか。えーっと、こないだ捕まってうちに来たグレモリーか。キミ、鋭いね」


 得体のしれない相手を前にして身構える悪魔たち。


 「キミたちとは別に敵対するつもりは無いから安心して。僕はこの顛末を傍観しているだけだから。それにキミたちの目的も知ってる。その締めくくりが今、神殿の方で繰り広げられているかな。面白い事になるから行ってみたらいいよ」


 得体のしれない国王らしき人は、両手でどうぞどうぞと神殿へ向かうように促した。

 悪魔たちはここでまともに相手をしたら手間取ると思い、対価回収は後回しにして神殿へ向かうこととした。

 


 神殿の祭壇の上にルーシーを跪かせた大司教は、祀ってある神の像に向かって祈る。


 「おお我が神ルシファーよ。この娘を生贄に捧げますので、我に絶大な力を与え、ついでに不老不死にしてください。わしが死んだらせっかく国を手中に収めたというのに意味が無くなるので」


 その本音を織り交ぜた祈りが届き、神の像が光りだした。 


 「大司教サイダーよ、この期に及んでさらに力を欲するというのか。しかも不老不死とは強欲者めが」


 その神の声は、ちょうど神殿に入ってきた悪魔たちにも響いた。その声の元の神の像を見ると、祭壇の上のルーシーの姿も目に入った。マルコが叫ぶ。


 「ルーシー!!」


 神は続ける。


 「扱いに困るので生贄の娘はいらんと過去何度も言い伝えておるのにまたこのような・・・ん?」


 神の像の目が開き、光がルーシーを包み込む。


 「んんん?これは我が娘ではないか。何故我が娘を生贄に?」


 神の像はルシファーそのものになった。大司教は狼狽えながら答える。


 「知りませんでした!!」


 そのやり取りを聞いていたルーシーが神に質問する。


 「あなたが本当のお父さん?」


 「そうだ。お前は我が娘。名はアラディア。今はルーシーと呼ばれているようだな。我が名に近いところがまた奇遇よな」


 神はふふっと笑う。悪魔たちは顔を見合わせる。


 「ルーシーがあなたの娘?彼女は赤ちゃんの頃に私らが保護してジョセフと育てた。では何故あなたの娘がジョセフの山小屋の前の崖先に捨てられていたの!?」


 バフが神に質問した。ルーシーは出生の秘密をこのタイミングでカミングアウトされ驚きに拍車をかけた。

 神は淀みなく答えた。


 「娘は将来この混沌とした世で虐げられた者を救う存在。それゆえ幼き頃から修行のために力を抑制して人間界へ落としたのだ」


 グレモリーは『ルシファーの娘、力を抑制・・・だからオーラが特殊だったのか』と納得する。

 モーラがバフ、マルコに向かってこっそり言う。

 「育児放棄か」

 「だな。それっぽいこと言っているようで結構酷いことするよな。ルーシーかわいそう」

 「じじぃが育てなかったらどうなっていたんだろうか」

 「引くわー」


 「ん"ん"っ」

 神が咳払いし、話題を変えた。


 「大司教サイダーよ、貴様の望みは叶えよう。()()()()絶大な力と不老不死を授けよう」

 「おお神よ。ありがとうございます」

 「ただし人間を辞めて最下位の使い魔として」


 大司教が喜んだその瞬間、消えた。

 己の私欲のためにルシファーの娘を生贄に出した事が逆鱗に触れ、地獄へ突き落とされたのだ。


 大司教が地獄へ落ちたため、今まであらゆる人にかけていた呪いの類が解かれた。奴隷に施されていた洗脳も全て解け、鍵が既に開いていた地下牢からは、閉じ込められていた人たちが意識を取り戻し脱出を始めた。拘束されていたサントスとロドリゲスもその騒動にまぎれて逃げ出し、自分たちの馬車などを脱出する人たちに提供した。


 「さてルシファー兄さん」


 国王が神殿に入ってきた。


 「お前は・・・ミカエルか!?」


 神と悪魔たちは驚く。国王が実はミカエルの仮の姿だったなんて。


 「あなたがこの国をどうしたかったのかは全然理解できませんでしたけど、このままお開きにはできませんよね。特にあなたの娘をここまで育ててくれて、あなたの手下っぽい大司教の手によって亡くなったジョセフには報いる必要がありますよね?」


 「そうは言ってもどうして欲しいのだ?」


 ルシファーはミカエルに聞く。ルーシーと悪魔たちは興味深く話を聞いている。


 「あなたが何かをする必要はありません。あなたの元にあるジョセフの魂を頂ければいいのです。僕の元で天界にて使えさせますので」


 ルシファーは頷く。ミカエルはさらに続ける。


 「あと、この城塞都市はリセットします。ここから緑豊かな土地になるように。なので皆さん速攻で出ていってください。ルシファー兄さんの尻拭いもこれで最後ですからね!!

 そうそう悪魔たち、キミらを手引したお仲間さんたちが奴隷解放に尽力していますよ。手伝ってきてあげてください」


 悪魔除けの結界が無力化されたので、モーラは人間の擬態を解き本来のモラクスの姿になった。と言っても顔が牛になっただけだ。

 ロドリゲスは、奴隷にされていた人たちを故郷へ向かわせるべく、数台の馬車を方面別に分けて案内していた。そこにモラクスがやってきた。人々はその姿を見て怯んだが、ロドリゲスが駆け寄ってきた。


 「あんたモーラだろ?」


 「人間に擬態していないのに何故わかるんだ?」


 「顔でわかったよ。図太っぽさで」


 サントスは故郷へ帰る人のために馬車の整備や食料などの荷物を詰め込んでいた。そこに人間の擬態のままのバフが現れた。


 「サントス、何か手伝う事はある?」


 「私は心を入れ替えて、一から人生をやり直そうと思っています。出来れば私の新しい人生をずっと横で手伝って欲しいと思います。あなたに」


 バフはサントスの肩をぽんと叩き


 「そう、わかったわ。ここは手が足りているのね」


 と言って、他の人の手伝いへ向かった。


 ミカエルによるリセットがまもなく行われようとしているため、皆は中央城塞都市イステリアを後にする。その一台の馬車の上に、マルコとルーシーの姿があった。


 「わたし、結局連れ回されただけで何もしてないけど、おじいちゃんの復讐は成し遂げたのかなあ」


 「元凶は地獄へ落ちて、ジョセフは天国行ったんだから、オッケーなんじゃないかナ☆ おいらなんかルーシーを守るって言ってて、結局走り回るだけで全然守れてなかったからね。こんなマルコ兄ちゃんを許してね☆」


 「・・・・・・うん」


 他の馬車には、ハウラスとグレモリーがいた。


 「魔法陣一個壊しただけで国が無くなるとは思わなかったよ」


 「そうね、結果的にはハウラスが国を滅ぼしたのも同然だものね。あなたはきっと歴史に名を残すわ。『コスパ最強悪魔』って」


 「コスパ最強・・・」


 「それにしたって大天使ミカエルよ。『傍観者だ』って言っておきながら絶対裏で暗躍してたわよね。多分だけど」



 ルーシーと悪魔たちは一旦ジョセフの山小屋に戻る。復讐の旅はそこで終わりとなる。ただ、モラクス、バフォメット、マルコシアスは未だに晴れない思いがあった。


 「契約の対価、不良債権になったぁ」


 大天使ミカエルの事が嫌いになった悪魔たちだった。


最後までお読み頂きありがとうございました。

評価、ご感想を頂けましたら幸いです。


※ルーシー、ヒロインなのにさっぱり活躍していない。。。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 少女が悪魔を伴って悪政が敷かれている王国に乗り込む…という設定に非常にワクワクさせられました。 黒幕であるサイダー司教の末路は因果応報的でスッキリしました。 また国王の正体にも驚かされまし…
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