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人狼の過去


「ああ…………えっと……誰?」


「あっ、先輩!!?」


「ああ、永劫くんだったの」


授業中、暇だったので図書室に来たのだが…そこにいたのは見覚えのない男子だった。


「なんていうか、コスプレも大変だね」


「あれはコスプレじゃないです!!正装です!!!」


「あれが正装だったらこの世終わってるよ……」


「とにかく!先輩は外に出てください!僕の雷で吹き飛ばして粉々にしますよ!!」


「おお、こわいこわい」


私は一旦図書室から出る。




数十分後、入って良い許可が降りたので再入室。


「お、いつものマント羽織ってる」


「……授業中だから、誰も来ないと思っていたのに」


「案外暇だからねぇ、申し訳ないねぇ」


「まぁ、私服見られたくらい別に良いんですけど」


「あれは私服だったのか………でも、どうしてそんな格好を?」


「…………言う必要あります?」


「ないね。教えてもらったところで世界の半分あげられるわけでもないし」


「それはどこの竜王ですか」


「おお、よくわかったね」


私は椅子に座りながら言う。


「…で、先輩はどうして授業サボってるんです?」


「する必要がないから」


「する必要がないって……僕が言えたことではありませんがそれはねぇ……」


「いいじゃん、人生気楽にやっていきたいじゃん?」


本当に、勉強したって無駄なんだもの。


「そうだ、折角だから貴方のこと教えてよ」


「僕のこと…ですか。それなら前に少し言ったじゃないですか。それに、教えたところで面白くもなんともないですよ」


「良いじゃん、暇なんだよこっちは」


「じゃあなんで授業サボってるんです?」


「じゃあ一緒に授業受けに行く??」


「やめておきます」


「それなら、貴方のことを教えてもらおうか。せっかく同じ部活にいるんだから、仲を育もうよ」


「まさか、先輩ナンパですか?この獰猛で無慈悲な狂戦士であるこの僕を」


「痛い男子は許容範囲外」


「それは普通に傷付きますね」


「それに、私告白されてるからさ。貴方の相手はできないってわけ」


「嘘だッ!!!」


「控えめに言って斧で殴るよ」


どうしてこんなに驚かれなきゃいけないんだろう。


「いや、なんというかその……意外で」


「貴方私にめっちゃ失礼なこと言ってるってわかってるよね?」


可愛いとは思ってないけど、普通くらいだし。


「ま、こんなことはどうでもいい。なんかないの?例えば、どうしてそんな設定を自分に付与したとか」


「そんなとはなんですかそんなとは!そこらへんでガン飛ばしてる奴らよりかは遥かにマシでしょう!」


まぁ、確かにイキってるけどね?


「それでも、貴方が痛いってことには変わりないんだよ」


「……貴方は本当に狂戦士を信じないと言うのですね」


「な、なに。何かあったの?や、やれるものならやってみなよ。ここで、貴方が狂戦士だという証明を見せてよ」


「安心してくださいよ、僕の力は普通の人間には効かないんです」


「なんだ、嘘じゃないの」


「嘘ではありません!人間には効かないだけ、人狼には効くんです!!」


「人狼……!?」


思わず声が裏返る。


「ふふふ、流石に驚きましたか。そう、僕の力は人狼に効く。人狼特攻とでも言いましょうか」


待て、落ち着こう。この子が嘘をついたって可能性もあるじゃないか。


そうだ、きっとそうだそうに違いない。それに、そもそも…


「……人狼なんて、いるの?聞いたことないけど」


「いますよ、人狼は」


「いるんだ………」


「過去の話になりますが、僕が産まれる前になってしまうのですが、僕の祖父は人狼に喰い殺されたようです。人狼より格下の半獣も居たらしいですよ。なんでも、人狼と人間のハーフだとか?そこらは不明確なんですけどね。僕のお父さんは今、そういう奴らを駆逐する仕事をしています。半獣は人狼よりも温厚らしいのですが、やはり所詮獣。ありとあらゆるものを、破壊していきました。そいつらは次々と駆逐されていった。それでも、『真の獣』は駆逐できなかった」


「真の……獣…?」


「黄泉 寂滅」


「!!!???」


「どうしました!?すごい驚いた顔をなされて…」


「い、いや…聞いたことある名前だったからつい」


「聞いたことあるんですか!?それは興味深いですね。まぁ、話を戻しますと…真の獣である黄泉 寂滅はまだ駆逐できていないというわけです。僕も人狼見たことないんですけどね!!」


「いやないんかい」


一応目の前に半獣が居るんだけどね。


「いやー、寂滅は一人の人間を殺したあと突然姿を消しましてね。だからぶっちゃけ僕の力が人狼に効くのかよくわからないのですよ!あっはっは!!」


「でも、痛い設定を作る必要は無くない?」


「べ、別にいいじゃないですか!それと…」


「それと?」


「伝聞になりますが、人間を殺した後の寂滅……なんだか悲しい顔をしていたらしいですよ。本当は、望んでないかのように」


「……悲しい顔、か。それで、貴方は本当にバーサーカーの血族なの?」


「う、嘘じゃないです!!本当です!!!」


「伝聞になるほどの話なんてさほど風化していて信憑性に欠けるじゃない。やっぱ作り話にしか聞こえないなぁ、ただの痛い子だなぁ厨二病だなぁ」


「や、やめろぉ!!中等部の時それ散々言われたんだから!!!」


「厨二病厨二病厨二病厨二病厨二病厨二病厨二病厨二病厨二病厨二病厨二病厨二病厨二病厨二病厨二病厨二病厨二病厨二病厨二病厨二病厨二病厨二病厨二病厨二病厨二病厨二病厨二病厨二病厨二病厨二病厨二病厨二病厨二病厨二病厨二病」


「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


「あ、死んだ」


「い、虐めないでくださいよ先輩…」


「ごめんね厨二病」


「ちーん」


「あ、昇天した」


でも、この子の話は本当っぽい。半獣、そして人狼である黄泉 寂滅。色々辻褄が合った気がする。


「なるほど………」


それでも、私は思う。自分のためだけに力を行使するだなんて愚かすぎると。





「人狼と半獣は似ているようで違う、全くの別物。そこには主従関係も互換もない。……私は、半獣なんかよりも圧倒的に五感が鋭い。だから、貴方の思ってることとか行動はわりと筒抜けなんだよ。貴方はどこまで耐えられるかな?欲に勝つのか負けるのか……見物だね、初めて私に楯突いた人間?」







「それで、いつになったらお返事してあげるの?」


「うっ」


弟との帰り道にそんなことを言われる。


「もう少しだけ時間ちょうだいって言っといてよ」


心の準備がまだなんだよ。


「あのさ、僕思うんだけど…嫌なら嫌、無理なら無理って言ってあげた方がいいと思うよ。そんなずるずる引きずるよりもね」


「それはどっちも否定してるじゃない」


「だって、良いならもうとっくに了承してるでしょ?つまりそういうことじゃん」


「いや、わからないかもしれないけどね。こういうのって結構返答に困ったりするもので、時間がかかるの」


「どうして?なんか事情でもあるの?」


「そ、それは……」


「無理なら無理って言ってあげなよ、その人も理解してくれるだろうし、それだけで離れていくってわけじゃないでしょ」


そうだけど、私が死んだら彼は悲しむから……そんなのは嫌だから……できれば、彼が私を嫌いになってほしいんだよね。


「まぁ、あんまり僕に口出しはできないよね」


「うん、ごめんねなんか」


「謝る暇があるんならお返事をしてあげてよ」


「だからね!!?」


「なんていうか、かっこ悪いね。かっこ悪いよお姉ちゃん、まぁそんなお姉ちゃんをあの人は好きになったんだろうけど」


「マシになるよう善処します」


「それと、お姉ちゃんナンパはダメだよ」


「え?」


「英傑 永劫……その人のことお姉ちゃんナンパしようとしてたでしょ!」


「誤解だよ!!!」


全力で否定する。


「どうしてあんな厨二病をナンパしなくちゃならないのさ!!!?」


「まぁ、僕には何も言えないけど」


「だから!!!あれはあいつの被害妄想!!!!」


「でもね、火のないところに煙は立たないって言うよ」


「だから誤解だって!!!!」


あいつ、今度会ったらしばき倒す。


「んで、どういう関係なの?」


「単純に仲良くなろうとしただけだよ、知り合いにもなってない」


「授業サボるまでする必要あったの?」


「まぁ……なんというか……想い出が欲しいんだよ」


「想い出?」


「自分が生きた証……なんてものは要らないけど、寺子屋の想い出……かな?」


「なるほどなるほど、想い出ね」


「ロンからしたら、これどう思う?」


「良いんじゃない、賛成だよ。だけど……授業を休む理由にはならない」


「誠に申し訳ございませんでした」


まぁ改善なんてしないけど、授業やっても意味ないし。私はみんなとの想い出がほしい、だから永劫くんとも仲良くなりたいとは思っているし、春休みに何かやりたいとも思っている。


「でも、あの人頭良いでしょ?」


「あのキャラしてなかったら大分モテたと思うよ」


「モテすぎて部活なんてもの行かないだろうね」


「まぁ、もしものことなんて考える必要もないね」


「そうだね!」


私達は互いに一歩を踏み出す。そして、顔をあげて気がついた。



「………え?」


その時聞こえた叫び声、唖然とした声。目の前の住宅が、崩壊していた。


状況が理解できなかった、あまりにも唐突で、あまりにも非現実だったから。そして、ドミノのように周りの住宅も壊れていき、その時の衝撃で飛んできた断片が私達目がけてやってくる。



「ひっ!」


「ッ…!」




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