9.ムウの帰還
「ここか。ようやく見つけた。」
ムウはドラゴンの姿になり、とある場所を飛行しながら呟いた。
神様に言われてムウはある場所を探していたのだ。
シールドを貼って外部と遮断してたとはね……どうりで見つからないわけだ。探すのに苦労したよ。
大きく円を描くように飛びながらその場所を見渡す。
そこは大陸の果てのいくつもある小さな島の一つ。
島全体にシールドが張り巡らされ外部から見えないようになっていた。
その島を様子を伺うように飛行していると、地上から巨大な竜巻がムウめがけて放たれた。
ムウは間一髪で竜巻をよけ、その魔法が放たれた場所を伺う。
島の岸壁に1人の男が立っている。ムウはその男の元へと降り立った。
「久しぶりだな〜!元気してたか?」
「相変わらずだな!お前こそ元気だったか?アルティア!」
彼の名はアルティア。元神の使い。
「しかしよくここの場所を見つけたな。シールドを張ってバレないようにしてたんだが?」
アルティアはムウに話しかける。
「ほんと探すのに苦労したよ。それにしてもこんなところに隠れてたなんてな。」
そう言ってムウもアルティアの問いに応える。
「はははっ!そうか。一応礼は言っておく。それにせっかく来てくれたのに悪いが俺はお前を招待したつもりはないぞ?」
「神様がお前のこと心配していてね。俺が代わりに様子を見に来たんだよ。褒めてたぞ?私の隙を突いて大それたことをやってくれたねって。まあ、それがどういうことかわかってやってるんだろ?」
「褒めてただと?ふざけやがって!」
ムウが神ことを口にすると、今まで笑っていたアルティアの表情が変わった。
「俺はあいつのせいで……あーっ!思い出すだけではらわたが煮え繰り返るっ!」
溢れ出しそうな怒りを必死に抑えてアルティアは言う。
「今回はお前の顔に免じて逃してやるよ。だが次はない。これは警告だ」
「まぁ、目的を達成したから、僕も今日のところは引くよ」
ムウはそういってその場を後にした。
そう、彼アルティアこそが神のペットを逃した張本人だった。
********************
「大分上達しましたね」
「はい!」
今ちょうどペットを1匹捕獲して2匹目に入るところです。
大きな鷲もといファルコンビートがこちらへ飛来する。
「ファルコンビートは風の魔法で攻撃してくるので気をつけてください」
リルアに言われて私はペットに集中する。
私は翼から巻き起こる風の攻撃を避けながら剣で対峙していく。
「やぁっっ!!」
私の攻撃が命中し、ファルコンビートは生き絶えた。
「おみごとです!ミリさん」
リルアさんからお褒めの言葉を頂いた。
あの後拠点を荒地の近くの街に移し、そこにいるペットを全て捕獲した。
それからさらに数ヶ月が経っていた。
まだ見ぬペットを探し、あちこちに拠点を移しながらペットを捕獲していく。
私も中級のペット位は楽々倒せる様になっていた。
ファルコンビートを捕獲し終わると
「ここまで上達すれば、もうわたしから教えることはありません。後は実戦で経験を積んでください。ミリさんお疲れ様でした」
とリルアさんが言ってくれた。
どうやら免許皆伝のようだ!
モンスターを倒せるようになったからだろうか?
以前はクヨクヨしていた私だったが、今では自信がついて、ちょっと楽しい。
「はい!ありがとうございます!」
嬉しそうに返事をした時だった。
「ミリ!久しぶり!大分強くなったんじゃない?」
後ろから声が聞こえて振り向くと、そこにはムウが居た。
「ムウっ!?」
私は久しぶりにムウの姿を見て涙が出てきてしまった。
「もうっ……ムウ!この数ヶ月どこいってたの?寂しかったんだからね」
「ごめんごめん。ちょっと用事に時間がかかっちゃってね。でも、これからはミリと一緒にいれるから」
ムウは可愛らしい仕草でぺろっと舌を出した。
「それにしてもミリ。さっきの戦い見てたけど大分強くなったね?これだったら本格的にペットの捕獲に行けるね!」
そう言うムウだが、本格的も何も、結構捕まえたんだよ?
と言って本を開いてムウに見せた。
「ほんとじゃん!ミリがんばったんだね」
「でしょ?もっと褒めてくれても良いよ?」
私はえっへんと胸を張って言った。
私達が久々の再会を喜んでいると、後ろに控えていたリルアさんがムウに私のことを話してくれた。
「ムウ様。ミリさんは大分強くなられましたので、私の役目は終了になります」
「うん。リルアありがとう。後は、僕がミリのサポートをする。」
そう言ってムウはリルアさんにお礼を言った。
「さて、久しぶりにミリと再会できたし。僕がいない間のこといっぱい聞かせてよ?」
「もちろんだよ。私の優雅な奮闘記をムウに聞かせてあげる。今夜は寝かせないよ?」
「それはそれで困っちゃうね」
と苦笑しながらムウは答える。
「じゃあ街に戻りましょうか」
リルアさんの声に私達は頷く。
歩きながら私の足元を歩くムウを見つめた。
私は「本当におかえりなさい。」とつぶやき、私達はその場を後にした。