6.剣の力
いつもはムウに言われて渋々出発する私だが、今日は違った。
昨日、街を堪能したおかげで、今日は凄く気分がいい!
「ムウ!いくよっ!!」
私はムウに言われる前に自分から進んで宿屋を出発する。
ムウもこんなミリ初めて見たよって、苦笑してた。
やっぱり気分転換って必要だよね!
昨日買ってもらったお気に入りの指輪ももちろん装備してる。
街の外に出るとムウの探知機能を使い、近くにペットがいないかを確認する。
「今日は近くにいないな〜?しょうがない。もう少し先に森があるから行ってみよう」
と、少し遠出をすることになった。
遠出といっても歩いていける距離なんだけどね。
森の近くまで来たら再度感知を行う。
「おっ?ここの森には結構ペット達がいるよ?」
「よしっ!たくさん捕まえてやるっ!」
今日の私は一味違う。やる気がみなぎってくる。
「とりあえず無理はしないように。弱いのが居たら捕まえようか?」
そう言われて私達は森を探索し始めた。
森に入ってしばらくすると、
「ミリ止まって?」
ムウに言われて私は止まり息を潜める。
近くにいるペットの匂いと、気配を探る。すると何かに気づいた様で上に目をやる。
「あの木の上だ。見える?」
「うん?ヘビ?」
私が上を見上げると木の上には巨大な蛇が木の幹に絡みながらこちらを睨んでいた。
「ポイズンシャークだ。名前の通り毒を持っているから気をつけて!」
「毒っ!」
毒を持ってるって、今まで捕まえたペットより遥かに強そうじゃない?さっきのやる気が萎んでいくのが分かる。
「大丈夫。そんなには強く無いよ。牙に毒が含まれているから噛まれない様に。そこだけ気をつけて?まず、間合いを取って戦おう。準備はいい?」
そう言ってムウは可愛い口から火のブレスを放った。
「ムウ、その姿でも魔法が使えるんだね?」
私が感激していると、威力は弱いけどねって照れていた。
でも、ムウっていつも準備はいい?とか聞いときながら、私の答えの有無も聞かずに待った無しだ。まったく。
火のブレスはポイズンシャークのいる幹の根元にみごと命中し、木がもげて一緒に落下してきた。
落ちてきたポイズンシャークを確認すると、怒り狂いながらこちらを威嚇してる。近くで見るとめちゃめちゃ迫力があるよ……
「ミリ!」
ムウの声にハッとし、剣を構える。
「剣!お願いっ!」
私は噛まれない様に間合いをとり、タイミングを見計りポイズンシャークに向けて剣を振り下ろした。
ポイズンシャークは振り下ろした剣を避けたが、剣が軌道修正をし、見事に首を切り落とした。
「やった!」
私は剣をリングに戻し捕獲しようと鞄から本を取りだす。
その時だった。
茂みからもう1匹のポイズンシャークが私めがけて攻撃を仕掛けてきたのだ。
「しまった。ミリッ!!」
ムウが叫ぶ。
先程の1匹を倒して油断していた。もう1匹が近づいていることに気づいた時は、すでにミリに襲いかかる直前だった。ムウはミリを助けようとしたが間に合わない。
「きゃっ!?」
剣を持っていれば剣が攻撃に反応して防いでくれるが、すでにリングにしまった後だったため攻撃を避けれなかった。
驚いた拍子に体制を崩したのが功をせいして、噛まれることは免れたが牙が私の左腕をかすめ、傷を負ってしまった。
「ミリッ!」
ムウはすぐさま元の姿に戻り、ポイズンシャークを鋭い爪で切り裂きいた。
「ミリ!しっかりしろっ!」
ムウはポイズンシャークを倒すと私のそばに駆け寄った。
「うぅ……」
私は負傷した左腕に激しい痛みを感じ、倒れ込んだ。
傷を負った場所から腕は紫色になり、かなり腫れている。
「ミリ、落ち着いて。ゆっくり深呼吸するんだ。」
痛みで呼吸が早かった私は、ムウに言われてゆっくり呼吸する。
「そうだ。その調子。」
私の呼吸を確認してムウは私が持っていた鞄を漁り出した。
「確か、鞄に解毒薬を入れたはずだが……あった!ミリ。右手でこの蓋を開けれるか?」
ムウが小瓶を加えて私の右手に添える。
私は、激痛の中、怪我を負っていない右手で瓶の蓋をなんとか開けて、中の液体を飲み干した。
「はぁはぁ。」
しばらく横になると、さっきまで激痛がはしっていたのが、徐々にではあるが、落ち着いていった。
「私、助かったの?」
「あぁ、解毒薬が効いてきている。もう心配いらないよ。ミリ、悪かった。守ると約束したのに……」
「ううん。私も油断してたのがいけないんだ。だから気にしないで?」
私がそういうと、ムウは私のほっぺをペロリと舐め、
ありがとうとお礼をいった。
私が体を動かせる様になるまで、ムウは私達を狙ってやってきたペットを倒してくれた。
横になりながら戦いを見ていたが、すごい怖そうなペットとかいた。
もし、毒に侵されていなかったら対峙することになってたのかな?
そんな恐怖もあるが、それ以上にムウの戦いぶりは見事だった。
前足の鋭い爪で一撃でペット達を切り裂いていった。
リルアさんの言う通りだ。すごいや。とあらためてムウの凄さを実感したのだった。
しばらく休んだおかげで、なんとか体が動く様になったので街へ戻ることに。毒は大分抜けたがまだ残っている。傷はそのままなので処置が必要だとムウが判断したからだ。
「それにしてもポイズンシャークをせっかく倒せたのに、時間が経っちゃったから消えちゃった。」
と私が悔しがっていると、
「しょうがないよ。また捕獲しに行こう?今度は僕もヘマしないように気を引き締めるからさ。」
とムウが私を励ますように言ってくれた。
それにしても、何か今日のムウはすごくかっこよく見えたんだ。いつもは可愛い子犬なのに。戦っている姿を見たからかな。
街へ着くと、そのまま宿屋へ向かう。
リルアさんはいつものように入り口のカウンターでお出迎えをしてくれた。
「ミリさんおかえりなさい……?」
腕を押さえながら痛そうにしている私をみて、リルアさんは驚いていたが、事情を説明すると、すぐ傷の手当てをしてくれた。
そして、まだ、毒が抜けきっていないからと、私はベッドに寝かされて安静にする様にと命じらた。
怪我を負ったせいか、横になるとウトウトとそのまま夢の中へ落ちていった……
私が寝静まったのを確認し、ムウとリルアが話し始める。
「やはり、剣の力に頼るだけではダメだな。ミリ自身の身体力もアップさせなくては。今日のことがあって改めてそう思ったよ。ペットの捕獲を急ぎたいところだが、やはりこの先このままでは通用しなさそうだ。」
とムウはリルアにそう告げた。
「そうですか。ムウ様がいればなんとかなると思いましたが。まあ、先を急いでせっかく見つけたリングの適合者を失っても困りますしね。」
そう言ってムウとリルアは考える。そしてリルアが口を開いた。
「そうだ。もしよければ私にミリを預けて頂けませんか?私が彼女に指導しましょう。」
リルアの申し出にムウは驚いた。
リルアは神の命令を受けなければ滅多に自分動かないからだ。ムウの為に色々世話してくれるのも、神から命じられたから。
「いいのか?」
「はい。私は構いませんよ?あと、神様から伝言が来ています。後で確認してください。」
「わかった。」
と返事をしミリをリルアに任せることにした。