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1.ムウとの出会い

 朝日がカーテンの隙間から降り注ぐ。

「んー!もう朝かー!」

 ふぁーと、あくびをしながらまだ、眠い目をこする。


「おはよう!ミリ!」

 そうやって挨拶をしてくれたのは私の相棒、ふわふわの白い毛並みが特徴の犬ようなムウだ。


「おはようムウ!」


 ベットから起き上がって、しまっていたカーテンを開く。

 そこからパァーッと温かい日差しが入ってきた。

「今日もいい天気だね!!」


 私はミリ。異世界からの移転者。

 ここにくる前は日本で生活をしていた。

 なぜ私がこの異世界に来たかって?それはムウとの出会いが始まりだ。


 出会いは突然に…というが本当に突然だ。


 私は高校を卒業した後、都会に憧れて地元を離れた。特にやりたいことも無かったので、進学はせずにそのまま就職することにしたんだ。

 憧れの都会で無事就職先を見つけた私は、少しでも会社に貢献するために毎日仕事に励んでいた。


 都会に引っ越してからは、娘の事が心配なのか親からよく電話がかかってくる。

 もう!私は大人だ。子供扱いしないで欲しい。でも、親から見たら私はいつまで経っても小さいままなのだろう。


 今日もいつものように残業を終えてヘトヘトになりながら家に帰宅する途中だった。


 歩道を歩いていると、向こうから泥だらけの体でフラフラと歩いて来る犬を見つけたのだ。


 その犬は今にも倒れそうな感じでよろけながら歩いてきた。


 私は犬の横を一旦は通り過ぎたが、気になって後ろを振り返ってみると、犬は力尽きたのか道路に倒れ込んでいたのだった。


 この道は車の通りが多い道ではない。そのまま立ち去ろうと思った。

 でも……誰にも助けてもらえなかったら死んじゃうかも。

 私は倒れた犬の所へ戻ると、そっと犬を抱き上げた。


 抱き上げても反応がない。ハアハアと苦しそうに息をしているだけだ。


 かなり弱っているみたいで、これはまずいと思い近くに獣医がないかスマホで検索する。

「あっ、この近くにあるじゃん」

 すでに病院は診察時間を過ぎていたが、電話で事情を話すと診てもらえることになり私は急いで病院に向かった。


 診察をした先生は

「後少し遅かったら危なかったよ。尊い命を救ってくれてありがとう。」

 と逆にお礼を言ってくて、何か凄くこみあげてくるものがあった。私があの時見捨てていたら……見捨てなくてよかったと。

 一命を取り留めた犬を引き取り、元気になるまで一旦うちで保護することにした。私が住んでいるマンションはペット可なのだ。

 いつか動物と一緒に生活することを夢見て、物件選びの条件にはペットと生活できる場所でと決めていた。


 さて、ここまで別に問題ない。


 問題はここから先なのだ。

 犬が我が家にやってきてしばらくした頃。

 体力も回復してすっかり元気になっていた。

 仕事から帰ると玄関でお出迎えをしてくれる。もう可愛いなぁ!

 構って!と言わんばかりに私の足元にまとわりつくが、「ごめんね。もうちょっとまっててね。」と犬の頭をなでてやり、自分のことをさっさと終わらせた。


 私はコーヒーを飲みながらほっと一息ついていると、犬がボールをくわえて持ってくる。さあ、遊びの時間だ。

 いつものように、ボールを投げて遊んでやる。

 投げたボールを勢いよく取りに行き、くわえて持ってきたらまた投げてやる。

 それが延々と繰り返しながら

「さて、どうしようか?」と悩んでいた。


 首輪はしていなかったが、どこからか逃げ出してきたに違いない。そうであれば飼い主が探しているかもしれない。

 こういう時はどこに連絡すればいいのか?と考えていた時だった。


 ボールを持ってきたと思って受け取ると、ん?硬い。

 受けとったものに目をやるとリングだった。


「これどこから持ってきたの?」

 犬に話しかけみるが答えが返ってくるわけでもない。

 なんだこれ?ブレスレット?手にはめるにはちょうどいい大きさだ。でも私のものではない。買った覚えもないし初めてみる。


 私はそのリングを手に取りまじまじと見る。

 リングには英語のような、何かわからないが文字が刻んであり、綺麗な赤色の大きな石がはめ込まれていた。


 しばらく、リングを眺めていると

「見てないではめてみて?」

 とどこからか声が聞こえてきた。


「えっ?」


 誰が喋った?私は部屋の中を見回すが、部屋にいるのは私と犬だけだ。


「僕だよ?」

 そう言って声の方に目をやると、犬が言葉を話していた。


 私は目をこれでもかっていうくらい見開いて驚いた。


 ビックリした私を見て犬は

「あっ!ごめんビックリしたよね?改めてまして、僕の名前はムウ。助けてくれてありがとう!!」


 犬が喋った!?うそでしょ?もしかして、私動物と話す能力が開花した!?


 マンガとかで現実かどうかを確かめる時に顔叩いたり、ほっぺつねったりするけど、同じことやっちゃたよ。今思うと恥ずかしい。


 そして、なんとか気を落ち着かせて、ムウの話を聞いたわけで。


 ムウの話によると、彼は違う別次元に存在している世界からきたのだそうだ。

「なぜ別次元からはるばるこの世界に?」

 私が疑問に思いムウに問う。


「実は僕の世界を守っている神様を助けてくれる人を探しているんだ」


「神様っ!?」

 なにこのファンタジー要素。

 私がポカンと口を開けているのを目にやりながら、ムウは話し続けた。

「色んな世界を渡り歩き、そしてたどり着いたんだミリに!!」


 !!??


「えっ!?私!?私が神様を助けるの!?」


 私が驚いているとムウは

「ミリには特別な力があるんだよ!自覚してないと思うけど。僕にはその力を感じる能力があるんだ。」

 と言っていた。


「今まで何人かの能力を感じ取って出会ってきたが、実際に確かめるとみんな力が弱くて。でも、やっとミリを見つけたんだけど、その前に力尽きちゃったんだ。」


「だからミリに助けてもらって本当にうれしいよ!

 今まで犬の真似をしていたのも、ミリが本当に能力が適合しているか、確かめたかったんだ!でも、確信した。ミリは僕が探していた人だ!!」


「ちょっ、ちょっと待って!!」

 だめだ。意味がわからなくなってきた。


 ちょっと、深呼吸をして気持ちを落ちつけよう。

 すぅ〜……はぁ〜……


 だめだ。おちつかない。


「ミリ何やってるのさ。ねえ、さっき渡したリングはめてみてみて?」


「えっ?これ?」


 ムウに言われってリングを再度見る。

「ねえ、このリングは一体なんなの??」


「はめてみればわかるから!早く早く!」

 急かされてついついはめてしまった。

 私は得体の知れないブレスレットをはめてしまい…後悔が後からやってくる。


「ん?」

 ブレスレットに目をやるとリングに付いている石が淡く輝いた。


「やっぱり僕の思った通りだ!」

「ミリはこのリングに認められたよ!」


 リングが私を認めた?


 そう思った矢先。


「うわっ!?」


 足元に魔法陣が浮かび上がり私は魔法陣から発せられた光に包み込まれた。

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