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村人だった俺が神スキル『チェンジ』に覚醒して世界を救う英雄に~命懸けで戦っていたら仲間には愛されるし婚約者は増えてゆくし、幸せすぎて困ります~  作者: ひだまりのねこ
第四章 王都への旅路 ~ポルトハーフェン 

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そして世界は続いてゆく


「う……こ、ここは?」


「もう大丈夫だ、まほろ」


 幻と書いてまほろ。それが彼女の名前。ただ女性として生きたかった、深海に宿るもう一人の報われぬ魂。


 目を覚ましたまほろさんを、男に戻ったカケルくんが優しく抱きしめる。


 冷え切った身体と心が温まるように。その優しい想いが、俺の心と体をも癒してくれているような気がするよ。



「あ……私……この身体……うそでしょ……」


 まほろさんの身体は、チェンジによって女性になっている。


 そのことにようやく気付いて、彼女は静かに頬を濡らす。


「ああ、そうさ、これからは、一人の女性として生きればいい。俺が死ぬまで一緒にいてやるから」


 ああ……カケルくんは、一体何人の女性に同じ言葉を言ったのだろう。


 でも、彼の言葉には本当に嘘が無いんだ。だから言葉が、想いが、心に素直に入ってくる。


 短い間ではあったけど、女性の気持ちが少しだけわかってしまうな……。


 元の身体に戻れた嬉しさと同時に、まさか失った寂しさも感じるなんてね。





 邪神の作り上げた世界が消えてゆく、まるですべてが幻であったかのように。



 ひび割れた空の亀裂が消えて、世界の崩壊がゆっくりとおさまってゆく。世界に清浄な気と祝福が満ち溢れてゆくのがわかる。



「終わった……んですかね……?」


「ああ……よくやった、イソネくん。もう大丈夫だ」


 そう言って笑うカケルくんの笑顔が頼もしくて眩しい。



『イソネ……発動が遅い……』

『そうよ? おかげでボロボロになったんだからね!!』


 ミコトさんとキリハさん、二人の死神が不満そうに文句を言ってくる。


 たしかに二人ともボロボロだ。死神でなかったら死んでいただろう傷を全身に負っている。


「……ごめんなさい」


 素直に頭を下げると、冗談だから気にしないの、と笑って許してくれた。ありがとうございます……二人ともマジで女神さまですよ。



「せんぱーい、動けないから助けて~!」


 同じくボロボロの勇者美琴さんも甘えるようにカケルくんを呼ぶ。


 ミコトさんのジト目から察するに、たぶん余裕で動けるのだろうが、きっと、これも様式美なのだろう。



******



「それじゃあ、またな、イソネ君。全部片付いたら、近いうちに顔を出すから!」


「はい、本当にありがとうございました。お待ちしてます」


 カケルくんとガッチリ握手して、淋しいけれど、一旦はお別れだ。


 世界のごたごたが片付いたら、クルミの両親がいるトラキアに連れて行ってくれる約束になっているから、またすぐに会えるのだけれど。



 ちなみに、邪神であるまほろさんが集めていたスキルのほとんどは、神界に没収されてしまったので、ほとんど残っていない。とはいえ、邪神の力の残滓がわずかながら影響したせいか、それとも、この身体が高性能なのか、以前とは比べ物にならないほど強くなったのがわかる。


 今なら、たぶんクラーケンが相手でも勝てそうなほどに。


 それだけに、カケルくんたちの強さが以前よりもよくわかる。強くなったことで、その差が残酷なまでにわかってしまうのも皮肉な話だ。


 これまで見えていたものが、葉一枚だとしたら、今は枝まで見えるようになった感じかな。


 たぶん、カケルくんは広大な森だ……いや、この世界そのものなのかもしれない。そのすべてを認識することは、俺には生涯無理だろう。その必要も感じないけどね。



『お疲れさま、カケル』

『格好良かったわよ、駆』

「さすが先輩、最高!」


「ミコトさん……キリハさん……美琴」


 三人の美女がカケルくんのもとへ駆け寄り抱きしめあっている。控えめに言っても羨ましい。



「おいで、まほろ!」

『ほら、ここ空いてるから』

『仕方ないわね……来なさい』

「ぐふふ、おいで子猫ちゃん……」


 遠慮がちに見ていた元邪神のまほろさんにも声がかかる。美琴さんから邪なものを感じるが、きっと気のせいだろう。そうだ、俺は疲れているんだ。


「!? ……は、はいっ!!」


 嬉しそうに輪の中に飛び込んでゆくまほろさん。微妙に勇者を避けているように見えたのも、きっと俺の邪な心が見せる幻に違いない。



 そして―――



「御主兄様~!!」

「「貴方様~!!」」

「ダーリン!!」

「旦那様~!!」

「王子様~!!」

「カケルさま~!!l

「カケルくん!!」

「カケルっち~!!」

「主様~!!」

「大海原さん~!!」

「駆~!!」


 

 世界各地で魔物の大群と戦っていた、カケルくんのお嫁さんたちが次々に戻ってくる。


 ……なんという眼福。そして見ているだけというこの切なさよ。 


 さらに―――


『主~!!』

『主さま~!!』

『王さま~!!』


 カケルくんの召喚獣たちもみんな笑顔で戻ってくる。


 ……へえ~、召喚獣って、獣じゃないんだ……あれ? この世界って、美少女の事を獣っていうんだっけ? ははは……うっ、羨ましくなんてないんだからね!!


 

******



 カケルくんたちと別れて、屋敷へ向かう。


「でも……良かった。世界が終わらなくて本当に良かったよ……」



 俺はこの世界が好きだ。俺と大切な人たちが暮らすこの星が大好きだ。


 これからも皆が毎日笑顔でいられるように、俺も笑顔を絶やさないようにしよう。


 喜びも悲しみもみんなで分かち合って生きるんだ。無駄なものなど一つもないんだって、今の俺にはわかるから。


 きっとカケルくんみたいにはなれないから。せめてみんなを、手が届く範囲だけでも、精一杯守るんだ。


 そのためだったら、スキルでもなんでも使ってやるさ。


 俺はもっと傲慢になってみようと思う。


 だって、俺は最弱の英雄イソネなんだから。


 手段なんて選んでいられませんよ?

 

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i566029
(作/秋の桜子さま)
― 新着の感想 ―
[良い点] 章をありがとう。今後の章と作家さんの新作小説をお待ちしております。
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