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06 奴隷商人のキム


「それで、この後どうするの、イソネ?」


 そう、この後どうするか正直悩んでいた。少なくとも今は村へ戻れない。かといって、あてがあるわけもなく。



「ここから近い町は3ヶ所。東のイスタ、北のノルン、西のウェスタ。とりあえず俺たちの両親が向かった王都を目指そうと思うんだけど、どうかな?」


「うん、良いと思う」


 リズも快く賛成してくれる。


「なら、北のノルンか西のウェスタのどちらかだけど、西のウェスタはカスパーの知り合いが多いから避けた方が良さそうだ」


「???」


 先ほどから意味が分からないといった顔をしているクルミに俺のチェンジのスキルを説明する。


 これから先、またスキルを使う機会があるかもしれないし、一緒に旅をするなら知っておいてもらった方が何かと便利だからね。


「す、すごい」


 クルミにキラキラした目で見つめられるとちょっと恥ずかしい。


 カスパーは、イザークほどではないが、結構強面なので、照れてもたぶん気持ち悪いだけだと思うけど。



「じゃあ行き先はノルンに決定ね!」


 楽しそうに俺に抱きつくリズは本当にたくましいと思う。


 きっとリズが居なければ、俺はおかしくなっていただろうから。


 反対側からはリズの真似をしたのかクルミが抱きついてきた。


 あれ……何この天国? 別の意味でおかしくなりそうですよ。



 このまま何事も無く旅が続けられることを祈りながら、馬車は一路北の町ノルンを目指すのだった。




***




 ノルンへの移動は順調そのもので、まだ日が高い内に到着することが出来た。



「リズ、クルミ、あれがノルンの町だ」


 来るのは初めてなのに知っているというのは何とも不思議な感覚ではあるが、おかげで美味しい店や信頼出来る宿を探す手間が省けて助かるのは確かだ。


「イソネ、お腹が空いたわ。まずは腹ごしらえしましょう!」


 リズの提案にクルミも力強く頷いたので、まずは食事をとることにした。


「ノルンの町で一番の高級宿は料理も絶品だから、そこにしようか。今夜の宿もそこでいいだろう」


 どのみち馬車を預けるとなるとそれなりのレベルの宿でないと危ない。安全安心に出し惜しみは禁物だ。


「賛成〜!」


「こ、高級宿……?」


 喜ぶリズと緊張に震えるクルミ。



「いらっしゃいませ。おや、カスパーさま、お久しぶりでございます」


 さすが高級宿の店主だ。何年も前に泊まった客の顔と名前を覚えているとは。


「また世話になるよホルツさん。とりあえず3人で、一泊食事付きで頼む」


 金貨1枚を払い部屋に入る。


 ちなみに金貨1枚は約10万円だ。普通は払えないが、金ならある。怖いぐらいある。



「うわああ! 広い部屋だね、イソネ」 


「あわわわ……広いです」


 空いてる中で一番良い部屋にしたからな。


 町が一望出来る三階の部屋は景色も素晴らしい。



「腹ごしらえしたら風呂入ろうぜ!」


「「ふ、風呂!? お風呂があるの?」」


 そう、この宿にした最大の理由は風呂があるからだ。


 前世の記憶を取り戻してから風呂が恋しくてたまらなかった。


 三人で美味しい料理を堪能した後は風呂に入り旅の汚れを落としてさっぱりする。

 


「…………なんか綺麗になったなクルミ」

「はうう〜モフモフだよクルミ」


 風呂で汚れを落としたクルミは毛並みがより輝きモフモフ感が倍増している。


(リズも色気が3倍増だけどな……)


 側にいるだけで石鹸の香りがしてクラクラしてくる。


(くっ、俺は何をしているんだ)


 今になって部屋を2つ取らなかったことを後悔する。さすがにクルミがいては、リズとイチャイチャするわけにもいかないよね。



「じゃあ休む前に用事を済ませてしまおうか!」


 この町でやる事は3つ。服や生活用品の買い出し、冒険者ギルドで冒険者登録、最後に王都までの旅の護衛を雇うことだ。


 冒険者登録はリズを登録してお金をギルドに預けることが目的だ。


 預けたお金は世界中の冒険者ギルドで引き出すことが出来るのでとても便利だし、現金を大量に持ち運ぶのはやはり怖いからね。


 

 まずは買い出しに商店街へ向かった。



***



(あれは……カスパーじゃないか! しかもとんでもない上玉を二人も連れてやがる。どうせ悪い事をして手に入れたのだろうが、羨ましい!!)


 買い物をするイソネたち三人を離れた所から見つめるのは奴隷商人のキム。


 偶然旧知の男が、とんでもない美少女二人を連れているの発見した男は、どうにかして女たちを手に入れる方法は無いものかと思案を始める。


 しばし考えてから薄気味悪い笑みを浮かべるキム。部下に三人を見張らせてから、自らは町の領主のもとへ向かうのであった。




「キムよ、どうしたんだ突然? 良い女でも手に入れたのか?」


 町の領主のクレメンスは無類の女好きで、定期的にキムから女を貢がせている。


 その代わりにキムの違法行為に目をつぶっていたので、お互いにWin-Winの関係だったのだ。



「はい、実は――――」


「なるほど、よし、その女2人は山分けだな」 


 キムの報告に喜色満面になる領主クレメンス。


 下種極まりないが、キムの女を見る目だけはたしかだ。その男が絶賛するならばどれほどだろうかと、期待が膨らみ、だらしなく口元が緩む。



「どうぞ領主さまがお好きな方をお選びいただければと愚考いたします」


「キムよ、分かっているではないか。ぐふふ……」


 

 領主の舘では2人の下品な笑い声が響き渡るのであった。



*************************************

【 6話終了時点での主人公 】


【名 前】 オルトロス → カスパー 

【種 族】 フォレストウルフ → 人族

【年 齢】 17 → 28

【身 分】 群れのボス → 用心棒

【職 業】 人身売買組織の用心棒


【スキル】 チェンジ 総合剣術 夜目 身体強化 御者 統率 強脚 狼語 見切り




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i566029
(作/秋の桜子さま)
― 新着の感想 ―
[一言] むむむ!続きが気になる展開! ブクマブクマっと!
[良い点] 両手に花の主人公、うらやましいったらありゃしない! [気になる点] えっ……。 せっかくお風呂に入ったのに、さっぱりしただけなの……。 [一言] 全ての男性読者の気持ちを代弁しております。…
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