領主の屋敷は地上の楽園?
「そういえば、マイナとカスミも一緒に買ったんですよ~、新しい下着」
ニヤニヤしながら極秘情報を教えてくれるピンク色のミラさん。もちろんピンクは下着の色だ。当分の間、忘れることは出来ないだろうね。下着そのものよりも、神官なのにあの太ももの艶めかしさ……けしからん、神に代わってお仕置きしたい……俺はどうかしてしまったのだろうか?
様々な人間の記憶や肉体の影響で、確実に俺はエロくなっている。くっ、これが力の代償だとでもいうのか? このままでは、いつか俺はあのハーレム王のようになってしまうかもしれない。
「……イソネさん、なんとなく考えていることわかりますけど、きっと気のせい、たぶん気のせいだと思いますよ?」
ミザリーさんに見透かされていたようで、めっちゃ恥ずかしい。え? 俺ってそんなにエロかったけ? 地味にダメージが深い。手をさりげなく恋人つなぎにしてきた彼女の柔らかい感触がなければ、危なかったところだ。
「おーい、マイナ、カスミ、ちょっと来て~!」
ミザリーさんとドキドキ手つなぎを堪能する間もなく、ミラさんが二人を呼ぶ。
ちょっと待ってほしい。ま、まさか……あの二人の下着が見れるのか……!?
あの真面目で上品なマイナさんが、
『い、イソネ殿が見たいなら、し、仕方ない……どうぞ』
なんて言いながら、騎士服をずらして見せてくれるのだろうか?
そしてあのツンデレ気味なカスミが、
『下着を見せろ? ば、馬鹿じゃないの!? へ? みんな見せてくれた? わ、わかったわ。ほ、ほら、早く見なさいよ……』
とか言いながら、その未成熟な肢体を俺だけに晒してくれるのだろうか?
「よし、それではみんなでイソネさんを着替えさせましょう!!」
「「「「おおーっ!!」」」」
……へ!? 俺を……着替えさせる?
「実はな、イソネ殿にぴったりな服を見つけてな? ほら、今の体に合う服、持っていないのだろう?」
マイナさんが照れくさそうに笑う。
そういえば、そうだった、サイズが合わないから、今着ている服しか持っていない。
「わ、私の服を買うついでだったんだから……別にわざわざ買いに行ったわけじゃないのよ?」
カスミも頬を染めながらそんな可愛いことを言う。
嬉しい……とても嬉しいのだが、今は駄目だよ!? ピンク色の妄想によって俺の体は制御不能になっているんだ。じ、時間をください、鎮まれ俺の下半身……
「ふふっ、何をそんなに恥ずかしがっているんだ、女の子じゃあるまいし……え?」
「ふふふ、マイナ、イソネさんにもいろいろあるのよ……あらまあ……うふふ……」
「ははっ、さっさと脱げ、男の着替えなんて誰も見やしねえよ……ほほう!」
「ん? なんだイソネ、こんなところに武器を隠し持っていたのか? 私が預かって……ひぃう!?」
「…………これは、私の責任ですね。わかりました、責任を取って今夜……」
終わった……俺の尊厳が……神よ、俺が一体なにをしたというのです? そもそも、なんで冒険者ギルドで着替えさせようとしたんですか?
「……さすがは、英雄イソネ殿、この状況で維持できるとは……恐るべし……」
女性陣からの尊厳を失ったイソネだが、ライオットからの尊敬を得ることには成功したようだ。
***
「ええっ!? 領主さまのお屋敷に泊まれるの?」
俺たちの報告を聞いてはしゃぐリズ。しかも、大浴場があると聞き、女性陣の笑顔の花が咲き乱れることに。やっぱり風呂はいいよね。疲れも取れるし、精神的な癒し効果もある。
「ふふふ、イソネ殿、我が屋敷には、専属の洗体メイドがいるのですよ……」
耳元でそうささやくライオット。なんだって……!? 洗体……メイド……だと!?
洗体……知っている。というか他人の記憶だけど、めちゃくちゃ気持ちいやつだ。それを……メイドがやってくれるというのか? ライオットさん、ウソだったらチェンジしますよ? 上げてから落とすとか、この世で最悪の悪行ですからね!!
妄想がとまらない。さすがは領主の館。夢とロマンが詰まっている。
「ああ、ライオット、言っておくけど、洗体メイドはいらないからな!」
「ええ? いいんですか? あ、はいではそのように……」
だというのに、ティターニアさん!? 貴女は鬼か? いや……エルフでしたね。
「ふふっ、そんなこの世の終わりみたいな顔するな。安心しろ、代わりに私がたっぷり洗ってやるからな?」
キターッ!! エルフでギルマスなお姉さまにお風呂で洗体キターッ!!
……誰だ? この女神さまを鬼呼ばわりした愚か者は? はい……俺です。
「じゃあ、私のことは、イソネが洗ってね?」
俺が……リズを洗う? ふふっ、もちろんじゃないか! 今更照れる仲でもないしね。
「あの……イソネさん? 私もその……ご迷惑おかけした責任がありますから、洗わせてください」
真っ赤な顔でミザリーさんが名乗り出る。え? なにこれ……なんで女神がこんなにいるんだろう? そうか、俺は死んだのか? いや死ぬのか?
尊厳を失ったことで、得るものがあるというのなら、喜んで捨てようではないか。プライドだけじゃ飯は食えないってね!!
「お、おい、ちょっと待てミザリー、いくらなんでも、一緒に風呂は……それに警護任務はどうするつもりなんだ?」
「まあまあ、落ち着けマイナ、これから行くところは領主の屋敷だぞ? 警護の必要なんてないだろ?」
「くっ、たしかに、そうかもしれないが……」
「だが、やはり入浴中は無防備だからな。俺とベアトリスが風呂場で警護しよう」
「なっ!? そんなずるい……いや、そ、そうだな。ならば頼んだぞ……」
「ねえねえ、イソネ、クルミも洗って!!」
「お、おう、わかったよクルミ」
「あら、じゃあ、私がクルミちゃんの警護担当ね」
しれっとミラさんも参加表明する。
「ぐぬぬ……」
マイナさんの視線がカスミを貫く。
「ひえっ!? わ、わかったわよ。私も入ります。ただし、イソネが洗ってよね?」
か、カスミの基準がよくわからない……ま、まあ結果オーライだ。
「くっ、仕方ない、ならば、カスミの警護は私がするしかないな……」
すごーく、仕方なさそうにマイナさんが独り言を言っている。
父さん、母さん、俺……今夜死ぬかもしれないよ?
イソネは、行方不明の両親にそう報告するのであった。




