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村人だった俺が神スキル『チェンジ』に覚醒して世界を救う英雄に~命懸けで戦っていたら仲間には愛されるし婚約者は増えてゆくし、幸せすぎて困ります~  作者: ひだまりのねこ
第三章 王都への旅路 ~パクス 

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ハイオークとの死闘


 集落を出るとすぐに辺りは闇の中だ。俺は夜目のスキルがあるから昼間とほぼ同じように移動することが可能だけどね。


 味方が掘った落とし穴に自らが落ちないように注意しながら森へ入ってゆく。


 普段なら聞こえてくる鳥や虫の鳴き声も今夜は聞こえてこない。不気味なまでに静まり返った夜の森は、まるで木々が恐ろしい何かに見つからないように息をひそめているかのようで、いやがおうにも緊張感が高まってくる。間違いなく……近くに……いる。


 急げ……一刻も早くハイオークに入れ替わって、攻撃を中止させるんだ。倒して済むのなら、そのほうがむしろ簡単だけど、リーダーを失ったオークどもがどんな行動をとるかわからない以上、その選択肢は採れない。強脚を使い、えぐるように地面を蹴る。



(……いた。斥候か……全部で10体)


 索敵スキルが敵影を捉える。やることは変わらない。足にダメージを与えて機動力を奪う。


『ブフォ!? ブボボボッ!!』


 俺の接近に気づいたオークが仲間に知らせる――――がもう遅いよ。鈍重なオークたちの攻撃など当たりはしない。棍棒をかわしながらすれ違いざまに足を斬りつけてゆく。


『ブギャアアアアアア!?』


 追撃はしない。今は進むことが最優先。10体のうち、7体にダメージを与えることができた。残りの3体もこのまま進むことは出来なくなったはずだ。少なくとも時間稼ぎには十分な成果だ。


 

 さらに森の奥へと進む。ここから先はオークどもの本隊がいる。索敵スキルには、数えるのが嫌になるほどのオーク。まだハイオークの影は捉えられない。



(それでも進むしかない……)


 前回もそうだったが、オークのリーダー格は一番後ろの安全地帯にいた。おそらくハイオークも最後方の殿(しんがり)にいるのだろう。回り込んでいる時間が惜しい。本隊に正面から突入する。


 オークの攻撃は、今の俺にとっては遅く普通にかわすことが出来るけれど、それは決して脅威でないということではない。かすっただけでも無視できないダメージになるだろうし、直撃すれば、当たり所が悪ければ致命傷になることに変わりはないのだから。


 今の俺は、機動力重視で決して防御力は高くない装備だ。一撃も攻撃を受けることが許されないという緊張感は、じりじりと俺の精神を疲労させ、確実に体力を奪ってゆく。


「うおおおおおおお!」


 次第に重くなる身体を叱咤し、ひたすら攻撃をかわしながら剣をふるう。一体でも多く……一歩でも奥へ進むんだ。


「ぐっ!?」


 ついに一撃喰らってしまった。幸い直撃ではないが、軽いダメージではない。


 治療したいところだけど、そんな状況でもないし、そもそも治療薬もポーションも持ってきていない。どうせこの体は使い捨てるんだから、動ければそれでいいんだ。


 


(見つけたぞ……)


 索敵スキルがひと際大きな敵影を捉える。間違いない……ハイオークだ。


 最後の気力を振り絞って、オークの本隊を突破する。



(あれが……ハイオーク……)


 通常のオークは2メートル前後なのに対して、ハイオークは頭二つ分ほどさらに大きい。全身に生えた白い剛毛と異様に赤い瞳。手にはこん棒ではなく、バトルアックスを装備している。 


 対峙しただけで分かる……強い。普通に倒したほうが楽とか思っていたけど、そんな生易しいものじゃなかった。これは倒すよりチェンジしたほうがいい。


(ただ……問題は……)


 襲い来るオークを捌きながらハイオークを観察する。奴の首に光っている首飾り。間違いなく隷属の首飾りだ。


 あれを何とかしないと、チェンジしたとしても、俺が操られてしまいかねない。魂が入れ替わったことで、無効化される可能性ももちろんあるけれど、一か八かで試す気にはなれないよね。



(ならば……首飾りを破壊するまでだ) 


 ハイオークを守るオークどもを掻い潜り、ハイオークに接近する。一瞬、ハイオークがにやりと笑ったような気がして、咄嗟に見切りを発動する。死角から飛んできた棍棒をぎりぎりでかわすと、剣を捨てハイオークに抱き着く。


 武器を捨てて抱き着いてくるという行為に意表を突かれたのだろう。一瞬だが、ハイオークが硬直した。そして俺にはその一瞬で十分だった。


 剛力スキルでブチッっと首飾りを引きちぎる。皮膚が切れて流血するが気にしない。なにせ、すぐさまハイオークが万力のような腕で俺をサバ折りしてきたからだ。


 あっという間に血管が破れ体中から血が噴き出す。全身の骨がきしみ、すでに何カ所かは折れているだろう。耐性スキルがなければ、とても耐えられないほどの痛みと苦しみだ。


(ぐっ、もっとだ……もっと痛めつけろ……)


 そしてハイオークは、ぐったりしている俺を近くの大木に投げつける。折れた枝が突き出ていて、そこに刺されば間違いなく致命傷だろう。



『……チェンジ』



 目の前には少し前まで自分だった男が、突き出た枝に刺さって痙攣している。どう見ても致命傷で、もって数分だろうな。


 

 新しい体の情報や記憶が一気に脳内に流れこんでくる。毎回この瞬間だけは慣れない。耐性スキルのおかげで、だいぶ楽にはなっているけれど。


 とにかく今は、オークの侵攻を止めなければならない。だけど――――


(くそっ、ハイオークには指揮権がないのか……)


 わかってしまった。ハイオークには侵攻を止めるだけの権限が与えられていなかった。



 そして同時に黒幕の存在を知る。


 迷っている暇も、落ち込んでいる暇もない。その黒幕を倒して侵攻を止めるしかないんだから。


 

 俺は、バトルアックスを握り直し、森のさらに奥へと駆け出すのだった。 



********************************

【 35話終了時点での主人公 】


【名 前】 タイラー → チェンバレン 

【種 族】 ハーフエルフ → ハイオーク

【年 齢】 28 → 30

【身 分】 酒場主人 → オーク軍指揮官

【職 業】 旅人 → オーク軍幹部


【スキル】 チェンジ 総合剣術 夜目 身体強化 御者 統率 強脚 狼語 見切り 奴隷契約 カリスマ 索敵 槍術 剛力 斧術 耐性 酒豪 火魔法 睡眠 魔法耐性 絶倫 オーク語  

 

 


 

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i566029
(作/秋の桜子さま)
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