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村人だった俺が神スキル『チェンジ』に覚醒して世界を救う英雄に~命懸けで戦っていたら仲間には愛されるし婚約者は増えてゆくし、幸せすぎて困ります~  作者: ひだまりのねこ
第二章 王都への旅路 ~ネスト

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盗賊団のアジトへ


「イソネ殿、そろそろ交代の時間だ。行こう」


 ベアトリスさんと一緒に宿を出る。これから冒険者ギルドサブギルドマスターのソウザの動きを監視しに行くのだ。


 常時3人態勢になるように2人ずつ交代しているのは、動きがあった時点で、情報共有できるようにするためだ。


 基本的には、夜目と索敵スキルがある俺かレオナさんが追跡役となって、盗賊団のアジトを突き止めるつもりだ。できれば俺が監視している時に動いてくれればいいのだけれど。


「マイナ、ミザリー、お疲れさん。交代の時間だ」


 まあ監視と言っても、ギルドの中では、ギルドマスターとシャロさんが、ソウザの動きをそれとなく監視している。


 俺たちはギルドの外の店で、ソウザが出てくるのを待っているだけだけどね。



「後は頼みました。イソネ殿、ベアトリス」

「……よ、よろしくお願いします」

 

 マイナさんとミザリーさんは、交代で宿へ戻ってゆく。



「うふふ……イソネさんと二人で監視なんて……デートみたいでドキドキしますね!」


 月明かりの下、上目遣いで微笑む銀髪のミラさんに思わずドキッとしてしまう。



「ミラ……私もいるんだが……」


 むっとした様子で俺の隣に座るベアトリスさん。え? 近い、近いですよベアトリスさん?


「あれあれ……ベアトリスったらいつの間に……?」


 ミラさんは、面白いものを見つけたとばかりにニンマリ笑うと、すかさず俺の反対側の隣に座る。


 えええぇっ!? ナニコレ? もしかして両手に花ってヤツでしょうか?


 いやいや、ちょっと待て。俺は今大事な任務中だよね! 集中しないと……



 だめだ……どうしても柔らかい感触や甘い匂いに集中してしまう。煩悩退散!!


 ふと隣を見れば、二人ともちゃんと監視に集中している。さすがプロの冒険者は違うよ。


 いつの間にか腕まで組まれているけどね! 両手がふさがって飲み物が飲めない……いや、それは別に良いんだけどさ。



「あ、あの……腕まで組む必要は無いのでは?」


「ここは酒場だぞ? 男女が一緒にいてこれぐらいしなければ、不自然だ」 

「そうですよ? 腕を組むのがお嫌でしたら、私が膝の上に乗りましょうか?」


「ふえっ!? あ、いや、このままで大丈夫です……」


 思わず変な声が出て赤面してしまう。


 そうだよね、二人の言うとおりだ。変に意識したりして情けない。しっかりしないと。



「むっ……イソネ殿、ソウザのヤツが出てきたぞ……」

「残念だわ……せっかくこれからが本番だったのに……」


 ミラさん? 何が本番なのでしょうか?


 ほっとしたような、少し残念なような気持ちを切り替えて、ソウザに集中する。


「じゃあ、ミラさんはみんなに知らせてください。俺とベアトリスさんがソウザを追います」


「了解、頑張ってねイソネさん。また続きしましょうね?」


 ミラさん……そんな淋しそうな顔しないで下さい。でも続きってなんですかね?



 ギルドを出たソウザは、人気の無い裏通りに入ると、いかにも怪しげな酒場に入ってゆく。



「晩御飯……って感じじゃないですね」


「恐らく、ろくでもない奴らの溜まり場だろうな。イソネ殿は、店から出てくる奴を追ってくれ。私は念の為、ソウザをそのまま見張る」


 30分ほど経って、ひとりの男が店から出てきた。用心深く周囲を確認していて、いかにも怪しい。


「じゃあ、行ってきます!」


 そっと小声でベアトリスさんに声をかける。


「イソネ殿……無茶だけはするな。生きてこそ次の機会があるのだからな」


 ベアトリスさんまで、そんな顔しないで下さい。俺ってそんなに信用ないのかな?


 過去を振り返れば、別れるたびに身体が変わってる俺は何も言えないことに気付く。



(今の俺は強いんだ。もうチェンジを使わないようにしないと……)


 みんなを守るためなら、スキルを使うことを躊躇うつもりはないけど、今回は違う。


 戦闘スキルも増えて、もうチェンジ以外に戦う手段が無かった頃の俺じゃない。


 この身体をみんな気に入ってくれているみたいだし、二度と安易にスキルは使わないようにしないとね。



***



 先行する男は、中々の手練のようで、暗闇の中でもすいすい進んでゆく。


 そりゃそうだ。普通、夜に町の外をひとりで移動するなんて、よほど腕に自信がないと出来っこない。


 幸い、俺には夜目と索敵スキルがあるから、少し離れたところから安全に追跡することができるけどね。


 男は、躊躇うこと無く大森林へと入ってゆく。


 昨日の犯罪組織といい、今日の盗賊団といい、魔物よりも同じ人間の方が厄介なんだから笑えないよ。


 しばらくして、男の動きが止まるのを感知した。おそらく隠れ家に入ったのだろう。



 近付いてみると、それなりに大きな木造の建物が見える。その周りだけ綺麗に森が開けていて、馬車が通れるだけの道も整備されているから、昨日今日出来た拠点では無さそうだ。



(どうやら見張りはいないようだな……)


 索敵には見張りの反応は無い。


 中の様子を覗こうと建物に近づいた瞬間、


 足元の地面が消えた。



 しまった――――落とし穴か!?



 迂闊だった。見張りがいなかった時点で気付くべきだったのだ。



 ズシュッ!! 


「ガッ!? か、カハッ……」


 口から血が溢れる。


 落とし穴には剣や槍が設置してあり、落下した俺の身体を容赦無く刺し貫いた。


 即死しなかったのは、頭と心臓を守る防具を付けていたからに過ぎない。


 脳裏にベアトリスさんが浮かび、感謝と共に自分の不甲斐なさに苛まれる。



 状況は最悪。即死を免れただけで、このまま放置すれば、出血多量で十分致命傷になるのだから。


 多分、そう長くは持たないだろう。



(頼む……誰か来てくれ……)



 地上から声が聞こえてくる。 


「おい、落とし穴に何か落ちたぞ」

「ほっとけ! どうせまた獣だろ?」


「それもそうだな、ワハハハッ」




 声が遠くなる。奴らが離れて行ったのか……俺の意識が薄れていっているのか……



 俺は……こんなところで……死ぬのかな?


 リズ……クルミ……マイナさん……レオナさん……ベアトリスさん……ミザリーさん……ミラさん……


 意識が遠くなる。もはや指一本動かせない。



 死ぬな……諦めるな……死にたくない、まだ死ねないんだ。だから……動き続けろ俺の心臓……




(…………チェンジ)


 意識が途切れる瞬間、イソネは確かにそう呟いた。



*************************************

【 21話終了時点での主人公 】


【名 前】 シグマ

【種 族】 熊獣人族

【年 齢】 28

【身 分】 護衛

【職 業】 護衛


【スキル】 チェンジ 総合剣術 夜目 身体強化 御者 統率 強脚 狼語 見切り 奴隷契約 カリスマ 索敵 槍術 剛力 斧術

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(作/秋の桜子さま)
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