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銀狼の獣人クルミ

 私には両親の記憶が無い。


 物心ついた時にはいなかったから。


 私を育ててくれたのは、黒狼獣人のウルナ。


 10歳になるまで色々なことを教えてくれた姉のような人だった。



「クルミ、良いですか? 嫌な匂いがする人に近づいたり、信じてはいけませんよ」


「うん、わかった、ウルナ」


 私には生まれつき匂いで他人の悪意が分かる力があった。


 ウルナはとってもいい匂いがするから大好き。 


 ある日、血だらけのウルナが、私に逃げるように言った。


 私は一緒に逃げようって言ったけど、ウルナは私を抱きしめてから首を横に振った。


「クルミ、よく聞きなさい。ここは私が時間を稼ぐから、あなたは逃げて」


「うん……わかった、ウルナ」

  

 ウルナはいつでも正しいもの。だから言う通りに私は逃げないと。


「良い子ねクルミ。もし私と同じような匂いの人がいたら付いて行きなさい。きっとクルミを助けてくれると思うから……」


「ウルナ、ウルナは?」


「私なら大丈夫! 生きてさえいれば、きっとまた会える。さあ、行きなさい!」


 とても大丈夫には見えなかったが、ウルナが嘘をついたことは一度も無い。


 私が居たらきっと足手まといになってしまうから。


 私は逃げた。


 理由は分からないけれど、私が狙われているのは、何となくわかった。


 悪いことしてないのに何で逃げないといけないんだろう?


 でも捕まったらきっとウルナに迷惑がかかる。だから逃げないと!


 悪い人たちはとても臭いからすぐ分かる。


 私は何とか逃げて辿り着いた町で暮らし始めた。


 良い匂いがする人は私を助けてくれた。


 でも、しばらくするとまた臭い匂いがやって来て私はまた逃げる。


 何処へ行っても逃げられない匂い。



 ある日、とうとう捕まってしまった。


 捕まったことより、ウルナとの約束が守れないことが悲しくて泣いた。


 もう二度とウルナに会えないのだと思って、また泣いた。


 私を捕まえた連中は、酷い匂いがする。


 私は食欲が無くなってガリガリに痩せた。



 ある日私は自由になった。


 臭い連中は居なくなっていた。


 代わりに居たのはウルナみたいな匂いの男の人とお日さまみたいなお姉さん。


 見つけた。ウルナ、私、見つけたよ。


 絶対に付いて行こう。


 だってウルナが嘘をついたことなんてない。


 ウルナが言うことはいつも正しいんだから。





「おーい、みんな、イソネが上手くやったぞ!」


 レオナさんが戻ってきた。イソネが上手くやったって!


 良かった。イソネが無事で良かった。


 私はほっと息を吐く。


 路傍の花の人たちもとても良い匂いがするから、私は安心する。



 イソネはとてもすごい人。


 たったひとりで悪い奴らをやっつけちゃうんだから。


 イソネはとても優しい人。


 自分のことよりも、周りの人を守ろうとする強い人。誰かのために涙する人。


 私には分かる。イソネはとても苦しんでいる。


 身体が変わるたびに、人を殺すたびに心が悲鳴を上げている。


 私にも何か出来ないかな? 


 いつもイソネに助けてもらってばかり。


 大好きなイソネの役に立ちたいな。


  


「イソネ!? おい、大丈夫か!?」


 組織の拠点に行くと、また姿が変わったイソネが意識を失って倒れていた。


 リズもマイナさんもみんなびっくりして駆け寄った。


 私は心臓が止まりそうなほど心配だったけど、幸いイソネはすぐに意識を取り戻した。



 イソネはすごく弱っていたけれど、私を見たら笑ってくれた。


 私が笑うと、イソネが元気になるのがわかった。


 イソネが元気になるのが嬉しくて、私はまた笑う。


 そんな私を見てイソネはもっと元気になった。楽しいな。


 だからね、私はいつも笑っていてあげる。


 イソネが元気になるように。元気になるまでそばにいてあげる。


 

 ウルナ、逃げることしか出来なかった私にも出来ることがあったんだよ。


 いつかまた会えたらウルナのことも元気にしてあげたいな。


 だって最後に見たウルナの顔はとてもかなしそうで泣いていたから。


 


*************************************

【 17話終了時点での主人公 】


【名 前】 シグマ

【種 族】 熊獣人族

【年 齢】 28

【身 分】 護衛

【職 業】 護衛


【スキル】 チェンジ 総合剣術 夜目 身体強化 御者 統率 強脚 狼語 見切り 奴隷契約 カリスマ 索敵 槍術 剛力 斧術

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i566029
(作/秋の桜子さま)
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