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13 チンピラ構成員のケビン

 

 リズやクルミはもちろん、マイナさんたち路傍の花メンバーにも被害を出さずに拠点を殲滅し、囚われた人々を全員無事に助け出す。


 絶対確実なんてものはないけれど、限り無く成功率の高い方法はある。


 最初はマイナさんや、ギルドのシャロさんに頼んで信頼の置ける冒険者を集めようと考えたけれど、やはり人数が増えればそれだけ組織にバレる可能性が高くなるし、追い詰められた連中がどんな行動をとるか分からない。


 やはり出来るだけ少人数で秘密裏に実行すべきだ。



 ただし、この方法を実行するなら、マイナさんたちに俺のスキルについて話す必要がある。


 秘密を話すこと自体はもう心配していない。後は俺自身の覚悟だけの問題だ。



 別にこの身体にそれほど愛着がある訳じゃないけれど、路傍の花のみんな、特にマイナさんとの記憶ややりとりはこの身体と共にある。


 リズやクルミのように、別の人間になった俺を同じように受け入れ、接してくれるのか? 


 今更ながら、きっと怖くなっているんだろう。


 

 でもさ、俺のスキルを使えば、みんなを危険から遠ざけることが出来るんだ。


 妹さんを心配するシャロさんや子どもたちの家族に悲しい思いをさせずに済むかもしれない。



 だから悩むことなど何もない。


 俺はとっくに踏み出してしまっているんだ。


 みんなを守るためなら迷わずチェンジを使うって決めたのだから。




***




 俺はみんなに作戦を説明した。


 もちろん、チェンジのスキルについても。



「…………」


 どうしたんだろう? みんな無言だ。


 やはりこんなスキル、気持ち悪いよな。だってそんなつもりは無くても、マイナさんたちを騙していたようなものだし。



「イソネ殿、信じ難いけれど、貴方は嘘や冗談でこんなことを言う人ではない。話はわかりました。でも――――」 


 ようやく口を開いたマイナさんが泣きそうな顔で俺の手を取る。



「それでは……それではあまりにもイソネ殿の負担が大きすぎるではないですか!!」


「大丈夫ですよ、マイナさん。俺ひとりならどうにでもなりますから」


 実際、首を落とされても大丈夫だったし。もう二度と経験したくないけどな。



「違います! 貴方の心の負担が大きすぎると言っているんです」


 マイナさんの碧い瞳が揺れる。他のみんなも彼女に同意するように大きく頷く。



 ああ……そうか、俺は何を勘違いしていたんだろう。


 マイナさんたちは俺を本気で心配してくれていたんだな。



「ありがとうございます。でも大丈夫です。たとえ姿が変わったとしても、俺にはリズやクルミ、そして路傍の花のみなさんがいます。俺という存在を知ってくれている人がいる限り、俺は消えたりしない。生き続けられるんですよ」



「イソネ殿…………」 


 マイナさん、そんな顔しないで下さい。貴女には笑っていてもらいたいのに。



「わかったよ、なら俺の出来ることを精一杯やるだけだ」


 ありがとうございます、レオナさん。


「任せておけ、イソネ殿、周りはしっかり守ってみせるからな」


 頼もしいです、ベアトリスさん。


「連中はひとりも逃さないから安心してくださいね。イソネさん」


 はい、頼りにしてます、ミザリーさん。


「あらあら、せっかく良い男だったのに残念ですね〜、ね、マイナ?」


「な、ななな何故私に振るんだミラ!?」


 真っ赤になって慌てるマイナさん。


「じーっ…………」


 うっ、リズのジト目が痛い。


「イソネ……モテモテ」


 クルミの感情が読めない……



「イソネ殿、たとえ姿が変わったとしても、私は何も変わりませんから」


 その宝石のような碧い瞳を潤ませるマイナさん。


 ありがとうございます、マイナさん。


 その言葉がどれほど俺を勇気づけてくれることか。



「イソネ、どうせなら若い身体にしなさいよね」


 ありがとう、リズ。お前がいつも通りに接してくれるから、俺はいつでも前を向けるんだ。どれだけ助けられているか、感謝しているかわからないよ。


「わかった、なるべく若くてイケメンな奴にするさ!」



 冷静に考えるとなかなかヤバい会話してるよね、俺たち。

 


*** 



 日没が迫るころ、俺たちは拠点の近くに潜んで構成員が出入りするのを待っていた。


俺の隣にはレオナさんとベアトリスさんが控えている。


 チェンジで入れ替わった後のクレメンスの身体を始末してもらう為だ。


 さすがにマイナさんにやってもらうのは可哀想だと2人が立候補してくれたのだ。


 いつものように縄で縛られた状態なので、傍から見たらただの変態にしか見えないのがアレだけど、万一の事を考えると耐えるしかない。


 リズ以外の女性に2人がかりで縛られるのもなかなか……なんて思ってない。



「イソネ殿、来ましたよ」


 拠点からひとりの男が出てくる。これはチャンスだ。


「レオナさん、ベアトリスさん、後は宜しくお願いします」


「頑張れよ!」

「ご武運を」


 スキルは念じるだけで発動出来るが、2人にもわかるように、あえて言葉にする。


(じゃあな、俺の身体。せっかく気に入り始めてたんだけどな…………)




『チェンジ!!!』



 新しい身体はケビンか。


 年はまあ若いけど、典型的なチンピラ顔なんだよな。しかも雑用係の下っ端。


 記憶を見る限り、クズ中のカスだな。



 とりあえず、レオナさんとベアトリスさんにそっと合図の手を振る。


 さあ、ここからが本番だ。忙しくなるぞ。



*************************************

【 13話終了時点での主人公 】


【名 前】 クレメンス → ケビン

【種 族】 人族

【年 齢】 37 → 19

【身 分】 ノルン領主 → チンピラ

【職 業】 領主 → チンピラ


【スキル】 チェンジ 総合剣術 夜目 身体強化 御者 統率 強脚 狼語 見切り 奴隷契約 カリスマ 索敵


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i566029
(作/秋の桜子さま)
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