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12 行方不明者と組織の影


 ネストは広大な大森林の辺縁部に位置し、林業が主要産業の小さな町だ。


 町から大森林を抜けて北上するとアルヘイス山脈を越える王都への最短ルート。


 大森林に沿って西へ進むと、イソネたちが進む予定の迂回ルートとなる。



「なんだか様子が変ですね……何かあったのでしょうか?」


 マイナが眉をひそめる。


 ネストに到着してすぐに、町が普通の状況でないことに気付く。


 なにやら町中の人々が、焦りと不安で走り回っているように見えるのだ。



「すいません、何かあったんですか?」


 近くの屋台の人にとりあえず聞いてみる。


「ああ、旅の人か。森に薬草を採りに行った子どもたちが行方不明になったんだ。日暮れまであまり時間も無いし、捜索隊が出てはいるんだが、まだ見つかっていないらしい……」


 悲痛な表情で話す屋台のおじさん。

 

「おじさん、何処へ行けば情報がもらえますか?」


「探すのを手伝ってくれるのかい? なら、冒険者ギルドへ行くと良いよ」


 おじさんに礼を言って冒険者ギルドへ向かう。



「みんな、ごめん。勝手に決めてしまって」


「何言ってんの、もちろん私も手伝うよ」 

「クルミも頑張る……」


 リズとクルミも手伝ってくれるらしい。


「ふふっ、イソネ殿は本当に変わった人ですね。何の得にもならないのに……みんな、私たちも手伝いますからね!」


「ああ、当然だな。護衛の一時中断をお願いしてでも行こうと思っていたところだ」


 さすがレオナさん男前!


「うむ、きっと助けを待っているはずだ」


「うう……森はあまり得意ではないのですが、頑張りますね」 


「怪我をしているなら私の出番もありそうね!」


 ベアトリスさん、ミザリーさん、ミラさんもやる気満々だ。


 本当にこのパーティに依頼をして良かったよ。あらためてそう思う。




 冒険者ギルドでは臨時のカウンターが設けられていて、捜索隊への協力を呼びかけていた。


 すでに沢山の冒険者たちが捜索隊に参加しており、ギルド内は人もまばらだ。


 本来冒険者は利益にならないと絶対に動かないものなんだけどな……なんて言うか、温かい町だと嬉しくなるよ。



「シャロ、久しぶり!」


 名前を呼ばれ、目を見開く受付嬢のシャロ。


「ま、マイナ! それに路傍の花のみんなも……」


「大変そうだな、私たちにも手伝わせてくれないか?」



「もちろんよ。ありがとう……本当にありがとう」


 青い顔で涙を流すシャロさん。


「ま、まさか……シャロ?」


「うん……実は私の妹も行方不明なのよ」




 シャロさんの話によると、子供たちが薬草を採りに行ったのは今朝早く。


 大森林では無く、辺縁部の林の中であったし、シャロさんの妹も含め、大人も3人付いていたので安心していたらしい。


 遅くとも昼前には戻るはずが、昼を過ぎても帰らないので、呼びに行ったところ、現場には誰もいなかったのだという。



 実は、子どもたちが行方不明と聞いて、俺には思い当たる節があった。


 人身売買組織のエルダーと用心棒カスパー、そして奴隷商人のキムの記憶があったからこそだけど。


 もちろん可能性のひとつに過ぎないが、この近くには人身売買組織の拠点があるのだ。


 状況からして、魔物の仕業とは考え難いし、組織の犯行の可能性はかなり高いのではないかと思っている。



(あの連中……本当に何処にでもいやがるな)



 もし、連中が犯人でなくとも構わない。


 沢山の人々の人生を台無しにしている極悪非道な組織なら、潰してしまった方がこの町のためにもなるし、ひいては世のためにもなる。


 でも、そうなれば危険が伴う以上、マイナさんたちには正直に伝えないといけないだろうな。


 もし断わられたら、その時は、俺だけで乗り込めば良いのだから。



***



「なるほど……イソネ殿の見立てでは、その人身売買組織が怪しいと?」


 マイナさんが難しい顔で考え込んでいる。


「確かにこれだけ探して痕跡すら見つからないのは不自然だな」 


 レオナさんは俺の見立てに賛成のようだ。


「拠点の場所が分かっているなら丸ごと燃やしてしまいましょう」

 

 普段大人しいミザリーが珍しく怒っている。


 魔族という珍しい種族もまた、人身売買組織に狙われやすいらしく、恨みを抱いているのだ。


「駄目よミザリー。そんなことしたら捕まっている人まで燃えてしまうわよ? でも組織を潰すのは賛成〜」


「イソネ、また稼げそうね!」


 リズ……うん、良い笑顔だ。もはや組織が美味しい獲物みたいになっているぞ。


 否定出来ないのがアレだが。


 それでも、連中は国中はおろか、大陸中に拠点を持つ巨大犯罪組織だ。


 もし組織に俺たちの存在がバレて敵認定されでもしたら、もはやこの世界に安全な場所など無くなってしまう。


 だから絶対に失敗は出来ないのだ。


 拠点を潰すなら、確実に殲滅して、一人も逃さない必要がある。


 前回はフォレストウルフたちがいたから良かったけれど、今回は明らかに手が足りない。


 死んでいった仲間たちのことを考えると罪悪感と無念さで今も苦しくなるけれど、同じ過ちを冒さないように考えるのだ。


 こちらに被害を出さずに、囚われた人々も助けなければならない。



 考えていた以上に難しいミッションになりそうだ。



*************************************

【 12話終了時点での主人公 】


【名 前】 クレメンス

【種 族】 人族

【年 齢】 37

【身 分】 ノルン領主

【職 業】 領主


【スキル】 チェンジ 総合剣術 夜目 身体強化 御者 統率 強脚 狼語 見切り 奴隷契約 カリスマ


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i566029
(作/秋の桜子さま)
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