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泣き虫お嬢様と呪われた超越者  作者: 覚山覚
第五部 飛翔するランバード
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百一四話 決まっていたバイト

 雨音から受け取った超能力者関係と思しき組織の資料。その組織の数は二桁に達していたが、調査自体はそれほど手間の掛かる作業ではなかった。


 雨音がお膳立てを整えていたので当然と言えば当然だ。備えあれば憂いなしの精神なのか、組織関係者たちの自宅の合鍵まで用意されていたのだ。

 流石の黒幕系付き人である。


 そして雨音が目星を付けた組織は、その見立て通りに超能力者を抱えていたが……結果的に、俺の懸念は杞憂に終わった。


 一般企業の体裁をとっている組織、宗教団体の看板を掲げている組織。それは超能力者の互助会のような組織であったり、超能力を見世物にしている組織であったりしたが、俺の眼で判断しても『放置』で問題無いと思われる組織ばかりだった。


 少年が持っていた発火能力や腕が伸びる能力などもそうだが、超能力の中には悪用に不向きなものも多いという事情もあるのだろう、光人教団のように超能力を悪用する組織は少数派だったという訳だ。


 むしろ俺が探った超能力者に関して言えば、雨音に疑われただけで自宅の合鍵まで作製されていたので被害者と言えなくもない。げに恐ろしきは雨音である。

 ともあれ無事に一仕事終え、俺は晴れやかな気持ちで孤児院を訪問していた。


「ほう、ついにミスミのバイトが決まったのか」

「そうなんですよ。やっぱりお金が無いと何もできないですからね~」


 若くして世の真理に気付いたミスミ。

 しかし愚痴を漏らしながらも、その顔は未来へ期待するようにニヘーッとしているので、これで初のアルバイトを楽しみにしているようだ。


 ミスミの安全を考えれば外で働くことは望ましくないのだろうが、もちろん反対はしない。自由を奪って安全を確保したところで意味が無いのだ。


「それで、どんなバイトを選んだんだ?」


 俺は名探偵として見識を広げるべく、学生時代には様々なバイトを経験している。社会経験ばかりか金銭まで得られるのだから働かない理由はない。


 だからこそ俺の伝手でバイトを紹介しても良かったのだが、ミスミは自分で探したいとの事だったので、本人の前向きな意思を尊重していたのだ。


「ふふっ、よくぞ聞いてくれました。とびっきりの仕事を見つけちゃいましたよ」


 なぜか自信ありげな様子のミスミ。

 学生が選べるような仕事で掘り出し物は少ないのだが、この小癪な態度からすると好条件のバイトを見つけたのかも知れない。


「私が見つけた仕事は凄いですよ~。短時間で高収入、笑顔の絶えないアットホームな職場で、しかも誰にでも出来る軽作業らしいんです!」


 うっっ!?

 なんてこった、地雷ワードがてんこ盛りではないか……!

 誰にでも出来る軽作業で高収入という違和感に疑問を持たなかったのか……。


「そ、そうか……。これは俺のバイト経験から言っておくが、軽作業で募集していても実際に軽作業だった事はないぞ」


 未来への希望に満ちているミスミに水を差すのは気が引けるが、それでも待遇に期待し過ぎないように釘を刺しておく。


 若い時分に『ハズレ』の仕事を経験するのは悪くないので止めはしない。安易にバイトを選んで失敗すれば、今後の仕事選びも慎重になるというものだろう。


「ちなみに時給はどれくらいなんだ?」

「それがなんと……最低時給が千円で、働き次第では時給一万円になるんです!」


 くっっ、なんという怪しさだ……。

 近辺の相場では時給千円は妥当だが、どう考えても時給一万円はあり得ない。


 おそらくは永久に到達する事のない時給なのだろう……いや、もしかすると違法な仕事という可能性もあるか。


「な、なるほど。誰にでも出来る軽作業と言いながら剛球をブチ込んできたな」


 ミスミの仕事には干渉しないつもりだったが、これは念の為に探りを入れておくべきかも知れない。世間知らずなので反社会的な仕事でも受け入れかねないのだ。

 今後の方針を胸中で考えながら、それと悟られないように話題を変える。


「給料の使い道は決めているのか? 自分で稼いだ金なら散財しても構わんぞ」

「そうですねぇ……。孤児院に何割か入れるとして、まずはやっぱりスマホですね。ここの子供たちにポロリを布教しなくてはいけませんから」

「――それは駄目だ。そのような悪行は許さん」

「えぇぇ、なんでですか~っ!」


 邪悪な野望を一刀両断すると、ミスミはふくれっ面で不満の声を上げた。

 しかし俺は主張を曲げるつもりはない。子供たちにスマホで動画を見せるつもりなのだろうが、あんな情操教育に良くない映画を見せるわけにはいかないのだ。


「罪を犯しても未成年だから許されると(うた)う映画を子供に見せられるものか。もう観てしまったミスミはともかくとして」


 悪質な連続殺人犯でありながら少年法に守られていた佐藤ポロリ。

 続編の二作目も嫌な予感はしていたが、やっぱり『わいが犯人やて!?』とポロリが犯人だったのだ。もはや名探偵の事件簿どころか犯人の殺人日記である。


「そんなぁ……。だって、学園にはポロリ仲間が居ないんですよ?」

「それは居ないだろうな。……まぁ、俺とラスが付き合ってやるから我慢しろ」

「じゃあ、三作目を観てくれるんですね!」

「そ、そうだな……」


 捕食者に食いつかれるようにポロリの視聴を約束させられてしまった。 

 前々から三作目を勧められつつも聞き流していたのだが、ミスミが気落ちしていたので仏心を出してしまったのだ。


 しかし、約束したからには応えるべきだ。

 ミスミ情報ではポロリの三作目は方向性を変えているとの事なので、それに淡い期待を抱いてラスと一緒に視聴しておくとしよう……。


明日も夜に投稿予定。

次回、百一五話〔完成してしまうソシャゲ〕

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― 新着の感想 ―
[一言] 名探偵ポロリがとても気になります。 実際に見てみたいですw
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