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そうして陛下と仲良く食事をするようになって、1ヶ月経った。
「それで美味しそうなキノコがいっぱいあったので採ってきたら、止まらなくなってしまって。危うく森の生態系を壊すところでした」
「なるほど。だから一時あんなに食卓にキノコが出ていたのだな」
「あれ陛下の夕飯にもなってたんですね」
最初は相槌しか返してくれなかったが、最近はこんな感じに会話もしてくれるようになった。
「ところで」
「?」
「私、陛下のお話も聞きたいです」
真っ直ぐ目を見てお願いする。
そう、なんと私1ヶ月間ずっと陛下に話しかけてた。今まで話かけられ待ちだった身としては凄い進歩だ。
でも陛下の話も聞いてみたい。
身を乗り出すと、陛下は居心地悪そうにたじろいだ。
「話せることなんて何もないんだ」
「何でもいいですよ、最近あったこととか」
そう言うと、陛下は静かに目を伏せた。
どうしたんだろう、すごく悲しげな感じがする。
「……………ことか、」
「…? 何て言いました?」
「生憎、君に公務の話をするつもりはない。
こんなところに嫁がされても尚、国のことを思う姿勢は立派だが、今後そういうことは謹んでもらいたい」
眉間に皺を寄せながら下を見て話す陛下と反対に、私は目がまんまるになった。
「違います。陛下の話です」
「だからそれは、」
「公務の話じゃなくて、最近嬉しかったこととかです。
例えば、今日は天気が良かったとか、早起きできるようになったとか」
そう言うと、今度は陛下の目がまんまるになる。
「………………そんなの君は何にも面白くないじゃないか」
「楽しいです、とっても」
身を乗り出して断言すると、陛下は目を泳がせた。
「それに、国のことを思うって言いましたけど、今の私の国はこの国です。故郷に情報流したりなんてしません」
更に弁解する。
当たり前だ、私の居場所は嫁いだ時からこの人の隣になったのだ。裏切るような真似は絶対にしない。
「…な、な、」
「?」
陛下は口をパクパクさせた後、手で顔を覆って黙り込んでしまった。
な?ナス??
「陛下、耳が赤いですけど どこか具合が悪いのですか?」
そう聞くと、陛下は悲鳴のような声で叫んだ。
「分かった、これはもう全部君が悪い!」