戦う覚悟
ラブライブ9周年おめでとうございます!
「皆に伝えるべきことがある」
魔物の足後を発見してから一時間後。村長は村民達の村の中央広場に集める。
突然集められたこと。村長の険しい表情から村民達は良からぬ何かを察し、不安そうにしている。
そして村長は意を決して伝える。
村周辺に魔物が出現したと。
村民達は途端に顔を強張らせ、ざわめく。
村長はざわめきの中、話を続ける。
魔物の討伐と警護は俺を中心に結成された自警団が対応する。
村民達には安全が確認できるまで不要な外出は控えて欲しいと忠告して、集会の幕は降りる。
「トーカ!」
集会が閉まると村民達は一言も喋らず、重い足取りで自宅へと戻っていく。その中でレイカだけは真っ直ぐ俺の元に駆け寄ってくる。
「また、戦うの!?」
怒りと悲しみ、不安が混じった複雑な表情をレイカは浮かべていた。特に背中に背負った剣を見た時の表情は特に歪んでいた。
震える声に対し、俺は首を縦に振る。
「どうして、また戦うのよ! もう普通の人なんでしょ!?」
「俺は元救世主だから。みんなを安心させる為には前に出ないと」
「でも今は力なんてないんでしょ!? それなのに戦ったら死ぬかもしれないじゃない!」
親子というには言うことも似ている。レイカも俺には戦って欲しくないようで必死に説得する。
他の村民達にとっていくら俺に力がなかろうが世界を救ったという事実は決して覆らない。だから、俺が前線に立てばみんなは少しくらい安心させることができるだろうと思っている。
だから俺は戦うのだ。例え力が無くてもだ。
それ以外の言葉は悔しいが、全て的を得ていた。
「でも俺には魔物に対する知識。戦闘技術と経験が豊富だ。他の人よりは絶対に上手くやれる」
「あなたは勘違いしてるの! 力がなくても戦えるって!」
「俺は……戦えるさ」
俺はか細い声で答える。
正直、不安だった。チート能力を失った俺はどのくらい強いのか。魔物を倒せるくらい強いのか。はたまた、倒せないくらい弱いのか。
村長にやれると大見得をきったにも関わらず、こんな弱腰になっていることに笑いが込み上げてくる。
「た、大変だ! 魔物が出たぞ!」
突撃、カマローが額から大量の汗を流しながら魔物を来たことを叫んだ。
覚悟を決める時間すら魔物は与えてくれない。
俺は一歩、足を踏み出す。
「待ってよ!」
戦地へ向かう俺の袖を掴むレイカ。
救世主として旅出た時も同じ様に袖を引っ張られたことを思い出す。
俺はゆっくりと振り返り、優しくレイカの手に触れる。レイカの手は酷く震えていた。
「大丈夫。俺は死なないさ。今度は村を救った救世主として戻ってくるから」
俺はそう約束を一方的に交わすと、袖を掴むレイカの手を優しく解く。
そして、俺は決意が鈍らぬよう。我武者羅に走り出すのであった。