表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/58

悪魔の足跡

エクバ2でやっと中尉になれました


クロスボーンガンダムX2、ありがとう

 新しい朝が来た。

 たっぷりの睡眠とレイカ特性のシチューを取ったことですっかり元気を取り戻した俺は軽い足取りで朝のパトロールに出かける。


 魔物がいなくなったと言っても畑を荒らす動物達は存在する。

 俺はそんな動物達から作物を守る為に毎朝、畑周辺を散歩がてらパトロールしている。


「あれ、イギー村長?」


 にんじんを育てている畑に行くと、神妙な面持ちで地面を睨んでいるイギー村長がいた。


「トーカ。ちょうどいいところに来たな」


「村長?」


 村長は俺を見るやすぐに手招きをする。

 一体、どうしたのかと俺は首を傾げながら、村長の側による。


「これを見てくれ」


 そして、指差す地面を見る。


「これは!?」


 それを見た瞬間、額から汗が滝のように流れ、呼吸が浅くなる。

 村長が指差したもの。それは嫌でも見てきた魔物の足跡だ。

 蹄のような形をしているが、大きさが成人男性の顔ほどあった。


「ど、どうして……」


「討ち漏らしたのか。それとも再び侵攻を始めたのか」


 焦り、動揺する俺の隣で村長は髭を弄りながら冷静に分析している。

 

 俺は世界は救ったはずだ。確かに全ての魔物を倒したわけではなく残党がいてもおかしくはない。しかし、デスペラードは二度と侵攻しないと宣言していた。


 約束を破ったのか?だが、デスペラードはそんな卑怯な男ではないはずだ。最終決戦の時も瀕死の俺を見逃すような奴だ。


「気負うな。お前は何も悪くはない。悪いのは魔物だ」


 頭の中に様々な憶測が飛び交い、混乱している俺の肩を村長は優しく叩き、現実に引き戻す。


「魔物が現れた際は私達が引き受ける。お前は念の為、女と子供達を守ってくれ」 


 村長の提案に俺は眉をしかめる。

 確かに俺は以前ほどの力はない。だが、戦いの中で培ってきた経験や技術は今も体に染み付いている。


 普通の人間よりも対魔物戦には精通していると自負しているからこそ、最前線で戦いたい……戦わなければならない。


 守ることも大事だが、それでも迫りくる敵をどうにかしなければジリ貧になるだけだ。


「俺だって……まだやれるさ!」 


 村長は俺の瞳を見つめながら、ゆっくりと口を開く。


「私達だって束になれば魔物の一体や二体ならどうにかできる。お前が旅に出ていた間、この村を守ってきたのだ。それにお前は普通なのだ。今までずっと戦ってきて辛かっただろう。もうそんな思いをする必要ない」


 俺の肩に置いてある村長の大きな手が震える。

 戦うことは辛い。傷ついて苦しむばかりで起きない方がいい出来事。

 俺はそんなことを一年以上休むことなく味わってきた。村長は俺を気遣ってくれているのだ。


 でもそれは違う。その気遣いは間違っている。


 ただ単に戦うことが辛ければ俺は救世主になることはなかった。途中で逃げ出していただろう。


 俺が戦ってこれたのは戦うこと以上に辛い思いを味わいたくないから俺はずっと戦い続けていたのだ。


「村長。あんたは気遣いは嬉しいよ。だからこ間違っているって断言する。戦うことの辛さよりも誰かを失う辛さの方が何百倍も辛い。だから俺は戦ったんだ」


「……お前は……戦士なんだな……」


 俺の真っ直ぐな瞳を見て、村長の根は折れた。


「なら、私達と一緒に戦ってくれ」


 俺は力強く、首を縦に振った。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ