俺の力
「こ、こういう感覚か!?」
俺は斬った石を見て、思わず声が震える。
ただ嬉しかった。
石はノブトモの斬った物と同じように二つに分かれ、断面もヤスリで表面処理をしたかのように綺麗であった。
「あぁ、そうだ。流石、世界を救っただけのことはある」
ノブトモは感心するがまだ満足していないと言った表情だ。
「だが、一度成功したくらいで身につけたと思うなよ」
その瞬間、ノブトモから凄まじい殺気が発せられる。
俺はその殺気を全身で受け止める。
体に電気が流れたようにピリピリとした感覚。
ノブトモは足元に落ちていた刀より少し小さい木の棒を拾う。
「強化魔法……鉄化」
すると、ノブトモは剣を持つ俺に木の棒を振るう。
俺は木の棒を剣で受け止める。
普通ならば木の棒は剣に負けて、折れるなりするだろう。
しかし、今はおよそ木の棒から出るはずのない金属音が響く。
それもそのはず。ノブトモは強化魔法の鉄化で木の棒の強度を鉄に変化させたのだから。
「この程度の硬さなら貴様は斬れなくてはならない」
「何!?」
「戦闘ではいちいち貴様が集中する暇などないのはわかっているだろう。だから、自然と、余計な手間をかけずに先のことをできるように荒療治を行ってやる」
「なるほどね」
俺は鍔迫り合いをしながら笑みを浮かべる。
ゴートル討伐まで、もう期間は三日もない。
それまでに人器一体の極意を身につける。それもいつ如何なる時も行えるようにしなければならない。
そんじゃそこらの柔な修行では間に合わない。相当、無茶な修行を行う必要があるだろう。
「あぁ、いいぜ。受けてやるぜ! 俺は……絶対に強くなる!」
全て、覚悟の上だ。
そう簡単に強くなれるはずがない。寧ろ、今までが甘かった。
多少の苦難を乗り越えることで俺は神様から与えられた力ではなく、俺の本当の力を手に入れる。
恐怖もあるけど、それ以上の興奮があった。




