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修行

「さて、早速だがクエスト開始まで、三日もない。だから!」


 高笑いを上げてから束の間。

 ノブトモは腰に携えた鞘から刀を抜くと切っ先を俺に向ける。


「荒療治で行くぞ!」


「はぁ!? ちょ、いきなりかよ!」


 俺の有無など関係なく、ノブトモは突然、修行を開始する。

 鬼のような形相で襲いかかるノブトモに気圧されながらも俺は背負った剣を抜き、応戦する。

 ノブトモの一太刀はまるで岩のように重く、少しでも気を抜けば、膝から崩れ落ちてしまうほど。


「このぉ……やるなら!」


 その重い一撃を何とか払い除ける。

 フリーになった俺は、理不尽な攻撃に対する怒りをぶつけるようにノブトモに剣を振るう。

 案の定、ノブトモは俺の剣を刀で簡単に受け止める。

 受け止められてもなお、俺は攻撃を続ける。

 炎のような激しい攻撃。

 流石のノブトモも何度も激しい攻撃を受けるのは厳しいようで額から汗が流れる。


「ふむ! やはり太刀筋は悪くはない! 流石に数々の死線を潜り抜けてきたことがある!


「お褒め頂き感謝ってね!」


「だが! 甘い!」


 俺達は同じタイミングで後ろに飛び去り、距離を取る。


「太刀筋が荒い! 力だけで振るっている! 叩き斬っているだけ! それでは剣の本質を引き出せない!」


「どういうことだ!?」


 叩き斬るのが剣の本質ではない?

 ノブトモの言葉の意味が一切、わからない。

 叩き斬っているのだから剣として使用しているはすだ。


「わからないのなら、見せてやろうか」


 ノブトモは足元に落ちていた拳程度の大きさの石を拾う。

 そして、石を宙に放り投げる。

 石は到達点まで上がると、後は重力に引かれて落ちていく。

 そして、石がノブトモの前を通り過ぎる瞬間、神速の斬撃が起きる。

 風斬り音が鳴ると同時に石が半分に切れる。


「どうだ」


「どうだって、ただ斬っただけ……」


 ただ、石を斬っただけで得意気なノブトモに俺は拍子抜けする。

 確かにノブトモの斬撃は感心するほど速い。

 しかし、たかが石を斬ることくらい俺にだってできる。というか、剣を使える人間は誰だってできる初歩中の初歩。

 それなのに得意気になる理由は一体何なのかと疑問に思いながら、俺は斬られた石を拾う。

 そして、唖然とした。


「何だ……この断面!」


 斬られた石の断面はまるで氷のように滑らか。

 何より、斬られた衝撃による欠けやひび割れが一切なかった。

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