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己の未熟さ

 力を使い果たし、俺は膝から崩れ落ちる。

 しかし、全力を出したおかげで一太刀でキラービー達は全滅した。


「見事だな。まさか一人であの大群を殲滅するとは」


 背後からゆっくりとノブトモが俺の元に歩み寄ってくる。


「だが、甘いな」


 すると、ノブトモは刀を抜き、突然俺に刃先を向け、突刺そうとする。


「何しやがっ!」


 回避しようとするも疲労のせいで体が思うように動かない。

 万事休すか。

 だが、刀は俺の顔の横を通り過ぎ、


「ギジャア……」


 背後から反撃しようとしていたキラービーの頭を貫く。


「ツメが甘い」


 ノブトモはニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

 キラービーから突き刺した刀を抜き、刀身についた紫色の血を払い、スッと鞘に納める。


「……助かったよ……」


「ほう、ちゃんと礼を言えるか。偉いぞ、坊主」


 そう言って、まるで芸ができた犬を褒めるかのように俺の頭をクシャクシャと撫でる。

 こいつ、俺を完全に下に見てやがる。気に入らない。


「お前の力。しかと拝見させてもらった。総合的に見れば儂と同等以上の実力と見受けられた」


「そりゃあ、どうも」


「だが、お前はスキルに頼りすぎだ。あれではトドメをさせなかった場合のケアができないだろ?」


「今回は……スキルの研究の為だ」


「だが、死んだら元も子もない」


 俺は何も言い返せなかった。

 確かに今回は研究の為に敢えてスキルに依存して戦った。かなり無茶苦茶な戦いだったのは理解している。


「スキルに頼るのは自信のなさの表れか?」


「何を!」


 ノブトモの言葉に異を唱えようとする。しかし、心の中で的を得ているとわかっていた。

 ピンチの時、つまり死の直前まで追い込まれてやっと発動する逆境のスキルを当てにし、戦術に組み込むのははっきり言うとおかしい。ましてやスキル使用後に疲労で動けなくなる重いデメリットがあるなら尚更。

 そもそも逆境のスキルを使わなくて勝てる地力があれば問題はない。

 今までどれだけチートの力に頼っていたことか。


「わかってるさ! だから俺は強くなるために!」


「弱さを認めるか。いいだろ。気に入った。貴様に稽古をつけてやろう」


「……はぁ!?」


 俺はノブトモの衝撃の一言に啞然とするのであった。

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