子供達との戯れ
シャニマスにハマってしまい、早速毎日投稿の約束を破ってしまいましたね
仕方ないと思います
桑山千雪ちゃんのあの美しさと人妻感に惹かれたら執筆どころじゃないです
カマローの絡みに面倒くささを感じ始めた頃、突然誰かが俺の裾を引っ張る感触を感じ、視線を徐に落とす。
「タロウじゃないか。どうした?」
「どうしたじゃないよ」
足元には坊主頭が特徴の少年、タロウが不満そうに俺を見上げていた。
タロウの後ろには三人の少年達が一列に並んでおり、タロウと同じ表情をしていた。
「お仕事終わったら鬼ごっこやろうって約束したじゃん」
ショートヘアのカンタの言葉で昨日交わした約束を思い出した。
背負い物がなくなったことで気まで抜けてしまっているのだろう。最近は物忘れが酷い。
「あ……そうだったなぁ」
「もう、トーカ兄ちゃん。しっかりしてよ」
双子のユウヤとユウトにうっかりを注意され、俺は申し訳ないと遜る。
「ちょっと待ってよ。その前に肩車してよ!」
これから鬼ごっこをしようとしたその時だ。タロウの横からツインテールが可愛らしいサラが俺の脚に抱き着く。
「なんでだよ。俺たちは昨日から約束してたんだぞ!」
「私は三日前に約束したもん!」
サラは頬を膨らませて反論する。
子供であるが故に互いの主張と順番を譲らず、喧嘩一歩手前まで事態は悪化する。
そもそも、俺が不甲斐ないせいで起きたことだが。しっかりしなくてはと頬を叩く。
「俺が悪いから喧嘩するなって。先ずはサラからな」
責任は取らなくてはならない。俺は子供達の間に入って、仲裁する。
自分の主張が始めに通ったサラはやったと跳ねて喜ぶ。
畑仕事を終え、体には乳酸が溜まっている。正直、ゆっくりと体を休めたい。子供達もいい子ばかりだから、一言「今日は疲れた」と残せば我儘を言わないで素直に聞いてくれるだろう。
でも、子供とは我儘であるべきだ。甘やかさない為や余程の難しい我儘を言われた時以外で子供に我慢を強いる大人に俺はなりたくない。
それにたかが疲れたくらいで弱音を上げる程俺は衰えてはいない。子供達の落胆する表情も見たくなくて俺は自分の体に鞭を打つ。
「そらよっと」
俺はサラを両手で抱えて、持ち上げる。そして肩車をするとサラはキャッキャッと満足そうに笑う。
きっといつも見ている世界が違うことにワクワクしているのだろう。
子供達に限らず、人は未知の世界に触れるというのは好奇心が刺激される。俺も救世主として世界を巡った時のワクワク感は堪らなかった。
マグマが常に沸き立つ大地。
雷が降る町。
草木が人間のように歌う森。
また巡れるなら、もっと色んな世界を巡りたい。今度は救世主ではなく、冒険者として。使命とかそういう重い荷物を捨てて見る世界はきっと違う。
そういう余生も悪くないかもしれない。
「トーカ兄の見る世界ってこんな感じなんだね」
「いずれ、サラも同じ世界を見れるようになるさ」
「サラだけずるいなぁ」
サラと仲睦まじく話している間にも早く遊びたいタロウ達はずっと不満そうに俺を凝視している。
「そうだな。サラ、ごめんな。今からカンタ達と鬼ごっこするから下りてもらってもいいか」
「うん!」
いつもと違う世界を十分堪能し、満足したサラは文句一つ垂れず、下りてくれる。
「ありがとう。いい子だ。お礼に飴ちゃん一個な」
素直なことをしてくれた子供にはそれなりのご褒美を渡すのが俺の流儀だ。
ポケットからルビィのように綺麗に輝く飴玉をサラの小さな掌に置く。
するとは飴玉に負けないくらい目を輝かせて喜んでくれる。
無垢な笑顔を見て、心がほんのり温かくなる。笑顔と言うのは見ているこちらも幸せな気持ちになる。
サラのシルクみたいな爽やか心地の頭をなでてから、今度はタロウ達の元に駆け寄る。
「お前ら待たせたな」
「本当だよ。今日こそは絶対に逃げ切ってやるからな!」
「ということはまた俺が鬼か。いいぜ。いつも通り、十五分の間で一人でも逃げ切れたら王国から取り寄せてる最高級のケーキを食わせてやる。だから、全力で逃げろよ」
この四人と鬼ごっこする時は決まって、ケーキを賭けている。そもそも、十歳近く離れている子供達と手を抜かず、本気で遊ぶとなればこれくらいのリスクを背負うのは当然だ。
そうした方が子供達も俄然やる気も出るし、俺も緊張感が全く違う。
「わかった! みんな! 絶対にトーカ兄ちゃんに捕まるなよ!」
お菓子という目標を前に子供達は目の色を変えて、早速俺から早々と逃げ始める。
本気になった子供達は中々捕まえにくい。足の速さなら比べるまでもなく俺が上だ。しかし、子供特有の小回りに聞く回避と仕事終わりに疲労を相手にするとなると些か気が抜けない。
賭けの対象であるケーキも高級品とだけあって、日本円に換算して、一枚五百円。こちらの世界では銀貨一枚で買えるものだ。(この世界は日給が平均銅貨三枚程度。銀貨一枚は銅貨一枚の十倍の価値がある)
俺は世界を巡っていた時に仲良くなった菓子職人から割り引いてもらっているがそれでも銅貨八枚だ。そのケーキを四人に食べさせるとしたら……。いくら貯蓄があるとは言え恐ろしすぎる。
「絶対に負けられないな!」
俺は疲労で凝り固まる体に鞭打って、子供達を全員捕まえるべく、全力疾走する。