駆除
ストック、ないわ
「よし、修行を始めるか」
己の未熟さと弱さを見直した俺は再び強くなることを決意し、一晩明けた。
俺は早速ギルドに行き、修行の資金集めの為にクエストを受けることにした。
そして、今はキラービーが発生している場所に続く道を歩いている。
クエスト内容は作物を荒すキラービーという虫の駆除。キラービーは約一メートル程の大きさの蜂。
一体だけではそこまで危険度は低い。大型の蜂ということで一応空を飛ぶが図体が重い為、移動速度はそこまで速くない。槍のように毒針を持ち、受ければだだでは済まないが動きの遅さのおかげ回避は余裕。毒は麻痺性が高い代わりに直接死に至ることはない。
キラービーの恐ろしさは常に群れとなって行動していること。一体では大したことないが、同時に相手にするとなるとかなり厄介だ。加えて、毒を受ければ一瞬で体が麻痺し、動けなくなる。その隙に強力な顎で食い殺されるのがよく起きる死因だ。
「一人で……やれるか?」
集団戦がメインとなるため基本的にこちらも複数人で挑むのがセオリー。しかし、俺は一人で挑む。
理由は二つある。一つは圧倒的物量からレイカ達を守りながら戦うのが厳しい。正直、レイカなら問題はないがまだメアリーでは戦力に数えられない。
もう一つは俺の能力について研究するためだ。「逆境」のスキルは正直未知の部分が多い。
特に発動するトリガーが曖昧だ。追い込まれた状況や満身創痍の時に発動するのはわかっているが一体基準は何か? どこまで追い込まれれば発揮するのか?
あえて難易度の高いクエストに一人で挑むことでピンチの状況を作り出し、スキルを発動させるつもりだ。
「さて、一狩り行くか」
「ほう。キラービーに一人で挑むとは無謀だな」
キラービーがいる場所に向かおうとしたその時、背後から声を掛けられる。
異様な覇気のある声。ゆっくり、振り返るとそこには黒い馬に跨ったノブトモが俺を見下ろしていた。
鉄の南蛮鎧を身に纏い、後ろには武装した五人の足軽達がいた。
「おい、あのクエストは俺が受注したんだが」
「あぁ知っている。何、手柄を横取りするつもりではない。ただ、貴様の実力をこの目で確かめたくてな」
そう言ってノブトモは不敵な笑みを浮かべる。




