卑怯者
お久しぶりです
原宿と渋谷は都会に憧れる田舎もん達が集まる場所だと思うシママシタでし
都会人は新宿とか池袋、下北沢に行くと思っているシママシタ
「俺は……何をやってるんだ」
黒い空に光る無数の星達が無様な俺を見下している気がする。
俺は街の外れにある小さな丘で、一人で頭を抱えていた。
メアリーの魔法の素質はかなり高かった。この世界で一番とは言えないが少なくとも俺やトーカ以上と見込んでいる。
だから期待した。魔法を使えるようになればこちらとしてもかなりに戦力になるし、何よりメアリーの自信に繋がると思っていた。
だが、俺の判断は間違っていた。メアリーの魔力は異常な程高い上にメアリーの体が魔力に慣れていなかった。
今まで引きこもりや寝たきりだった人が急に全速力で走れば呼吸器や筋肉を傷めると同じだ。
そんなこと、考えればすぐにわかることだったはずだ。
「トーカさん」
「メアリー!? 体は大丈夫なのか」
背後からメアリーが現れる。
メアリーは「はい」と言っているが、表情もどこか強張っているし、呼吸も荒い。
「無理しなくていい」
「でも、私が倒れて、トーカさんが凄く落ち込んでいるって聞いたから」
「励ましに来たのか? それとも自分が悪いって言いたいのか。残念だけど今の俺にその言葉はいらない」
メアリーは優しいからきっと自分の力をコントロールできなかったのが悪いと思い込んでいる。
違う。その力を使ってみようかと提案したのは俺だ。
俺ならメアリーの力を引き出せると慢心していた。それがメアリーを危険に晒すはめになった。
「俺は何でもできると思い込んでいた。敵を倒すことも、メアリーの力を引き出すことも。いや、昔ならできていた。でも、力を失った今の俺には……」
できないことだ。
少しくらい失敗しても神様がくれた力で解決し、なかったことにしてきた。それこそ魔力を暴走しても俺が少し念じれば抑えられたし、傷を負うことになっても瞬時に癒す。まるでなかったことのようにするあの力はまさにチートみたいだった。
でも、今は持っていない。ピンチになればその力の片鱗を発揮できるだけ。
なのに俺は与えられた力を自分の力と勘違いしていた。そして、力がなくても俺には培ってきた経験があるからまだ強いと思い込んでいた。
「実はな……俺って卑怯者なんだ。何も努力もしないでどんな敵を倒せる力を手に入れた。俺はその力を自分の力だとそれはもう慢心していたんだ」
「私とは……正反対ですね」
既に生まれ持った力を持つメアリーと与えられた俺はまさに真逆の立場。それにも俺は気づいていなかった。
きっと自分の力なんだから簡単に使える。俺もそうだったんだからと勝手に考えを押し付けていた。
つくづく俺は愚かだ。
「俺は全然だめだ。まだ……弱い」
自己嫌悪に陥る。もっとしっかりしていれば。本当の強さを持っていれば……。
「私も同じ気持ちです」
メアリーは俺の隣に座り、星を眺める。
「私も上手く魔法が強くなれれば良かったのにと後悔しています」
「いや、俺はメアリーと違って経験が……」
「でも、弱いと思っているのは同じですよね」
メアリーは俺の肩に手を置くと、ぐっと身を乗り出し、俺の顔を覗き込む。
目の前の幼さの残る可愛らしい顔立ちと女性特有の甘い匂いが俺の鼓動を高ぶらせる。
「なら、一緒に強くなりましょう。私は皆さんの力になりたいですから」
そして、あどけない笑みを浮かべる。笑う顔は特に子供っぽく見えるけど、隙間から大人顔を負けの覚悟と凛々しさが顔を覗かせていた。
また、俺は一つ勘違いしていた。
メアリーはか弱い少女ではなかった。
「そうだな。俺も……また強くなるか」
憑き物が落ちて心がすっきりする。
俺はもう特別な人間ではない。
たった一度を世界を救っただけの経験を持つ普通の人間だ。




