探り合い、腹
今から使えるマメ知識
機動戦士ガンダムF91に登場する巨大モビルアーマーラフレシア。
このラフレシアの最後がよく限界稼働したF91のフェイスオープンしたマスクから謎ビームが出て、撃墜されたと思われている。
しかし、よく見るとF91の背後にラフレシアのビーム砲がある。そのビーム砲がF91の質量を持った残像を誤認識し、ビーム発射。残像な為、F91に当たらず、ラフレシアのコックピットに直撃して撃墜したという結構ダサい散り様だったりする。
ギルド内の空気が一変する。
今まで乱闘寸前の騒ぎでも日常茶飯事と言わんばかりに平然としていた冒険者達と傭兵達だが、金銭の話を口にした途端、一斉に俺に注目する。
「ほう、面白いことを言う」
「だ……だろ?」
注目を浴び、己の軽率さを思い知る。
そうだ。ここにいるのは金に貪欲なハイエナ共だ。
少しでも金が入るとなれば、食いつく……いや貪るに決まっている。
「それなら、俺達も加わってやろう!」
「グヘヘ。金……寄越せ!」
「まぁ、待て」
俺に一気に群がろうとする傭兵達をノブトモが静止する。
「彼はまだ若い。先を見誤ることだってある。そして、貴様ら! 若者に群がるなどと大人としての威厳はないのか!?」
ノブトモは俺の言葉が出任せなことに気づいていた。
恐らく、すぐに言葉を撤回すると予想しているのだろう。その上で傭兵達を静止していた。
現にノブトモは小馬鹿にしたような表情で俺を見ていた。
癪に触るな。子供と見下され、小馬鹿にされていい気分になる訳がない。
「いや、俺は嘘を付くつもりはない」
利益よりもプライドが勝り、ノブトモ共にはっきり言い切る。我ながら男なんだと痛感する。
すると、ノブトモはほくそ笑む。
「ほう。なら、何故、この作戦に参加する?」
「ある奴と契約してんだ。義理を自分勝手な道理で破るのは人としてどうかとね」
「そう。つまりは逃げれぬというわけだな」
「それもあるけれど、魔物を倒して、人々を助けるのが俺の役目でもあるから」
そう言うとギルド内は一斉に爆笑の嵐が巻き起こる。
「ガッハッハッ! 若えなぁ! 小僧!」
「何だ!? かの有名な英雄にでも憧れているのかぁ!?」
「名前は……センダガヤシェーカーだっけな?」
惜しげもなく、途方にもない夢を話した俺を傭兵達は指差し、馬鹿にし、腹を抱えて笑う。
笑う理由は理解できない訳がない。いつまでも現実から目を背け、夢だけを追う人間が愚かに見える時だってある。
でも、俺が思うな夢を追う子供を馬鹿にするような大人の方が余程愚かに見える。
まぁ、俺も子供と言えるほどの年齢ではないから仕方ない。別に俺が笑われる分には耐えればいいこと。
それよりも気になるのが名前が全く違うということだ。
そんなことを思っていると突然、鉄の音と共に一筋の光が俺に向かってくる。
咄嗟に背負った剣を掴み、その光を刃で止める。
鉄と鉄とかぶつかる無機質な音が耳障りな笑いに包まれたギルド内に響く。
「突然、どうして? そんなに俺のことが気に食わねぇか? ノブトモ!」
剣で受け止めたのはノブトモの方な。
一糸触発の流れにギルド内はまるで廃墟のように不気味な静寂に落ち着いていた。
「よく受け止めたな。完全に不意を付いたつもりだがな」
「そりゃあ、このくらいは対処できなきゃ、人々なんて守るなんて夢物語を語るわけがないだろ?」
「そうか」
すると、ノブトモは刀を納める。
そして、「無礼」と深々と頭を下げる。
「お主の強さ。勝手ながら刃で測らせた頂いた」
ただその一言でギルド内の空気は一変する。
傭兵達の殆どが表情を引つらせ、青褪めていた。
ノブトモの斬撃は異常とも言えるほど早かった。傭兵達はあまりの不意の一撃に、もし自分が受ける立場だったら、間違いなく受けきれていないと思っているのだろう。同時に馬鹿にした俺がそれを受け止めたことに軽く恐怖しているだろう。馬鹿にした腹いせに殺しに来るのではと。
正直なことを俺も恐怖で小便漏らしそうなのだ。斬撃を止めたのだって本当にギリギリだ。何より、斬撃を受け止めて気づいた。ノブトモは手加減していた。もし、本気で殺しにかかっていたら、今頃、俺の頭は床を転がっていたところだ。
ほんの数秒間の僅かな鍔迫り合い。
その中でも己の強さと相手の強さを周囲に知らしめ、全てのものを活用できるノブトモは只者ではない。
絶対に敵に回したくない奴だ。
「お主。名は?」
「千代田トーカ」
「そうか。ならばトーカ。儂と手を組もうぞ」
「それはいいけど、ただではないだろ?」
「あぁ。金貨十枚で済ませてやる」
「高いな……」
「何。金額に見合った働きは必ずする」
ノブトモは己の強さを把握している。
傭兵としてのスキルもかなり高い。
仲間に引き込めれば、十中八九高い戦力になるだろうか、やはり金貨十枚はかなり厳しい。
しかし、ここでノブトモを拒否するメリットは殆どない。それどころか、拒否した場合はゴートル討伐後に争う可能性。タイマンでならまだしもノブトモが他の傭兵どもを金、もしくは暴力で従わせた場合、流石に俺でも勝てるビジョンが見えない。
圧倒的強さはもはや権力だ。既にノブトモに畏怖している他の傭兵達を見れば明白だ。その事も踏まえて、ノブトモは刀を抜いたのだ。
「分かった。それで手打ちにしよう」
「物分りのいい」
すると、ノブトモは手を差し出し、握手を求める。
俺は汗で濡れている手をズボンで拭いてからノブトモと握手を交わすのであった。




