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騒ぎの後

どうも

内定が決まって浮かれ気分の島下遊姫です

「また寝ていたのか」


 茶色の天井にぶら下がり、円を描くように揺れるランプを茫然と眺めながら俺はポツリと呟く。

 あれから何時間ほど眠っていたのだろうか。少なくとも窓の外は既に月明かりに照らされていることを考慮すると半日近くは眠っていたのだろうか。


「腹が……減った」


 ぐうと腹の虫が鳴く。

 戦闘後、何も口にしていないのだから空腹に襲われるに決まっている。

 ふと枕元のテーブルに目をやる。


「寝起きにこれは重すぎる……」


 テーブルの上には骨付きのグリルされた鶏肉や冷たいジャガイモのスープ。パンやレタスとトマトのサラダが置かれていた。

 パンやサラダは兎も角、グリルチキンは寝起きに食べる物かと首を傾げる。

 しかし、食欲は人間の持つ三大欲求の一つ。美味しそうな料理を前に自然と涎が口から垂れてくる。


「頂きます!」


 俺はまるで野蛮な獣のように料理を貪り食う。

 パンはふっくらとしている。 

 サラダはレタスが水々しく、さらにトマトの酸味が口の中に広がる。

 スープはジャガイモの味が濃く美味い。

 チキンは下味がちゃんと染み付いていて食いごたえがある。


「うめぇ……」


 美味い料理に舌鼓を打つ。

 スープの入った皿を手に持つと、テーブルから一枚の紙がひらりと床に落ちる。

 

「これは書置きか」


 俺はそっと紙を拾い上げる。

 そこには「良かったら召し上がってください メアリー」と達筆な字で書かれていた。


「メアリーが用意してくれたのか。礼を言わなくちゃな」


 この村まで案内してくれて、戦闘でもメアリーの援護がなければ活路は開けなかった。そして、今も夜食を用意してくれて、出会った時からメアリーには世話になってばかりだ。

 大量に寝て、食って俺の体調はいい。

 横になるのも飽きてきた俺はメアリーに礼を言う為にベッドから立ち上がり、外に出る。


「おいおい。何だこれ」


 ドアを開けた瞬間、目に映った景色に俺は唖然とする。

 地べたにも関わらず、村人達が至る場所で寝息、いびきを立てて雑魚寝をしているのだ。

 周りをぐるりと見回す。家から持ち出したであろうテーブルの上に食べかけの料理が乗せられた皿が置かれていた。

 そして、眠る村人達の手には酒瓶やら食器の類が握られている。


「村が解放されてどんちゃん騒ぎか。……俺も混ぜてほしかった」


 俺達が来なければこの村はオーガに支配され、地獄のような日々を送ることになっていただろう。

 それが回避されたのだから喜びと日常を送れる幸せをお祭り騒ぎになるのも無理はない。

 ただ、自分で言うのもあれだが立役者である自分も混ぜてほしかった。きっと眠りこけていたのと疲労が溜まっているのだろうと気を利かせてくれて、起こさなかったのだろう。

 だから、文句を言うのは失礼か。


「あそこに人がいるな」


 眠りに落ちる村人達を踏まないように細心の注意を払いながらメアリーを探し回っていると、ベンチをテーブル変わりに酒瓶を片手に騒いでいる中年男性三人組を見つけた。

 もしかしたらメアリーの居場所を知っているのではと思って声をかける。


「すみません……メアリーを知らないですか?」


「あぁ?……さっちに行ったような」


 顔を真っ赤にした坊主の男性はゆらゆらと揺れる人差し指を深い闇に包まれる森に指す。


「そうですか」


 キツイアルコール臭が漂い、自然と鼻をつまみ、眉間に皺を寄せる。

 よく見ると他の二人も顔が真っ赤に染まっていて、体も左右にべろんべろんに酔っていた。

 そして三人の周囲には何十本もの空の酒瓶が辺りに転がっていた。


「ありがとうございます」


「でもあいつに何の用なんだ?」


「あの人をここまで導いたとか嫁から聞いたけど」


「へぇ。そりゃあ、珍しい」


 俺は頭を下げて、歩き始める。

 酔った男達の言葉を右から左に流し、暗闇が広がる森の中に入っていく。

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