森を抜けて
どうも
タピオカがどんなものなのか気になるけど紅茶が飲めない島下遊姫
メアリーを助けてから俺達は魔物に占拠されたという村に案内してもらっている。
その道中は木々が生い茂る暗い森を抜けなくてはならない。
「深い森だな。一人で歩いたら迷いそう……」
「メアリーちゃんはよくこの森を抜けられたね」
「生まれてからずっといますから。村のみんなにとってはお庭みたいな場所です」
並存とした顔でとんでもないこと言うメアリーに俺達は目を丸くする。
庭と形容するのならそれなりの目印があるのだろうかと周りを見回す。が、これと言った目立つもの……変わった色の木や花が咲いているわけでもなかった。
手前から奥まで似たようなというか全く同じにしか見えない巨大な木がずらりと並ぶ代わり映えしない景色が続く。葉は少しでも日の光を浴びようと地上には日があまり刺さず、太陽の位置も確認できない。
「……庭なのか……」
個人的には庭というより迷路という認識しか浮かばない。
「出口が見えました」
そんな無駄なことを考えているとメアリーは光差す出口に指を差す。
「あの村です」
「凄く綺麗!」
あっさりと森を抜けるとそこは絶景が広がる。絶景を目の当たりにしたレイカは思わず感嘆の声を上げる。
辺り一面に広がる色彩豊かな花畑。花は丘の上まで広がっている。
そして、花畑の中心にはアドソン村と同じくらいの大きさの村があった。
「この花を眺めたいのは山々だけど……ちょっと待ってな」
この絶景をもう少し眺めていたい。しかし、その前に当然、村の人達を救うことが優先だ。
俺は右目に白い魔法陣を描く。
「サーチ魔法、発動」
サーチ魔法「遠視」を使い、約300メートル先にある村の様子を覗う。
入口に見張りのオーガが二体。その背後には循環するオーガがさらに四体確認できた。
オーガは元々、そこまで知能が高くない種族でさらに攻撃的。だから見張りなんていう回りくどいことは滅多にせず、何にも考えず人や荷馬車を襲っては金品、食料を略奪するのだが今回は違う。
「警備はかなり厳重だな」
「正面突破は……流石に無理よね。でも、ある程度ダメージを負えばトーカはスキルを使えるから」
「それはリスクが大きすぎるし、そもそも余計なダメージは受けたくない」
最悪、レイカの言うとおり正面突破をかけることも考えているが、俺達の余計なダメージを負いかねる上に、村の人達にも人質に取られたりする可能性もあることからあまり取りたくはない。
それに逆境スキルはあくまで奥の手として使いたい。いくら無敵に近い力であろうと使用時間も限られ、その時間内に仕留められなければ一環の終わりだ。
手元に用意された駒を最大限使用して相手の盤石な盤面を崩す。まるで詰将棋。ただ、王の駒が見えないのがルールとして破綻しているが。
「私に……任せてもらってもいいですか?」
「メアリーちゃん!?」
俺とレイカはメアリーの突然の提案に驚いた。




