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闘う者としての責任

段々と気温が上がってきて食欲がなかなか湧かず、ただでさえBMI18なのにこれ以上痩せたら冗談抜きで死ぬのではと一抹の不安を抱える島下遊姫です

 オーガを倒した後、俺は剣を背中に背負う。

 そして、オーガに追われていた怯える少女の傍に駆け寄る。

 少女と言っても俺の一つか二つ下の年齢の見える。


「君、大丈夫かい?」


「はい……おかげ様で……」


 少女はか細い声で答える。そして、心配をかけたくないのだろうか。すぐさま立ち上がろうとするも小さく「痛っ」と声が漏れ、青い瞳が涙で潤む。

 俺は少女の体の状態を確認ずる。

 茶色に髪で覆われた頭部には目立った外傷はなかったが、その雪のような白い肌にはほんの少しの擦り傷。膝には土と血が少し滲んでいる程度で大きな外傷は見受けられなかった。


「ちょっと怪我をしてるね。治癒魔法、キュア」


 背後からレイカが駆け寄ってくる。

 少女の傷を確認したレイカは早速傷の上に緑の魔法陣を描く。すると、魔法陣から光の粉が降り注ぎ、傷がゆっくりと塞いでいく。


「これで大丈夫なはず」


「あ、ありがとうございます……」


 傷が癒えたことで恐怖で引きつっていた少女の表情が少し柔らぐ。


「……そういえばあなた方は?」


「紹介が遅れたね。俺は千代田トーカ。ただの冒険者さ」


「私はレイカ。よろしく」


「私は……メアリーです」


 俺達、そして少女のメアリーは簡単に自己紹介する。


「ねぇ、メアリーは何で魔物に追われていたの?」


 早速レイカはオーガみ襲われるような状況に至ったのかを尋ねた。

 するとメアリーは俺達をじっと見ながら、少し考えこむ。多分、俺達に話していい話かどうか考えているのだろうか。

 そして、間もなく口を開く。


「……助けを呼ぼうと村から出ようとしたら見つかって……」


「助け?」


「魔物が……村を襲ってきて……」


「私達と……同じだ」


「え?」


「私達の村も魔物に襲われたの。でも、トーカのおかげで撃退できたけど」


 レイカの話を聞いたメアリーは俺にまるで夜空に瞬く星のような眼差しを向ける。

 前の旅では何度も向けられた眼差しだが、いまだに慣れない。


 もし、期待に応えられなかった時に浮かべる失望の眼差しを浴びるのが怖いのだ。罵倒や物を投げつけられ、体だけでなく心に重大な傷を負うことになる。


 しかし、それは俺がチートの力を持っているが故に背負わなければならなかった責任の一つだ。逃げることはできない。


 今はチート力はないが魔物と対等に戦える力を持っている。力のない人に見れば多少力が落ちようが希望であることに変わりない


「俺だけの手柄じゃないが……。早速、俺達に出会えたのとても運がいい。俺達が君の村を救ってやる」


「ほ、本当ですか!」


「あぁ。その為に俺はこの世界にいるからな」


 当然、俺はメアリー村を魔物から解放することを決意する。

 メアリーはどんよりとした不安げな表情からパッと晴れ渡る空のような清々しい表情に変わる。


 俺はこの世界を守るために神様から遣わされた転生者だ。俺の耳に魔物の被害に苦しむ人の嘆き、悲鳴を入ったのなら絶対に救わねばならない。

 

 それが俺の使命なのだから。


「ありがとうございます! でも……お礼とか用意できるかはちょっとろ……」


「そんなのは後でいい。だからまず、村に案内してくれるかな一刻も早く君の村を救いたいからな」


 真っ先に見返りを求めないということにメアリーは唖然としていた。

 それもそうだろう。危険かつ重要なことを任されるにはそれ相応の報酬、対価を求めるのが当然だ。


 別に完全な善意やボランティアが褒められたことではないことはわかっている。時には食料や寝床を求めたことも前の旅ではあった。


 でも、報酬や対価に目が眩んで自分勝手に力を利用した挙句に救うべき相手を苦しめたら元も子もない。

 特に他者を殺められる力を持つ俺が力に溺れてしまったら救世主という立場から一転して人間を脅かす悪魔に堕ちる。


 だから自分を律する為にまず自己の利益よりも目先の苦しんでいる人を優先しているだけだ。

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