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戦いを終えて

どうも。本日、企業説明会があると思って意気揚々とスーツを着込んだ後に実は来週だったと意気消沈した島下遊姫です


だれか俺を……笑ってくれよ

「こ…こは……」


 深い海の底からゆっくりと浮いていくように意識が覚醒する。朧気な意識の中、起き上がって辺りを見回して、今の状況を確認する。


 俺は柔らかいベッドに上にいる。周りは床と壁、天井は木でできており、ここが木造の家というのはすぐにわかったし、自分の家でもないことも理解できた。


 家具もクローゼットと机と椅子のみで必要最低限の物しかなかった。


 そして、一番目を引くのが今にも泣きそうな瞳で俺を見つめるレイカであった。

 

「トーカ!」


 俺の目覚めに気づくやレイカは咄嗟に抱き着いてくる。


 耳元からレイカの涙ぐむ音が聞こえる。


「良かった……目覚めて……本当に……」


「心配かけて……ごめん」


 ゆっくりと腕をレイカに腰に回し、抱きつき返す。


 男としてどんな理由であろうと女を泣かせるのは褒められたことではない。だから、レイカを泣かしていることに後悔している。


 しかし、一つだけ気になることがある。


「……俺……何してたんだっけ?」


 記憶がないのだ。今この状況に至った経緯がまるでパズルのピースが抜け落ちたかのように思い出せないのだ。


「魔物と戦って勝ったんだよ。その後、倒れちゃって丸二日寝てたから本当に心配で……」


「そう……だっけ……」 


 レイカの説明にどうもはっきりと確信を持てない。頭の中に白い霞がかかっていて思い出そうにも思い出せない。それに二日も眠っていたことに驚きを隠せない。


 ただ確実に覚えていることがある。何か強烈な力を使ったという事実だ。これは脳というより体が覚えていると言った方がわかりやすいか。


「目覚めたか」


「村長……」


 ドアをノックする音が聞こえて僅か数秒後には開けられ、頬に傷のある村長が部屋に入ってきた。


「痛むところはないか」


「頭が少しグラグラする」


「なら、まだ安静にしておけ」


 村長は俺の身を案じてくれる。


 お言葉に甘えて俺は再び横になる。


「寝ながらでいい。あの力は何なのだ」


 すると、村長はその場で問いを投げる。


「あの力はチート能力によく似ている。でも、昔のように好き勝手には使えない」


 俺が唯一覚えていることだ。答えられないことはないが、正直あの力の本質なんてもの殆ど理解していなかった。


「どういうこと?」


「多分、あの力を使うにはいくつかの制約をクリアする必要があるんだと思う」

 

 感覚的にチートの能力を使うこと大して変わらない。だが、今使おうと念じても力が発揮する気配が全くない。


「俺が力を使う直前は傷のせいで体が痛かったし、疲労で体が鉛のように重かった。死ぬ直前だったことは覚えている」


「なら何故、獅子奮迅の活躍をしたのか?」


「多分、死にかけることでチート能力が使えるようになるんじゃないか? 火事場の馬鹿力ってやつみたいに」


 今考えられるありったけの可能性を話す。

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