眠れる獅子の目覚め
昨日は体調が悪くて投稿できませんでした。
就活ということでほぼ毎日炎天下の中、スーツで歩き回っていたことで疲れが溜まっていたのでしょう
仕方のないことなので謝りません
手を突き出し、槍を受け止めようとしたその時だ。世界の時の流れがスローモーションに映る。
まるで槍が羽ばたく蝶のようにゆっくりとこちらに向かってくる。
「これは……!?」
初めての感覚に俺は動揺を隠せない。
だが、攻撃を防ぐチャンスでもある。俺は咄嗟に槍を掴む。その時、世界の流れが元に戻る。
「何!?」
槍を掴まれたケンタウロスは頬を引きつらせる。
「はあっ!」
俺は掴んだ槍にほんの少し力を加える。すると槍は粉々に砕け散って欠片となって地面にパラパラと落ちていく。
「何だ!? 先程までとは段違いのパワー!?」
「何だこれは? 体のあちこちが痛い。疲れて鉛のように重かったのに……今はまるで風船のように軽い! それに力が泉のように湧いてくる!」
土壇場になってとてつもない力を見せつけられたケンタウロスはあ然としている。
だが、ケンタウロスのみならず俺自身も自分の力に驚いていた。
チートの能力を失った俺には大した力はない。魔法も簡単な物しか使えないし、体力も並よりちょっと上くらいだ。
「苔脅しを!」
今まで死に体だった俺の反撃にケンタウロスは歯軋りをしながらこちらを睨む。
しかし、所詮はまぐれだと高を括っているケンタウロスは俺に拳を振り下ろす。
再び俺は拳を受け止めようと右手を出す。
すると、ケンタウロスの拳は何か見えない壁にぶつかり、弾かれる。ケンタウロスは痛みと驚きの混じった悲鳴を挙げる。
「マジックフィールド!?」
俺はこの現象を知っている。
何かを受け止める。何かから攻撃を防ぐ。そして、誰かを守りたいと願った時に手を出すと貼れる防御障壁。
それがマジックフィールド。この世界でも賢者と呼ばれる何十年もの月日を修行に費やせた者にしか使えない最上級魔法。
以前の俺はチートの能力で修行もすることなく使えていた。だが、凡人となった今の俺には使えない筈だ。
「もしかして……!」
脳裏に一つの可能性が過る。
もしその可能性が事実なら今の俺は……。
俺は左人差し指を天に向け、瞑想する。
すると、ケンタウロスのちょうど上空に黄色の魔法陣が現れる。
「落ちろ! サンダーボルト!」
そして、勢い良く人差し指を振り下ろすと同時に魔法陣から大火力の雷がケンタウロス目掛けて落ちる。
ケンタウロスは叫びを上げ、膝を付く。
「わかったぞ! ほんのちょっとだけ理解した!」
どういう理由があってどんなきっかけなのかわからない。
だが、俺は確信した。
「俺は一時的にだがチートの能力を取り戻している!」




