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空からの来訪者_04




笑顔で差し出され手を、迷わず握り返したことに自身で驚くヒューレ。そんな内心に構うことなく、ルティカもぐっと一度握手に力をこめ手を離す。魔剣を渡すことを決めたので注意事項をささっと説明する。



「私のこともルティカって呼んでね。さて、ゆっくり話してあげたいけど……。とりあえず、私が渡した魔剣はヒューレにそのまま預けるわ。魔剣の属性は火よ。真価を発揮すれば、水の中でだって炎を操ることができる銘刀よ。注意点として魔剣の所有者はヒューレ一人、誰かに譲渡とかはできないの」

「わかった」

「あと、差し出がましい事を言うけど、あなたの魔剣手入れしてあげないと使えないわよ?必要であれば預かるけど?」

「手入れ?」

「魔剣の手入れは、その魔剣にあった魔力を満たしてあげること。それが一番大事。それができなくても、受け入れてくれる魔力をあげなきゃいつか魔剣が壊れるわよ。まだ、会ってすぐだし預けるのが心配なら誓約しても構わないし」

「いや、誓約はいい。仕事柄人を見る目はあるつもりだ。ひとつ質問だがこの炎の剣は、手入れがされてるからこそ先ほどのような威力をもったのか?」



ヒューレからの質問に、先程の炎の威力を思い出す。



「んー……それもあるけど、いくつか原因があるかも。さっき魔力豊穣の儀式をやってたの。そのせいで、一帯の魔力が潤ってたのよね。魔剣との相乗効果もあって、思ってたより威力が高まったと思う」

「儀式?」

「儀式って言うと大袈裟なんだけど。私が今日までこの土地にはお世話になったから、感謝を込めて私の魔力を祈りと一緒に土地へと渡すのよ」

「あまり聞かないが、そんなものがあるんだな」

「とある地域の習慣よ。素敵な習わしだから、個人的に真似てるの」

「そうか、その儀式は俺がくる前にやっていたのか?」

「そうよ?あぁ、もしかして変わったことって私の儀式かしらね?」

「可能性はある。どれ程のものかわからないが俺が察知したものかもしれない」

「それは、後でここら周辺をみてみましょう。魔剣に話を戻すけど、手入れする?しない?」

「では頼む」



ヒューレは腰の魔剣をとり、ルティカへと渡す。受けとるその顔はいい笑顔で一言。そして、反対にヒューレへと一枚の札を差し出す。



「まいど~!じゃあ、はい。私との連絡用に伝達符をどうぞ」

「また高価のものをもってるんだな」

「魔剣を扱うお客さんには必要かと。私は放浪ぐせがあるんで、磨ぎ直しが必要な時に連絡つかないと困るでしょ。私お手製の伝達符で、距離や場所問わず連絡できるから、連絡きたらお返事するか赴むくから。一度私の魔力をいれれば5回くらい使えるわ。これもヒューレ以外は使えないからね」



"符"とは、魔鉱石を砕き粒子状にしたものを特製の用紙に染み込ませ札。魔具の一種で、注ぐ魔力の質や種類で様々な効果を発揮する。一般的なものでは、発火符などがあり冒険者に重宝され需要も多い。火の魔素を扱えるものなら簡単にできることから流通もあり比較的安価なもの。光の魔素を使うものなど、稀少な属性を組み合わせた符は、高価なものになり主に貴族が使う。


ルティカの作った伝達符は手のひらに収まる大きさで、普通の用紙を硬化し簡単に破れたりはしない。そして、複雑な魔素使いでできたそれは簡単に出回るものでもないだろう。ヒューレは受け取った符をみつめ疑問をぶつける。



「ルティカ。先程からの疑問なんだが……本当に鍛冶師か?鍛冶師を見下してるとかではないが、君の魔力操作や威力の実力は国家魔導師に届くほどだ」

「王国勤務のヒューレに言われると光栄ね!」

「……」

「ふふ、もともとは魔法主体で訓練してたんだけど、使う武器が毎回全部壊れちゃって。いつの頃か私の魔力に耐えれる、自分に合う武器を探し始めたの。でも親方の鍛冶の姿に魅せられて、そのまま弟子入りして今に至る、と」



ヒューレは模擬戦だがルティカと一戦交え、鍛冶師とは思えない動きに驚いた。自分の知る初等騎士や魔導師よりも、感覚が鋭く魔力操作に淀みもない。魔導隊にくれば間違いなく一般兵より飛び出た力を持つだろう。そんな彼女が山奥で鍛冶をしている事にどことなく違和感を抱く。深く考えようとした所を遮るようにルティカがパンと手のひらで音を立てる。



「私のことよりも!時間あんまりないでしょ?さっきの調査をするなり、他の用事終わらせちゃいなさい」

「私用は魔剣のことだけだ。新しい魔剣の情報と、できれば今の魔剣を直せる鍛冶屋をさがしていた」

「なら、目的達成ってことね。預かった魔剣は明日か、急ぎでも今日の夜になるわ。まだ、こっちにいれるのかしら?」



ヒューレの今後の動向を知るために、ルティカは連絡手段やこれからの事をあらかた確認していた。頭の隅には店内に残してきた二人が心配でもあり、ボロが出ないように気を付けてやり取りしていた中、両耳につけていたイヤリングの片側から頭に直接響く声が聞こえてくる。



《ルカ姉~!この子起きたよ!どうすればいい!?》


「!」

「できるだけ早く発ちたい。今夜までできるなら、それで頼んでいいだろうか?ルティカ?」

「ん、ごめんなさい。夜までなら、ちょっと気力がいるなぁって。でも私も明日には出ないといけないから、仕上げとくわ。夜まで店にいるか、一度村にもどる?」

「周辺を見たら一度村に挨拶をしに戻る。だが、用がすめばまた店で待たせてもらいたい」

「わかったわ。では、さっそく私はとりかかるから、もし調査でわからないことがあったら、弟子のチエロに言付けて頂戴」

「了解した」



ルティカは魔剣を手にしたまま店へと戻る。中に入る前に、美しい黒馬へと歩みより手のひらを黒馬の口元へと寄せる。ルティカが一言何かをいうと、魔力を含ませた水が手のひらから湧き出る。水は地面に滴れ落ちることなくルティカの手の中で循環している。黒馬は鼻を近づけ数回臭いをかぎ、口をつけごくごくと飲み始める。


「これからまた走るのよね、約束のお水は美味しいかしら」

「シュヴァルツが手から水を飲むなんてな」


ルティカからの声かけに、黒馬ことシュヴァルツは応えるように鼻息をかける。後からきたヒューレは、愛馬がルティカから水を貰う様子に関心する。


「ふふ、こちらこそありがと。それでは後程」

「ああ、出る前に一度声をかける」


短いやり取りを終えルティカは店内へと消えていき、ヒューレは周辺での調査を始めた。




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