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剣と魔法とナノマシン~最強SFチート娘のファンタジー漫遊譚~  作者: ベニサンゴ
第八章

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第327話「古い通路ね」

 路地裏に引き込まれたヨッタを追って、ララ達が動き出す。イールが咄嗟にナイフを引き抜き、ララもナノマシンを励起させる。ロミもまた二人を止めることなく、杖を構えて魔力を放ち始めた。


「待て、俺だ! リグレスだ!」


 影から本気の恐怖を孕んだ声がする。聞き覚えのあるそれに疑問を覚え、ララ達が一瞬動きを止めた。その隙に顔を表したのは、赤銅騎士団のリグレスだった。


「危ないな。腕を切り落とすところだったぞ」

「勘弁してくれよ……」


 その正体を認めてナイフを鞘に戻すイール。彼女の言葉に嘘や誇張がないことを感じて、リグレスはげっそりとする。彼は不機嫌そうにしているヨッタの腕を離し、突然路地裏へ連れ込んだことを謝罪する。


「すまん。状況が状況でな」

「それって、あそこの人だかりと関係ある?」


 ヨッタが指し示したのは、廃城の尖塔の足元。そこに集まった荒くれ者といった風貌の男達が、今も盛んに何か叫んでいる。

 リグレスは頷き、大きなため息をつく。


「暴動だよ。なんでも、水路が枯れたとか言ってな」

「なるほどね」


 その一言だけでヨッタたちも何が起こったのか理解する。やはり浄水機は壊れていなかったのだ。ディスロの地下に張り巡らされた地下水路に何か異変が起こり、町中に水が行き渡らなくなった。それで住人たちが水路を管理している赤銅騎士団を責め立てている。


「ちょうどあたしらもその件で来たんだよ」

「客が五人も揃って浄水機が壊れたって言ってね。これはおかしいってことで」

「なるほどな。申し訳ないが、表から通すわけにはいかないんだ」


 今も加熱している民衆の声を聞きながら、リグレスは肩をすくめた。ララ達だけを通して、彼らには待ってもらうというようなことができるはずもない。


「リグレス。私たちに地下水路を見せてくれない? 何か力になれるかもしれないわ」


 ララは前もって準備していた要求を伝えた。“太陽の欠片”が彼女の宇宙船のパーツであるならば、修理できるのは彼女だけだ。この暴動を抑えられるのも、彼女しかいない。


「アタシからも頼むよ。今この町で一番魔導具に詳しいのは、アタシだろ」


 ララの懇願にヨッタも加勢する。

 水路には侵入者を阻む罠も含めて多種多様な魔導具が備えられていると言われている。それらに対する知識を有しているのは、ヨッタ以外にいない。

 ララとヨッタ。二人から詰め寄られて、リグレスは困り果てる。


「待ってくれ。俺一人で決められるようなもんじゃない」


 彼はあくまで赤銅騎士団のいち構成員。階級もそこまで高いわけではなかった。地下水路という、騎士団が何代にもわたって守り続けてきた秘宝を扱うほどの権限はない。

 しかし、彼は失望したようなララ達の表情に、慌てて次の言葉をかけた。


「ただ、上に掛け合うことはできる」

「そうなの?」


 きょとんとするララに、リグレスは頷く。そっと路地の外を見て、周囲に人の気配がないのを確認すると、声を潜めて語り出した。


「城に続く秘密の通路がいくつかある。そこを通れば、密かに入場することができる。そうしたら、騎士団長に会ってみてくれ」

「騎士団長?」

「ああ、マレスタさんだ」


 その名前を聞いて、ララも思い出した。彼女達が街に入った時にリグレスたちから聞いた、赤銅騎士団のトップである。多忙な人と聞いていたが、リグレスが面会を取り付けてくれるようだった。


「それじゃあ、早速行きましょう」


 騎士団長に会えるのならば、まだ希望は潰えていない。ララは再び活力を取り戻し、リグレスを急かす。


「慎重にな。秘密の通路の存在を明かすだけでも、俺は規則を破ってるんだ」

「ありがとう。……どうしてそこまでしてくれるの?」


 路地裏の細い道を進むリグレスにララは問う。彼とはまだ会って一日も経っていないほどの浅い仲だ。彼がわざわざ身の危険を冒してまで助けてくれる理由が分からなかった。

 リグレスは路地の途中で立ち止まり、おもむろに建物の壁を手で押す。砂で隠れていた扉がゆっくりと開き、奥に暗い階段が見えた。地中へと下がっていくそれに足を踏み出しつつ、リグレスは振り返る。


「ララ達は〈錆びた歯車〉の連中よりは信頼がおける。それだけさ」


 彼はそう言って、階段を下り始める。

 ララ達は顔を見合わせ、急いで彼の背中を追った。


「古い通路ね」


 秘密の通路は埃とカビの匂いの立ち込める狭いものだった。すれ違うこともできず、ララ達は一列になって進む。光源もない暗闇だが、一本道なので迷うこともないだろう。


「実際古い。地下水路と一緒に作られたって話もあるくらいだ」


 しばらく下りが続いたのち、長い水平の道となり、今度は急な上り階段が現れる。


「着いたぞ」


 やがて通路は突き当たり、壁が前方を阻む。リグレスはその壁を手の甲で叩き、しばらく待つ。すると、壁の向こうから数度叩く音が返ってきた。リグレスは再び壁を叩く。

 すると、ようやく壁が動き、光が流れ込む。


「お疲れさん」


 そこに立っていたのは、リグレスの同僚であるユーガとペレの二人だった。

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