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剣と魔法とナノマシン~最強SFチート娘のファンタジー漫遊譚~  作者: ベニサンゴ
第六章【合わせ鏡の双子】

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第二百六十三話「………………ジョークよ」

 その後、ディジュはテトルと今後の展開について話し合うこととなり、ララ達は彼女らを残して集会所を出る。

 外では不安な様子で壁にもたれ掛かってサムズが待っていた。


「おう、どうだった?」

「大丈夫。身内だから安心して頂戴。まだ話してるみたいだから、もう少しだけ部屋使ってもいいかしら」

「ああ、今日は特に予定もないから別に良いぞ」


 サムズはテトル達が信用のおける相手だと認め、快く集会所の使用を許した。

 ララ達が彼に感謝すると、若い村長は照れくさそうに鼻を擦った。


「それじゃあ私たちは森へ行きましょうか」

「ファクトリーだったか。それを回収するんだな」

「そうそう。あれが中々便利なのよ」

「今でも十分便利な気がするんですけどね……」


 ナノマシンだけでも破格の性能だというのに、まだこれ以上があるのかとロミが戦慄する。

 魔法に造詣が深い彼女だからこそ、ララのナノマシンの異常な能力がよく分かる。


「それじゃあ一旦小屋に戻るか」

「そうですね。急いで飛び出しましたから、色々準備が必要です」


 朝はドタバタとしていたため、碌な準備ができていない。

 三人は小屋を経由して森へと向かった。


「それで、結局ファクトリーっていうのはどういう代物なんだ?」


 ロッドの手綱を牽きつつ、イールが振り返って尋ねる。


「ナノマシンじゃできない加工ができる設備よ。例えばこの武器は――」


 そう言いながら、ララは腰のベルトに吊していた円筒を手に取る。

 信号を流し込み、機構を励起させれば、それはたちまち巨大な戦斧へと姿を変える。


「こんな風にナノマシンの操作で形を変える特殊金属でできてるの。ナノマシンで操作できる理由は単純で、この金属にはナノマシンが使われてるからね」

「そいつはナノマシンは関係ないってことか」


 そう言って、イールはララの左腕にある銃砲を見る。


「うん。これは耐冷性に特化して、熱による変形なんかを極限まで抑えた金属で作ってるんだけど、その加工はちょっとナノマシンじゃ難しいのよね」


 細長い銃砲を撫でながら、ララは説明をしたが、二人が完全に理解した様子はない。


「……とりあえずなんかすごい機械なのよ」

「大体理解した」


 二人のポカンとした表情を見て、ララは最大限簡素な表現で表す。

 イール達にはそれくらいの説明で十分だったらしい。

 数度頷いた後、ロミが話題を変える。


「偽物のディジュさん……ルゥシィでしたか、あれは大丈夫でしょうか」

「拡散凍結弾の冷却能力を上回ってたら、まあ逃げられてるだろうけど」


 不安げに表情を曇らせるロミとは対照的に、ララは楽観的だった。

 実際、彼女は欠片ほども自分の放った予想を信じていないらしい。


「様子見も兼ねてレベル2冷却能力弾にしたけど、まあこの様子だとね」


 そう言って、ララが不意に一点を指さす。

 二人の視線がその先で捉えたのは、霜を纏った森だった。


「なっ――」

「もう夏も間近なのに、霜が降りてます!?」


 驚く二人の隣で、ララは満足げな笑みを浮かべていた。


「うふふ、流石は私が開発した弾丸。――ゆくゆくは環境開発に使おうと思って作ってた奴の初期タイプだけど、威力は十分すぎたみたいね」


 拡散凍結弾は、彼女が生命居住可能領域(ハビタブルゾーン)の外にある惑星の環境を強引に変化させ開発する為に試作したものだった。

 あの小さな弾丸の内部では、自己拡散によって常に冷気を発生させる機構が組み込まれており、簡易型ブルーブラストエンジンが停止するまで、長期にわたって周辺を凍結させる。


「凍結の魔法でこれを再現しようと思ったら、熟練の魔法使い三人以上は必要ですよ」

「これ、防寒具とか持ってきた方が良かったんじゃ無いのか?」


 枯れ葉の凍った地面に恐る恐る足を踏み入れつつ、二人は戦慄する。

 人智を軽く超越した現象が、目の前に広がっていた。


「多分、レベル5の弾を使えば辺境一帯凍らせることもできるわよ」

「絶対使うなよ! あたしはまだ死にたくないからな」

「異端審問に掛けられても文句言えませんよ、それ……」


 むふん、と得意げに唇を曲げるララに、二方向から一斉に声が浴びせられる。


「………………ジョークよ」

「冗談には聞こえなかったんだが」


 長い間を空けて絞り出した言葉も、目を三角にしたイールに一蹴された。

 彼女の目から逃れようと、ララは少し歩速を早めて森を進む。


「ほら! ちゃんとルゥシィも凍ってるわよ!」


 そう言って彼女が指さした先に、凍てつく氷柱があった。

 薄らと透けるその内部に、ディジュと同じ外見をした魔獣が時を止めていた。


「まあ、これだけ凍ってたら流石にな」


 冷たい地面を嫌がるロッドを慰めながら、イールが言う。

 これだけ徹底的に凍結されていれば、逃げられるものも逃げられない。


「それで、このルゥシィさんはどうするのよ」

「何にも考えてなかったな。ディジュに任せるか」

「わたし達が下手に手を出してしまっても良い結果にならなさそうですし」


 氷柱を見上げ、三人はすぐに結論を下す。

 魔獣の専門家でもなんでもない三人に、この魔獣をどうこうできる自信は欠片もなかった。


「それじゃあ私は精密作業工作室(ファクトリー)取りに行ってくるけど」

「あたしはロッド見とくよ」

「じゃあわたしは付いていってもいいでしょうか」

「いいよー」


 そうして、三人は二手に分かれる。

 イールは環境の変化に混乱している様子のロッドと共に二人を見送り、ララ達は塒跡から洞窟へと再度足を踏み入れた。

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