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剣と魔法とナノマシン~最強SFチート娘のファンタジー漫遊譚~  作者: ベニサンゴ
第六章【合わせ鏡の双子】

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第二百五十話「これはララが悪いな」

 翌朝、ララは日の出と共に目を覚ます。

 腰の上にかけていた藁を取り払い、寝ぼけ眼を擦りながら半身を起こすと、既にイールが身支度を調えていた。

 壁と屋根があるとはいえ、藁とシーツだけでは流石の彼女も着衣の上での就寝だったらしい。


「おう、おはよう」

「おはよ。早いわね」


 ララは銀のインナーの上に服を着ながら欠伸を漏らす。

 イールは長い赤髪を、丁寧に櫛で解していた。

 彼女の髪質は硬めだが素直な質で、あまり寝癖も目立たない。

 毎朝と同じように櫛で一梳きすれば、それだけで綺麗な艶が浮かぶ。


「相変わらず綺麗な髪ねぇ」


 紐で一纏めに結ぶ様子を見て、ララが言う。

 ララの白髪は肩に少し届かない程度で、あまり長くはない。

 イールのように長い髪が羨ましいと思う訳ではないが、それでも女性としては興味も捨てきれない。


「ララも伸ばせばいいじゃないか」


 いつもの日課を終え、満足げに息を吐いてイールが言う。


「まあ、生育抑制機能を止めればいいんだけど。それはそれで煩わしいのよ」

「よく分からんが……。そういえばララはあんまり髪伸びないな」

「あんまりっていうか、全く伸びないわよ」


 前髪を弄りながら、ララは簡単に説明した。

 要はいつものごとく、ナノマシンによる効果である。


「お水汲んでくるわ。朝ごはんに使うでしょ?」

「ん、よろしく頼む」


 ララは寝床から這い出て立ち上がる。

 木桶を二つ抱え、彼女はまだ朝靄の立ちこめる外へと出た。


「ちょっと肌寒いかしら」

「この辺は山脈も近いからな。風が吹き下ろしてくるんだ」


 腕を摩るララにイールが答える。

 ララは遙か遠方に聳えるヤルダ山脈の偉容に視線を向ける。

 山頂は一年を通して白く染まる、ここ辺境を辺境たらしめる絶対の境界線。

 天を貫く岩山は、風の流れさえ分断し、冷えた空気を地上へ流し込む。

 東西に向かって延びる尾根を持つため、それほど朝夕の時間を制限する訳ではないが、その気温差は骨身に沁みる。

 ララはナノマシンの体温調節機構を弄ると、少し身体を震わせる。


「じゃ、行ってきまーす」


 そうして、彼女は川へと駆けだした。

 村の中には人気はないが、建つ家々の中からは次第に起き出す人々の気配を感じる。

 煙突からは細く白い煙が立ち上がり始め、ララが川岸に着く頃には、良い香りが至る所から漂ってきていた。

 川沿いに視線を向ければ、ララと同じく水を汲みにやって来た婦人達が談笑を始めている。

 ララはそれに巻き込まれて拘束されないようにそっと忍び足で水を汲み、迅速に小屋へと戻る。


「汲んできたわよ」

「おう。じゃあ、あたしが作るか」


 ララが帰ってくると、イールは既に火の支度をしていた。

 昨夜火種は残しておいたので、大きくするのにそれほど時間は要さない。

 火にかけられた鍋に水を注ぎ、沸騰するのを待つ。


「ロミはまだ寝てるわね」


 火の側に腰を下ろし、ララは未だにすやすやと眠るロミを見やる。

 とことん朝に弱い彼女は、間近でララ達が動いていても構わずに起きる気配すら見せない。

 ララが彼女の柔らかい頬を摘まんでも、ゆさゆさと肩を揺らしても、不満げに寝返りを打つだけである。


「藁とシーツだけの寝床で、よくこんなにぐっすりできるもんだ」

「逆に才能よねぇ」


 沸々と泡の立ち始める鍋をかき回し、ララが肩を揺らす。

 そして彼女ははたと何か思いついたように、ロミの上下する胸を見た。

 ララ、イール、ロミの三人の中で、もっとも豊かなのは、イールである。

 特注の胸当てを作らねば他にサイズがないと嘆き、激しい動きではちぎれそうになって痛いと嘆息するのは、もはやララも慣れた彼女の姿だ。

 だが、次点に並ぶロミもまた、一般的な彼女と同年代の少女達から大きく上回る。


「全く……全く、聖職者にあるまじき胸をして……」


 わきわきと怪しく指を動かしながら、ララが寝息を立てるロミににじり寄る。

 彼女の胸は、風通し抜群。

 激しい運動にもタイムラグ無しで追随する破格の俊敏性を見せる。

 その上、ギリギリの回避でも敵の攻撃をいなせる。

 そう、戦闘において彼女ほどの理想体型はないのである。

 また旅においても不要な荷物などただの重りに過ぎない。

 むしろ持つ者こそが持たざる者へ羨望の眼差しを送ることが世の正しい道理というべきものではあるまいか。

 そう、ララは思うのである。


「全く……、けしからん……、けしからんわ!!」


 むぎゅっ。

 ロミはいつも、厚手のコートのような神官服を纏っている。

 だが寝るときはその下に着る薄い服だけだ。

 それはララのインナーほどではないにしても、彼女の柔らかな曲線に沿って密着している。

 つまりは、すごく掴みやすい。


 むぎゅっむぎゅっ。


「んぁっ! ――ふ、ン!」

「はぁ、はぁ……。なんて邪なッ!」


 ララの指が踊るたび、ロミが熱に浮かされたような吐息を漏らす。


「邪なのはララの頭なんじゃ?」


 イールはそんな様子を横目に、手早く調理を進める。


「んっ! あぁっ、ふあっ」

「うへへ。ええのんか、ここがええのんか?」


 たぷんっ。

 もにゅもにゅ。

 ぷるんっ。

 じゅるり。

 

「おい、おっさん。まだ朝だぞ」


 段々興が乗ってきたのか、ララの動きはエスカレートする。

 ロミが目を覚まさないのをいいことに、彼女の柔らかな感触を堪能する。

 肌着は手触りの良い柔らかな布で、それもまたサラサラとしていて心地良い。

 ララは我を忘れ時間を忘れて目を爛々と輝かせる。

 そしてその動きが最高潮に達そうとしたその直前――


 ガキンッ!


「いだっ!?」


 ララの後頭部に硬い衝撃が突き刺さる。

 咄嗟に患部を抑え床を見ると、ララが愛用している木製のコップが転がっていた。


「その辺にしとけ。ロミも起きてる」

「うぅ……暴力はいけないわよイール……。って、ロミ起きてたの!?」


 イールに唇を尖らせていたララは、慌ててロミの方へと視線を戻す。

 すやすやと気持ちよさそうに眠っていた乙女はぱっちりと目を覚まし、涙に潤んだ青い瞳で彼女を睨み付けていた。


「ひどいですよぅ。やめてって言おうとしたのに……」


 腕全体で覆うように胸を隠し、声を震わせる。

 そんな姿さえたおやかで庇護欲を誘う甘美な雰囲気を纏うあたり、彼女も魔性である。

 

「ご、ごめんなさい。つい、気持ちよくって……」

「なんの慰めにもなってません!」


 床に額をこすりつけて陳謝するララ。

 ロミは乱れた服を整えながらも、そんな彼女にツンとそっぽを向く。


「いやらしいララさんなんて許しません」

「うぅ、そこをなんとか……」

「これはララが悪いな」

「イールまで!」


 今回ばかりはララのやり過ぎである。

 イールもロミの味方に付き、ララは完全に劣勢だ。

 できることなど他に無く、彼女はただただ謝り続けたのだった。

 

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