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剣と魔法とナノマシン~最強SFチート娘のファンタジー漫遊譚~  作者: ベニサンゴ
第六章【合わせ鏡の双子】

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第二百四十五話「では、行きましょう」

「それじゃ、僕たちは村に戻るよ」

「うん。色々とありがとうね」


 昼下がり。

 サムズと今後のことについて話し込んでいたソール達が椅子から立ち上がる。

 話が一段落付き、リエーナの村に戻るようだった。

 ソール達との最後の別れの前に、ララ達は言葉を交わす。


「ケイルソードはもうちょっと愛想良くしなさいよ」

「余計なお世話だ」


 クスクスと肩を揺らしながらララが茶化せば、ケイルソードは憮然とした表情で返す。

 その隣のティーナが、任せてと言わんばかりに胸を張る。


「まあ、もし何かあったら多分精霊がララ達を呼ぶと思うよ」

「ええ……。まあ、その時はすぐに駆けつけるわよ」


 あっけらかんと言い放つソール。

 ララは思わず呆れた様子でため息をついた。

 精霊も随分と安い小間使い扱いをされたものだ。


「とはいえ、わたし達はアームズベアについて調査しないといけないので、数日はこのあたりにいると思いますよ」


 ロミが言う。


「そっか。それならまた会うかもね」


 ソールが嬉しそうに手を叩いた。


「ララ達はしばらくいるのか。それなら村の空き家を使っても良いぞ? 残念ながら宿屋は老朽化してた所をこの前の熊にやられて壁に穴が空いてるが、ただの空き家ならいくつかあるからな」

「本当か? それはありがたい」


 サムズの提案に、イールが目を輝かせる。

 屋根と壁があって雨風がしのげるだけでも休養は十分摂れるため、彼女達には願ってもいない幸運だった。


「じゃ、俺たちはそろそろ失礼する」

「気をつけて帰るのよー」


 ケイルソードがサムズに一礼し、歩き出す。

 それに従ってソールとティーナも別れを惜しみながらも集会所を発った。


「行っちゃったわね」

「まあ、すぐそこなんだがな」


 三人の後ろ姿を見送りながら、ララがしみじみと言葉を漏らす。

 沢を越え、丘を登り、彼らはやがて森の中へと消える。

 完全に姿が見えなくなってから、ララ達は集会所の広間に戻った。


「それで、ララ達はこれからどうするんだ?」


 集会所のテーブルにつき、サムズが切り出す。

 答えたのは、今回の件について直接レイラから指示を下されたロミだ。


「空き家を貸して頂けるとのことでしたので、ひとまずはそこを拠点にして周囲の魔獣の調査を行いたいと思っています。今、サクラさんがアームズベアの足跡調査に向かって下さっていますので、その後の行動はその結果次第ですね」

「そうか。分かった。早速今日から調査は始めるのか?」

「まだ日も高いですし、早め早めに始めた方がいいと思うので、そのつもりですよ」

「じゃあ、とりあえず家に案内しよう」


 そこに荷物を置いて準備していけばいい、とサムズが親指を立てて言う。

 そんな彼の厚意に甘えて、ララ達は集会所を出た。


「そういえば、アームズベアに結構建物壊されてたけど大丈夫なの?」


 村の中を歩きながら、ララが尋ねる。


「結構被害は大きいな。ただまあ、民家を優先的に直して、今は殆ど復旧できてるぞ」

「そっか。魔物よけの石柱なんかは置いてないの?」

「まだこの村には神官がいないからな。落ち着いたらヤルダまで使いを出そうと思ってたんだが……」

「それなら、わたしが手配しましょう」


 ロミがぽんと胸を叩く。

 サムズは両手を擦り合わせて彼女に感謝をしめした。

 アルトレットの街道沿いや町の周囲にも配置されていた魔物よけの聖柱は、キア・クルミナ教が管理しているものだ。

 ロミならば、そのままレイラまで直接要請することができる。


「ほら、ここなんてどうだ」


 そうこうしているうちに、一行は一軒の古い小屋の前に辿り着く。

 ドアと薄い板の壁と、今にも剥がれそうな屋根の、半ば風化したような、自立しているのが奇跡のような、なんとも頼りない一軒である。


「使ってない家の中じゃあ、一番上等な物件だぜ」


 ぽんぽんと優しく柱を叩きつつ、サムズが言う。


「床はないし寝床は藁で申し訳ないが、雨風くらいならしのげるだろ。もしなんなら勝手に補強してくれてもいいし、なんなら立て直してくれてもいいぞ」


 快活な笑いと共にそんなことを言い放つ青年に、ララ達も乾いた笑いで返す。


「まあ、野宿よりは万倍いいさ」

「そうですね。今の時期の夜風は寒いですし」


 野営になれた二人は、そう言ってドアを潜る。


「もうちょっとちゃんとした家だと……」


 予想を裏切られたララも、二人に続いて中に入る。

 小屋の中は乾いた土で埃っぽく、壁と屋根に開いた小さな穴から風と光が通り抜ける。

 壁の隅には藁が疎らに敷かれ、中央には焚き火跡らしい灰があった。


「藁は腐るほどあるからこのあと持って来といてやるよ」

「ありがとうございます」


 サムズに丁寧にお礼を言って、ロミは小屋を見渡す。

 家具らしい家具は見当たらず、椅子やテーブルになりそうな物もない。


「調査ついでに、切り株でも持ってきましょうか」

「流石にあたしの剣も木は切れないぞ?」

「そこはほら、ララさんが何とかしてくれませんか?」

「えっ、私!? ……まあ、別にいいけど」


 にっこりと純真な笑顔を浮かべ、ロミが言う。

 イールがおかしそうに笑い、ララがため息をついた。

 どうやら、ロミも随分ララの能力が分かってきた様子だった。


「ま、どうせ壊す予定だった小屋だ。好きに使ってくれ」

「ああ、そうさせて貰うよ」


 そう言って、サムズは藁を取りに向かう。

 残された三人も、早速持っていた荷物を地面に下ろした。


「これからすぐに出発するのよね?」

「そうですね。準備ができたらすぐにでも」


 ロミの要請に従い、ララとイールは素早く準備を整える。

 元々身軽な彼女達であるため、それほど時間もかけずに出かける準備は完了した。


「ん、サクラも戻って来たわね」


 装備の確認をしていたララが顔を上げる。

 彼女が外に出れば、丁度サクラが森の方向から戻って来たところだった。


「おかえり。ご苦労様」

『ただいま帰還しました! 足跡はもう殆ど残っていませんでしたが、僅かに臭いがありましたので、それをたどれましたよ』


 ララがサクラを受け止めると、人工知能は収集したデータを主人に転送する。


「ん、塒も見つかったのね」

『はい。とはいえ、もう既に他の動物の臭いや痕跡もありましたが』


 森の生態系は多様らしい。

 主が消えた巣は、一瞬後にはまた新しい主人を迎えることとなる。


「どうだった?」


 そこへ、同じく準備を終えたイールがやってくる。

 すぐにロミも現れた。

 ララが塒跡を見つけたことを話すと、彼女たちは喜び、ひとまずそこへ向かうことを決めた。


「それじゃあ早速出発するか」

「そうしましょ。まだ日が高いとはいえ、できるだけ調査に時間を取りたいわ」

「では、行きましょう」


 そうして、一行はサクラを先頭に立てて出発した。

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