来なくなった友人④
車が何回か信号待ちで止まる感覚と左右のカーブを曲がる感覚とを繰り返していたが、いま止まった感覚は目を閉じている俺にもハッキリとわかった。
俊介の家に着いたのだ。
「着いたよ」
お母さんの声で閉じていた目を開けると丘の上の閑静な住宅地の一角に俊介の家はあった。
「ありがとう」
「じゃあお母さん買い物してくるから、終わったらメールして頂戴」
「うん」
車から降りて玄関のベルを押すと暫くしてドアが開いた。
後ろで車の発進する音が聞えた。
「電話した進藤ですが、俊介君いますか」
「まぁ。遠いところわざわざ有難う。二階に居りますので、どうぞ上がってください」
おばさんに案内されて俊介の部屋に入った。
「よう!元気か?」
「ああ」
照れくさいのか、俊介はニコッと笑った。
「どうしたの?」
「うん、まあ普通にサボタージュ」
「そっか」
久し振りに会って話したいことが沢山有ったはずなのに何も話すことができない。
車の中で考えていた原因が秋月穂香にあるのではという突飛な考えなんて勿論出せるはずもなくて、ボソボソとありきたりの学校の話しと先生から預かっていたプリントの説明をしていた。
説明をしながら俊介の部屋になにか変わったところがないか様子を窺っていると、勉強机の横に高そうなノートパソコンがあることに気が着いた。
「あのパソコンって俊介の?」
俺が指差す先を俊介も振り返って「ああ」とだけ答えた。




