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第八話 頑張りすぎですか!?


 街での生活4日目、アリーと2人で清掃活動を始めて3日が経過した。

 この間に稼いだ金額は、

 初日 8000ギル×荷車5杯=40000ギル

2日目8000ギル×荷車16杯=128000ギル

3日目8000ギル×荷車16杯=128000ギル

4日目8000ギル×荷車10杯=80000ギル

 合計、376000ギルだ。


 これは成人したばかりの12歳の労働者の平均が、月収で75000ギルと言われていることから考えると、わずか4日で5ヶ月分以上を稼いだことになる。

 2人で稼いだことを考えても、大きく平均を上回っている。

 もっとも、俺達のように宿屋を常宿とした場合は、平均月収程度だと宿代だけでも赤字になるので、駆け出しの冒険者は野宿する者やもっと安いベッドだけの相部屋を使う者も多い。ドミトリールームという相部屋だ。


 その点俺達は、初日からそれなりの収入があったため、ダブルの個室を取っている。

 それでも、最初に6泊分として支払った20000ギル以外は、昼食に毎日500ギル程度使っているだけなので、貯蓄も随分と出来ている。

 余った金は冒険者ギルドに預けておくと、どこの支部でも引き下ろせるようになる上、盗まれる心配もないので、俺達は前日の稼ぎの大半は貯金してしまい、手元には必要最小限だけ残しておくようにしている。


 この分だと、二人して大金持ちになる日も近いかと思っていたが、どうやら世の中それほど甘くはないらしい。

 先ほどの収支を見ればわかるが、本日4日目の稼ぎが他の日よりかなり悪い。

 実はこれは、何か用があって仕事が出来なかったとか、天候が崩れて掃除できなかったとかではないのだ。


 俺達が10杯目の荷車を役所に持ち帰った時、ゲーハさんが申し訳なさそうに言ってきたのだ。

「コーター君、アリー君、ご苦労だった。

 次の場所を頼みたいのだが、実は君たちが頑張ってこの4日間掃除してくれたおかげで、早急に道掃除をしなければならない場所がなくなってしまったんだ。

 また、汚れてきたら依頼を出すことになるが、当面は道掃除の依頼自体が出せそうにない。

 すまんが、明日から別の仕事を受注してくれ」


 要は、俺達の頑張りすぎが原因だった。

 他の冒険者なら、たとえ慣れた大人でも朝から晩まで頑張っても、荷車1杯分が限界だと言われている道掃除を、普通ではあり得ないスピードで終わらせてしまったので、仕事がなくなったと言える。


 荷車47杯は、慣れた人で2ヶ月、新人なら4ヶ月分の仕事に相当する。

 それを、2人がかりとはいえ4日でやったのだ。

 仕事がなくなるのも必然である。


「今まで、ありがとうございました。

 また、汚れてきたら俺達を呼んで下さい」

「ありがとうございました」

 4日目の午後14時半、俺達はゲーハさんに礼を言い、役所を後にする。


 冒険者ギルドに依頼達成の報告をするために移動する。

 その道中、アリーから声をかけられる。

「ねえ、コーター。

 次の仕事はどうする」

「金はあるから何日かは働かなくてもいいと思うけど、正直いうと道路掃除以外で出来そうなことを探してみたい。

 アリーは休みたい?」

「うーん……

 コーターとデートしたいけど、やっぱり生活が安定するまでは稼ぐべきだと思うわ」

「うっ、デートか……

 俺もしたい……」

 いろんな意味で2人の仲を進展させたいという思いは強い。

 ダブルベッドで一緒に寝る中の俺達だが、ここまで4泊して今だ清い関係を続けている。


 これは道掃除で体力もスキルも酷使する関係で、飯を食ってベッドに入るといちゃつくまもなく爆睡してしまうのが原因だ。

 機会さえあれば更に仲を深めたいと思っているし、アリーも拒絶する意志はなさそうなのだが、働き始めたばかりの12歳には、いささか体力面で問題があるのだ。

 まあ、そうはいっても、成人したばかりの12歳だ。先は長い。

 このまま2人で活動していれば、遠からぬ将来、そういうこともあるだろう。

 焦って嫌われては元も子もない。


「とてもデートしたいけど、アリーが言う通り、生活の安定が先だな。

 道路掃除以外でも食っていける仕事を探してみよう」

 俺は断腸の思いでデートを断念する。


 そんな話をしていると、歩いて15分の距離にある冒険者ギルドに到着した。


 ギルドはまだ15時前と言うこともあり、閑散としている。

 ギルドマスターのライバーさんが今日も1人で窓口を担当していた。

「ライバーさん。

 依頼達成の報告と、次の依頼がないか探しに来ました」

 俺は窓口越しに声をかける。


「おお、コーターか。今日は早かったな。

 次の依頼を探しに来たって頃は、道路掃除は完了なのか」

 ライバーさんは少ない情報から俺達の現状を読み解く。流石マスターだ。


「はい、順調に仕事しすぎて、ゴミがなくなりました。

 何か俺達でも出来そうな依頼はありますか」

 俺の質問に、ライバーさんはカウンターから何枚もの木札を取り出す。


「一番オーソドックスなのは常時依頼の採集だな」

「採集ですか?」

「ああ、採集だ。

 薬草、毒草、魔物の素材、鉱石などいろいろあるが、お前達でも出来そうなのは植物系の採取だな。

 魔物は返り討ちに遭うかも知れないし、鉱石は重たすぎて量が運べないから実入りが少なく食べていけない」

「なるほど、それでその大量の木札は何ですか」

「これは常時依頼が出ている薬草や毒草の特徴やイラストを描いたものだ。

 この辺の主なもの4種類と、たまにしか取れないが希少価値があるもの6種類、合計10種類だ。

 しっかりと見分けられるようになるまではこいつを貸し出すから、いい草を集めて来いよ」

 そう言うと、ライバーさんは窓口から木の札を渡してきた。


 木札には丁寧に黒インクで書かれた植物の絵と、河原に生えやすいとか、森の薄暗いところにたまにあるとか書いている。

 買取価格も書いてあり、たくさん取れる薬草は安く、希少価値があるたまにしか取れない薬草は高い。


「ありがとうございます。

 今日はもうすぐ夕方なので、街の近くを探してみますね」

 俺は礼を言ってギルドを出ようとするとランバーさんがヒントをくれた。


「街の近くは、他の連中や冒険者以外の町の人もたくさん通るから、ほとんど取り尽くされている可能性が高い。

 時間があるならライバルのいないところを探してみるんだな」

「「ありがとうございます」」


 俺はアリーと同時に礼を言い、街の外を目指した。







旅行先からの更新です。

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