第六話 二人の仲は進展するか!?
昨日投稿分の最後の方に10行ほど、昨日19時くらいに加筆しています。
ヒロインがあけてはいけない扉を開けそうになる話が追加されていますので、まだ読まれていない方は一読お願いします。
冒険者ギルドに依頼達成の報告とアリーの件の相談に行ったのがちょうど夜の7時半だった。
アリーの件は犯罪一歩手前と言うことで、街の衛兵詰め所に報告し、明日改めて届けるようにと言うことだ。
冒険者ギルドを介した仕事ではなかったが、冒険者登録していたおかげで、冒険者が巻き込まれた案件としてギルドが仲介してくれた。
俺達は夜8時には、冒険者ギルドが紹介してくれた宿を目指す。
と言ってもギルドの裏口から出てすぐの、冒険者御用達の宿だ。
荷物はギルドに預かってもらっていたので、仕事中うんこまみれになった被害を着替えの衣服は免れている。
ギルドの話では、今、街の近辺で大きな依頼がないことから、部屋は十分空いているらしい。
俺達は止まり木亭という名の宿ののれんをくぐると、すぐに元気な女性の声がかけられた。
「いっらしゃいませ。
お泊まりですか、お食事ですか」
「ああ、泊まりでお願いします」
俺の言葉に頷きながら俺達より少し上に見えるカウンターの女性は細かい条件を質問してくる。
「お部屋はどうしましょう」
俺が答えるよりも前に、アリーが答える。
「2人部屋を1つ」
「いいのか?」
俺はアリーを見て小声で聞く。
「今の私は稼ぎ0ギルの貧乏少女なの。
出してもらう以上、贅沢は敵よ。
それともコーターはあたしと一緒じゃいや?」
「嫌なわけがないけど、成人したばかりの男の子として…………」
「私はコーターならいいわよ。
将来責任取ってくれるなら……」
「それは、嫁に来てくれると言うことか……」
「まあ、そうとも言うわね」
「コホンッ」
俺達が会話で盛り上がりかけたとき、受付の女性の咳払いが聞こえた。
「それではツインのお部屋とダブルのお部屋、どちらにしますか」
「すいません……
あの……」
俺は言いよどむ。
「ダブルで」
横からアリーが言い切った。
「いいのか」
「責任取ってくれるんでしょ」
「それはもちろん」
「コホンッ」
再び咳払いで中断される。
「ダブルのお部屋代は1泊3000ギルです。
お食事は朝食が200ギル、夕食が300ギルです。
6連泊されますと、食費、宿泊費とも1泊分がサービスとなります」
「それじゃあ6連泊でお願いします。食事は2食つけてください」
俺は迷わず即答する。
「ハイ。
それでは宿泊費と食費5泊分で20000ギルとなりますが、よろしいですか」
受付の女性は計算も速いようだ。
「ハイ、かまいません」
俺はそう言うと、今日の稼ぎ40000ギルのうち半分を支払う。
「ごめんね、コーター。
あたしも稼いだら、負担するから……」
アリーはそう言うが、当てにしていた食堂があんなところだったことを考えると、正直すぐに次の働き口が見つかるかはわからない。
「気にするな。
大丈夫だ」
俺は稼ぎに関して十分な手応えがあるので自信を持って言う。
「ありがとう」
小さな声で礼を言うアリーと連れだって、3階立ての宿の2階の一番奥にある部屋の鍵を受け取り、俺達は移動する。
一旦荷物を置いて、一回の食堂で夕食を食べる。
食堂では受付の女性によく似た年配の女性が配膳していた。
親子だろうか。
「いらっしゃいませ
宿泊の方ですよね」
女性から声がかかる。
「はい、そうです」
俺は頷きながら答える。
「では、定食をお出ししますので、こちらにかけてお待ちください」
女性はそう言うと奥の厨房へと消える。
「あなた。
宿泊の方の定食2つよ」
「あいよ!
すぐ出来る」
元気のいい男性の声が聞こえてきた。
「野菜炒め定食二つお待ち!」
ものの1、2分で、男性の声が奥から響く。
すぐに先ほどの女性が山盛りのご飯と山盛りの野菜炒めにだしの効いた海藻スープをもって現れた。
「お待たせしました。
本日の夕食は、野菜炒めとわかめ入り玉子スープです」
俺とアリーの前に食べきれるのかという量の大盛り定食が配膳された。
野菜炒めにはエビやイカ、薄くスライスした肉などもたっぷり入っている。
この街は海にも面しているので、新鮮な魚介類も多い。
これで300ギルは安い。
俺達は早速食事をいただく。
「旨いな……」
「美味しい……、塩加減と旨味の塩梅がちょうどいいのね」
料理スキルを持つアリーは俺より繊細に料理を表現する。
「ここの食堂、けっこうすごいかも……」
「そんなにか?」
俺の質問に頷きながらアリーは答える。
「昼間手伝った娼館の食堂とは雲泥の差よ。
私もここの味なら将来の旦那様のために盗みたいと思うわ」
「ブッ」
俺はアリーの台詞に吹き出しかけた。
将来の旦那様とか……
顔が真っ赤になる。
俺の変化を見て、アリーも自分の台詞の内容に気がつき、同じく真っ赤になる。
しばらく箸が止まった。
「取りあえず冷めちゃう前に食べましょう」
アリーの言葉に我に返り、俺は再び箸を進める。
確かに旨い。俺は野菜炒めを堪能した。
食事が終わった俺達は急激に眠気に襲われる。
何とか部屋へと辿り着くが、この宿には風呂はなく、簡単なシャワーだけがある。
上部のタンクに湯を入れて使うタイプだ。眠気をこらえながら湯を沸かす。
アリーに先に使ってもらうことにする。
「一緒に入らなくていいの?」
アリーがいたずらっぽく上目遣いで言う。
可愛い……
しかし、残念ながら、この宿のシャワールームは2人で入れるほど広くないのだ。
俺は泣く泣く部屋の小テーブルの席について待つ。
その間に、魔石のコンロを使って湯を作り足す。
これでアリーが十分に湯を使っても大丈夫だ。
アリーは10分もすると出てきた。
「お待たせ、コーター。
シャワー使っていいよ」
「ああ、わかった。
アリーも疲れただろ。
寝てていいぞ」
「わかったわ」
アリーはシャワーから出てラフな就寝用のつなぎ服に着替えている。
俺はアリーと入れ違いでシャワー室へ追加の湯をもって入った。
5分後、俺はシャワーを使い終わり、ちょっとどきどきしながらベッドへと向かう。
上のまぶたと下のまぶたがくっつきそうなくらい眠いが、今からアリーと同じベッドで寝るかと思うと、ドキドキもとまらない。
「アリー」
ベットに横向きに寝ているアリーに声をかける。
「くー、すー、くー、すー」
返事は可愛い寝息だけだった。
考えてみれば故郷の村から6時間歩きっぱなしで、午後からは一仕事して、最後にうんこまみれで空を飛んだのだ。
12歳を迎えて間もない俺達の疲労は限界を突破していた。
俺はアリーと反対側からベッドに入るが、次の瞬間眠ってしまったようだ。
俺の記憶はベッドに入ったところで途切れ、次の記憶は翌朝の窓から射し込む日差しがまぶしくて目が覚めたところから始まった。
それ以外全く記憶に無い。夢も見ていなかったと言うことだろう。
朝起きて隣を見ると、アリーはもういなかった。
残念、モーニングスケベとか、アリーの可愛い寝顔を堪能とか、やりたいことはたくさんあったんだが……
辺りを見回すが、部屋の中にもいない。
どういうことだろう。
俺は素早く着替えをすませ、階下へ降りてみる。
「いやー、アリーちゃん。
流石、料理スキル持ちだね。
料理の勘がとてもいいよ。
うちのポリーにも見習って欲しいもんだ」
食堂の奥から、昨日の旦那さんの声が聞こえる。
「ありがとうございます」
次は、アリーの声だ。
「アリー、何やってんの?」
俺は思わずのぞき込んで聞いた。
「あっコーター起きたのね、おはよう。
実はウッディーさんとマチルさんの仕事を手伝いながら、料理の研究をしていたのよ」
「ああ、おはよう、この宿の主のウッディーだ」
「おはよう、マチルよ」
仲から、がっしりした長身の男性と昨日配膳していた女性が挨拶する。
「冒険者のコーターです。おはようございます」
俺も2人に挨拶を返した。
ちなみに、話に出てきたポリーさんというのは2人の娘さんで受付をしていた人だ。
アリーはどうやら、昨日の野菜炒めに感動して、宿泊している間、朝と夜にこの宿の調理を手伝うことにしたようだ。
「もちろん、昼間はコーターと一緒に働くわよ。
もう、離れているのはこりごり」
そういうアリーをウッディーさんとマチルさんが温かい目で見ていた。
「アリーちゃんなら即戦力になりそうだから、朝1時間、夜2時間働いてくれればアルバイト代として1000ギル出すわよ」
マチルさんが言う。
これは、2人の朝食と夕食の代金に相当する。
「ありがとうございます」
アリーが元気に礼を言う。
アリーは昨日、全く稼げなかったことをひどく気にしていた。
少しでも貢献できることに安心しているようだ。
「俺も何か手伝わなくていいかな」
アリーに聞くと速攻で否定された。
「ダメよ。コーターは昼間にスキルで大活躍するんだから、朝と夜は私が頑張るの」
何とも働き者のアリーである。
「コーターはいい嫁さんを捕まえてるな」
ウッディーさんに茶化された。
俺とアリーは朝食を済ませると、昨日の娼館での顛末を報告するため、衛兵の詰め所によってから、冒険者ギルドに今日の仕事の斡旋を頼みに行く。
衛兵詰め所では、アリーが昨日働いた分のアルバイト代を衛兵の皆さんが娼館から取り立ててくれることになった。
尚、娼館の経営者エーロイが行商人のアコーギに支払った斡旋料は、アリーではなくアコーギに返済させるべきだと口添えしてくれるらしい。
元はと言えば、娼婦の斡旋を依頼されていたアコーギが、調理希望のアリーを騙して娼館へ行かせたのが悪いのだから、至極当然の流れだろう。
冒険者ギルドにつくと、常時依頼の道掃除を俺達は受注する。
「コーター、あたしでも役に立つのかな」
料理スキルしかないアリーは心配そうだが、俺は全く心配していない。
「大丈夫だよ、アリー。
昨日やってみてわかったんだが、俺がスキルを使って掃除するのにかかる時間より、役場と掃除場所を移動する時間の方が圧倒的に長い。
アリーがもう一台の荷車を引いてきてくれれば、効率は一気に上がるはずだ」
俺の説明に納得したアリーは俺と一緒に街の役場を訪ねた。
運営さんから削除命令が来ないところをみると、この小説はなろう的にはセーフなんでしょうか?
取りあえず、運営さんからの連絡があるまでは削除しないことにします。
7話以降は反響があれば書くかも知れません。
ここまでポイントつけてくれた方、ありがとうございます。
明日から札幌に旅立ちますので、旅先からの更新は難しいかも知れません。ご了承ください。