第三十四話 魔王城にて
「なんと、こんなにも簡単に魔王の拠点に辿り着くとは……」
ブラウンさんはうんこ雲の上から魔王城を見下ろしながら独りごちる。
「ワシの魔法でもこれほど早く着くことはできなかったじゃろう」
誰に向けたでもないその言葉に、ウルグルさんが反応する。
「みなさん、魔族の中でも人族に友好的な人を巻きこみたくありません。
何か方法はありませんか」
「それならワシの魔法で声を大きくしてやろう。
敵対する意志のないものに呼びかけるがよかろう。
我が友、風の精に請い願う……」
俺の問いかけに答えて、ウルグルさんがなにやら呪文を呟き始める。
やがて大きな魔方陣が俺達の目の前に現れた。直径5メートルはありそうだ。
「拡声の魔方陣じゃ。
この魔方陣の中央で叫べば、およそ1000倍の音量になるはずじゃ。
他のものは間違っても魔方陣の前に出ないようにな。
鼓膜が破れるかもしれんからな」
ウルグルさんの説明に頷きながら、俺は魔方陣の中央へと歩み寄る。
『あー、あー……
ただ今、魔方陣のテスト中……
魔王城内の魔族の皆さん聞こえますか……
こちらは魔王討伐隊です』
俺の声は魔方陣によって増幅され、その大音量で魔王城の外壁にひびが入った。
中から慌てて魔族らしき人影が何人か飛び出し、こちらに向かって何か叫んでいる。
「何だ何だ……」
「音波攻撃か???」
かすかに聞き取れた魔族の声によると、混乱している様が窺える。
『えー、これは攻撃ではありません。
人族に敵対する意志がない魔族の方はただちに魔王城から退避してください。
今から30分後に攻撃を開始します。
繰り返します。
人族に敵対する意志がない魔族の方はただちに魔王城から退避してください。
今から30分後に攻撃を開始します』
俺の退避勧告が理解できたのか、様子を見に出てきていた魔族の人影は慌てて場内へと引き返す。
入れ違いにガーゴイルやグリフォンのような飛行能力がある魔物がたくさん出てきて、俺達の乗るうんこ雲に殺到してきた。
「どうやら戦うしかないようだな」
ブラウンさんが槍を構えてスキルの発動準備をする。
「ワシの魔法の威力を見せてしんぜよう」
ウルグルさんも杖を構えて詠唱準備に入る。
「支援と回復はまかせておけ」
パーサーさんも錫杖を構える。
「では、微力ながら俺も頑張ります」
俺はうんこスキルを発動し、魔物への攻撃を試みる。
まずは、うんこ創造で大量のうんこを作り出し、形状を細長い円錐形にして溝をらせん状に掘る。
続いてレベルアップしたうんこ変化で質量を限界まで引き上げ、硬さを不壊属性まで持っていく。
一つのサイズは長さ50センチ、太さは3センチほどだが、重量化と不壊属性のおかげでそれなりのものになった。
恐怖のうんこドリルの完成である。
うんこ創造の効果範囲、半径200メートル以内をこのうんこドリルで満たし、うんこ操作で高速回転させた後、迫ってくる魔物達へ向けて射出した。
進化したうんこ操作によって超高速で飛ぶうんこドリルは、慣性の法則に従ってうんこ操作のエリア外でも飛び続け、敵の魔物を貫いてもその威力を落とすことなく、射線上の魔王城尖塔を4つほど吹き飛ばした。
城壁も穴だらけのようである。
この攻撃で敵航空戦力はほぼ全滅し、生き残った魔物も無傷ではないらしく、ヨロヨロと飛びながらだんだん硬度を落としていく。
「やや、これはワシの魔法の出番はないようじゃな」
ウルグルさんは俺の攻撃を見て、詠唱準備していた魔法を解除したようだ。
「コーター殿、今の攻撃はいったい何ですか」
「いや、ただのうんこですが……」
ブラウンさんが俺に聞いてきたので俺は隠さず説明した。
「なんと、あの攻撃が全てうんこですか……」
俺の説明にアリー以外の三人はあっけにとられている。
「おのれ、貴様らゆるさんぞ!」
魔法城から一際大きな角付きの魔族が4体飛び出し、こちらに向かってきた。
「我らは魔王親衛隊四天王だ。
見たところ勇者もいないようだな」
「俺達が血祭りに上げてやる」
「覚悟しろ」
敵魔族は叫びながら高速で飛翔してくる。
「これでも喰らえ」
俺はすぐにうんこドリル第二弾を作り出すと四天王に向かって射出した。
四天王のうちの三体は先ほどのグリフォン達と同じ運命をたどり、穴だらけになって絶命したが、一体だけ回避に成功してこちらへ突っ込んでくる。
「おのれ!
鋼のゴリゴンまで貫くとは!
しかしこの光速のライリーには通用せんぞ」
魔族はそう言いながらこちらへ突っ込んでくるが、俺から220メートルのエリアに侵入したとたん茶色に変色して墜落した。
俺のスキル『スーパーうんこ化』の射程に入ったのである。
若干射程が伸びているところ見ると、先ほどまでの攻撃でレベルアップしたようだ。
この戦いが終わった後に、またあのレベルアップのアナウンスが脳内に響くかと思うとやりきれない。
しかし、魔王討伐はこれからが本番だ。
下では城から逃げ出す者や来たるべき城内決戦に備えて準備する者などで右往左往している様子だ。
やがて30分がたった。
本日はここまでです。
次回投稿は未定です。すいませんがしばらくお待ちください。