第三十一話 南西の街道にて
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俺達は人通りがなくなるまで街道を進み、十分街から離れたらスキルでうんこ雲を作って空中を移動することにした。
たいした荷物がないとはいえ、最近稼いだ金のなかから当分使う金額は持ち歩き、使わないお金はギルドにあづけておいた。
街から2kmほど歩き、かなり離れた場所まで来たのでそろそろうんこ雲を作って移動しようとしていた矢先、そいつは現れた。
「ひゃっほーーーー!
女だ!
女の臭いがする!!
しかもこの臭いは絶対いい女だ!!!」
「おい、よせ! ゴーグ!!」
「もう、次の街では問題を起こさないって行ったじゃないか!!!」
「ゼー、ゼー」
こちらに向かって土煙を上げながら一直線に迫ってくる4人の人影が見える。
先頭を走る厳つい大男は血走った眼でこちらを凝視しながらろくでもない事を喚き散らして爆走してくる。
その男を追うように、長槍を持った男と錫杖を持ったが続き、少し離れて息を切らせながら初老の男が走ってくる。
後ろの三人は先頭の男を止めようとしているようだ。
そいつらはあっという間に俺達の前まで辿り着き、先頭の大男は将にアリーに飛びつこうとしたところで長槍の男に止められた。
「いい加減にしろ、ゴーグ。
いくら勇者といえど、これ以上犯罪を犯させる分けにはいかない」
「うるせぇ!
俺様がいなけりゃ、この世は魔王のものになっちまうんだ。
その魔王を俺様が倒すんだから、つまりこの世は俺様のものだ!」
「バカ野郎、それじゃあ魔王を倒しても意味がないだろ」
「そうだぞ、ゴーグ。
そんなことになればお前が第二の魔王と認定される事になるぞ」
「ぜー、ぜー」
長槍の男と錫杖の男は説得を試みるが、大男は聞く耳持たない。
初老の男は未だにぜーぜーいっている。
「おい、女、喜べ。
今から俺が最高の快感と最強の子種をお前にくれてやる」
そう言うやいなや、俺や仲間パーティーの存在を無視して、大男は着ているものを脱ぎ始める。
「いやよ。
私はコーターと結婚しているんだから、あんたなんかのものにはならないわ」
ものすごい圧を発する半裸の男に向かってアリーは気丈に言い切る。
「なに、そいつがお前の旦那だと……
お前のようないい女にそいつは不釣り合いだ。
安心しろ。
今すぐお前は未亡人になるから、問題なく俺のものだ」
そう言うやいなや、そいつはパンツ一丁のいでたちで剣を抜き放ち、俺に斬りかかろうとしてきた。
「よせ、ゴーグ!
いくら勇者でももう限界だ!
お前は勇者以前に人間失格だ!」
「うるせぇ
元はと言えば、パーティーの女がみんないなくなったのが悪いんだ。
俺様の優秀な子種の行き先がないなど、許されることではない!!」
「バカ野郎!
そんなことをいって、聖女も姫騎士も無理やり妊娠させるから、パーティーが男だけになったんだろうが」
「知ったことか!
じゃまだ!」
そう言うやいなや、大男は剣の腹で止めに入っていた仲間の三人を殴り倒した。
「またせたな
それじゃあ死ねーーー」
三人を殴り倒した男は聖剣と思われる美しい長剣を上段に構えて俺に斬りかかってくる。
もはや猶予はない。
俺は勇者が持つ聖剣にスキルうんこ化を発動した。
ベチャッ
嫌な音を立てて聖剣はその柄を残しうんことなった。もちろん上段に構えられていたため、うんことなった聖剣の行き先は大男の頭である。
頭頂からうんこが降り注いだ状態の大男は、柄だけの聖剣を俺に向かって振り抜いた後、異常に気がつく。
「なっ、何だと
俺様の聖剣が……
もしや、これは貴様のスキルか!」
「ああ、そうだ。
これ以上うんこにされたくなかったら俺達に関わるな」
うんこを頭からかぶった半裸の大男へ俺は冷たく言い放つ。
「貴様!なんてことをしてくれたんだ!!
魔王に唯一ダメージを与えることができると言われている聖剣をこんなことにしやがって。
もう許せん!
殴り殺してやる!!」
大男はそう言うと残っていた剣の柄で俺を殴ろうとしてきた。
この男は今まで出会ってきたどの悪党よりも悪党のようだ。
「どうやら容赦無用のようだな……」
俺は呟くと、振りかぶった勇者の右腕にスキルうんこ化を発動した。
ベチャッ
再び嫌な音がして、勇者の腕が方からはずれ地面へ落ちる。
うんこと化した腕は剣の柄を握りしめた形のまま落下し、接地と同時にバラバラになった。
「なっ、バカな!
なぜ俺にスキルが効くんだ!!
俺の勇者スキルよりも低レベルのスキルは全て無効のはずだぞ!!
人類の到達限界まであと1つとなった俺のスキルで、無効化できない攻撃なんてあるはずがないんだ!!!」
勇者は何か叫んでいるが、俺のスキルは限界突破しているのでたとえレベル1でも、通常スキルのレベル10より高レベルなのだろう。
「残念だったな。
俺には効かないと言うことのようだぞ」
「バカな……
俺より高レベルのスキルを持つ人間なんているはずがない。
鑑定!」
どうやら大男は俺に対して鑑定をかけたようだ。
「スキル『スーパーうんこ』レベル1だと……
何でレベル1ごときのスキルで俺にダメージが……
これは何かの間違いだ!!!」
どうやら、大男の鑑定スキルでは派生スキルまでは見えなかったのだろう。
もし見えていれば『スーパーうんこの下僕』はなぜかレベル9なので、違った反応をしたはずだ。
そんなことを考えていると、錯乱した大男は俺に向かって左手を突きつけ、攻撃魔法を放つ態勢にはいった。
「これならどうだ!
雷魔法、サンダートルネード!!」
ベチャッ
俺は大男の詠唱が終わる前に、スキルうんこかで魔力のこもった大男の左腕もうんこに変える。
大男は自分の左腕が茶色に変色して落下していく様を呆然と眺めていたが、すぐに正気に返ると雄叫びを上げながら俺に跳び蹴りを放ってきた。
もはや、こいつを生かしておく意味はないだろう。
俺は大男の全身向けてスキルを発動する。
ベチャッ
本日三度目の嫌な音とともに、大男は荒野に転がる大きな野ぐそへと変貌した。