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第三話 街で冒険者になるしかないようだ

 なんか、評価していただいたりブックマークしていただいたり感想いただいたりしたんで、3話目も投稿します。



 俺は両親と相談した結果、街で冒険者として生活する道を選択することにした。

 家の畑を手伝うことも考えたが、農業に役立つとは思えないスキル『うんこ』では、両親の農作業の邪魔になってします。

 スキル『開墾』とは言わないが、せめてスキル『耕作』くらいは欲しかった。


 冒険者と言っても、俺に討伐依頼や護衛依頼など実入りのいい依頼はない。

 俺が目指すのは採集依頼や雑用依頼だ。

 こちらはそれほど儲かるとは思えないが、採集依頼も希少な薬草の繁茂する場所を独占できればけっこうな実入りになることがある。

 もっともそんな場所は既に熟練の冒険者によって秘匿されているだろうから、それほど上手い話があるとは期待できない。

 俺は、みんながやりたがらないからそこそこ報酬も高い公園のトイレ掃除や街道の汚物処理でも厭わずにやるつもりだ。

 両手を馬糞に突っ込み、全身馬糞まみれになった俺にもはや怖いものはないのである。




 そういうわけで、あれから一週間、朝8時に村を出発した俺は歩いて6時間かかる隣町のギルド入り口にアリーと立っている。

「アリー、お前まで付き合うことはないんだぞ」

「何言ってるのよコーター。

 一緒にうんこまみれになった仲じゃない。

 それに、街の食堂で働くことになったから、ついでに冒険者登録しておくことにしたのよ。

 食堂が暇なときは一緒に依頼をこなしましょう」

「ありがとう

 俺も一人よりこころ強いよ」


 俺達はギルドの扉を開けて中を見る。

 カウンターは奥にあり、手前は簡単な飲食が出来るフードコートになっている。

 壁には依頼票と思われる木の札が所狭しとかけられている。

 この世界では紙は貴重品で、木札を使っているのだ。


 ギルドの中には受付に一人のおっさんが座っているだけで、人っ子一人いない。

 場所を間違えたのだろうか。

 俺はおそるおそる声をかける。

「あのーーー、

 ここは冒険者ギルドで間違いないですか」

「おう、間違いねえぞ。

 坊主、何のようだ」

 受付のおっさんが答えてくれる。


「はい、僕はコーターっていいます。

 先週授かったスキルが使い物になりそうにないので、冒険者として身を立てようと思ってやってきました。

 幼なじみのアリーも一緒です」

 アリーが俺の後ろから顔だけ出して会釈する。


「ああ、雑用希望の新人か。

 今、雑用はやりたがる奴が少なくて人手不足だから助かる。

 かくいう、他のギルド職員も、雑用をこなしてくれる冒険者が少ないんでかり出されているって状態だ」

 何とか歓迎してもらえそうだ。


「あのそれで……

 どうすればいいんでしょう」

「ああ、そうだな。

 俺から説明しよう。

 俺はこのギルドのマスターをしているライバーだ。

 さっきも言ったが人手不足で10人いる部下はみんな雑用の依頼をこなしにいっている。

 取りあえず、この木札に名前と年齢、経験、スキルなんかを書いてくれ」


「はい、わかりました」

 俺とアリーは渡された木の札に必要事項をかき込む。


「よしよし。

 コーターとアリーか。

 スキルは『うんこ』と『料理』……

 料理は聞いたことがあるが、うんこは俺も初めてだな」


「はい。

 スキルの儀式に来ていた神官の人も驚いていました」


「ああ、そうだろうな。

 まあ、心配する必要なないさ。

 このギルドにはスキルなんか使わなくてもいい雑用が溢れている。

 薬草の採取とかはうちの職員に行かせたからいいが、当面人手がたりていないのは、役場から出ている常時依頼の道掃除だな」


 ライバーギルド長の言葉に首をかしげる。

「道掃除ですか」

「ああ、道掃除だ。

 どうだ受けてくれるか。

 今からなら夕方7時まで5時間はやれるぞ」

「かまいませんが、どんな仕事なんですか」

「なに、ちょっと汚れるが簡単な仕事だ。

 役場に行って道掃除用の荷車を受け取り、道に落ちている馬糞や牛糞を回収するだけだ。

 汚れ手当も付くから他の雑用よりかなり実入りがいいぞ」


 なるほど、道に落ちている糞の回収か……

 俺のスキルのことを考えると、俺向きの仕事と言えるかも知れない。

「わかりました。お受けします」

 俺はそう言うと、ギルド長から木製の仮冒険者証明を渡される。


「本物の冒険者証は金属製だ。

 お前達が依頼終わらせた頃には出来ているから取りに戻ってきな」

「わかりました。

 アリーは用があるので、今日は僕一人でやる予定ですがかまいませんか」

「ああ、かまわんよ」


 俺達は町役場の位置を聞くと冒険者ギルドを出る。

「それじゃ、コーター、私は行商のおじさんに紹介してもらった食堂に挨拶してくるわ。

 お試しで働くことになると思うけど、コーターが仕事の終わる夜7時には帰してもらうから、冒険者ギルドで集合よ」

「ああ、わかった。

 気をつけてな、アリー」

「コーターもね」


 俺達は一旦別れると、それぞれの目的地に向かう。




「こんにちは

 冒険者ギルドで道掃除を請け負ったコーターです」

 俺は町役場の清掃課を訪ねると、受付窓口で声をかける。


「おお、道掃除をやってくれるのかね。

 人手が足りていなくてね。助かるよ」

 受付の奥から初老の事務員のおじさんが出てくる。


「いやー、わしたちだけでは手が回らず、犯罪者の強制労働でやらせたりしていたんじゃが、それでも追いつかなくてね。

 冒険者ギルドに先週から依頼しているんじゃが、なんと言っても馬糞なんかの処理じゃから希望者が出なくて……

 今朝、思い切って報酬を2割上げたところなんじゃ」

 おじさんは俺を役場の裏庭に誘導しながら説明してくれる。


「そうだったんですね……」

 適当に話を合わせていると、アンモニア臭のする一角に辿り着いた。


「ここがこの街の糞尿処理施設じゃ。

 ここに回収した馬糞何かを持って帰ってくれ。

 運搬にはこの専用荷車を使いなさい」

 そう言っておじさんが指指したのは、幅1メートル、長さ3メートルほどの4輪の手押し車だった。

 手押し車には高さ1メートルほどで荷車にぴったりの木箱が乗っている。

 この中に馬糞を集めるのだろう。

 それとは別に、箱の右サイドにはなみなみと水の入った木桶が6つ取り付けられている。


「あの、この水は何でしょう」

 俺の質問におじさんが答える。

「ああ、それは糞を取った後、道路の石畳を洗うための水じゃよ。

 このデッキブラシもスコップと一緒に持って行きなさい。

 報酬はこの荷車いっぱいで8000ギル、半分じゃと4000ギルじゃ。

 よいかの?」

「わかりました

 頑張ります」

「それじゃあ、西地区の裏通りから初めてくれ

 気をつけての」

「はい」


 俺は元気に返事をすると、水の入った荷車と、スコップとデッキブラシをもって街の西側に移動する。


 途中の大通りは清掃も行き届いているようで、馬糞などを見かけることもなかった。

 こんな状態で荷車いっぱいの馬糞が集まるのか不安を感じながら進んで行ったが、そんな心配は杞憂だった。

 いや、むしろ別の心配をするべきだったのだ。


 役場で指定された西地区の裏通りは、道幅2メートルほどでうら寂しい割には時折馬車や牛車が通っている。

 離合できるような道幅はないため一方通行となっており、前を遅い牛車が行くと、後ろの馬車はその牛車のスピードに合わせたのろのろ運転になってしまう。


 そして馬や牛はところ構わず歩行中にいたしているようなのだ。

 歩行者の少ないこの通りでは、糞の処理を後回しにしていたようで、辺り一面、新しいのから古いのまで、様々な糞が落ちている。この荷車いっぱい一回分で終わるはずの無い量だ。


 辺りは発酵が進んだと思われる糞の臭いもありとても臭い。


 更に悪いことに、後から来た馬車にひかれた糞が道にこびりつき、後先考えない牛や馬にも踏み荒らされ、とても取りにくそうだ。水が足りなくなればどこかで水を分けてもらうしかない。

 果たして今から4時間ほどでどれくらい終わるのだろう。


 俺はため息をつきながら、荷車を端によせ、支給されたスコップで馬糞を道から救う。

 そのとき奇跡は起きた。


 凸凹のある石畳にこびりついているはずの馬糞の残骸が無いのである。

 綺麗に全部スコップに載っている。

 俺は今すくった馬糞を荷車に入れると、道にこびりついている方の馬糞にもスコップを入れる。

 するっとした手応えしかないにもかかわらず、道の馬糞は綺麗に取れた。

 これなら水で洗い流す必要はない。


 これはいったい……

 いや、考えるまでもないだろう。俺のスキルだ。


 そこで俺は、先週得たスキルについてあらためて思い出す。

 スキル『うんこ操作』

「たしか、俺の周りの半径1メートルのうんこを操れるんだったな……」

 俺は呟く。


 この道の幅は2メートルと少し。

 俺の体の幅を40センチとして、俺が真ん中を歩けば、この道幅のうんこを操れるかも知れない。


 俺はスコップを荷車の専用フックに引っかけ、荷車を道の中央に持ってくるとスキルを発動する。


 俺の半径1メートル以内に入った馬糞と牛糞はすべて荷車に乗っかるように。


 それは異様な光景だった。

 道から綺麗に剥がれた馬糞や牛糞が、その新旧を問わずに綺麗に剥がれて宙を飛ぶ。

 湯気を立てるできたてホヤホヤの馬糞から、ひからびて轍の跡もくっきりと残る牛糞まで……

 そしてその全てが俺の押す荷車へと綺麗な着地を決める。


 俺の通った後には、ゴミはあるが糞はなかった。

 俺が請け負った道の清掃は糞専用である。

 ゴミ拾いは別の依頼になるそうだ。


 これは、糞の中にゴミが混ざると、肥料を作るときに問題があるためらしかった。


 まあ、ゴミと言っても木の葉なんかがほとんどで、完全に石が敷き詰められているこの裏通りには街路樹もないため、それすらほとんどない。


 そういうわけで、俺が通った後はぴかぴかの石畳が残ることになる。

 通りの入り口から100メートルも進むと、荷車は馬糞と牛糞でいっぱいになった。 

 まだ、作業を始めて10分の経っていない。


 俺は早速役場に引き返し、担当の事務職員に声をかける。

「終わりました」


 事務職員は仰天する。

 まだ俺が荷車を引いて出て40分ほどしか経っていないのだ。

 作業場所までの移動時間に片道15分ほどかかるのだから、その異様な早さがわかるというものだ。


「きちんと道路まで綺麗に洗ったのかね?」

 俺は明らかに疑われているようだ。


「はい。

 俺のスキルのせいで、洗うところがないくらい綺麗になるんで問題ありません」


 俺の言葉に事務のおじさんは疑わしげな視線を向ける。


「それならワシと確認に行こう。

 8000ギルは確認が終わってから支払うとするよ」

「わかりました。

 それならこの集めた馬糞や牛糞を一旦おろさせてください。

 どうせなら空の荷車を持って行ってもう一杯分稼ぎたいと思います」

「ああ、わかった」


 事務員の許可も下りたことなので、俺はスキル『うんこ操作』を使って、荷車の馬糞と牛糞を半径一メートル分だけ空中に浮かし移動させる。

 長さ3メートルしかない荷車に積まれている分なので、二回も往復すると荷車は空になった。


 宙を飛ぶ馬糞達を見た事務員のおじさんが目玉を飛び出させんばかりに見開いて驚いている。

「なるほど、これが君のスキルか……

 だが、確認には行かせてもらうよ」

「了解です」


 こうして俺はおじさんをつれて再び西地区の裏通りへと向かった。

 そこは、新たに増えた馬糞が少しあったが、入り口から100メートルほどは綺麗になっており、その先の馬糞まみれの道との対比で違いは明らかだ。


「確かに、確認した。

 これが荷車一杯分の8000ギルだ」

「ありがとうございます

 今日は何往復かして、もっと稼ぎたいんですがかまいませんか」

「ああ、こちらとしてもその方が助かる。

 期待しているよ。

 私は金を用意して役場で待つから、終わったら声をかけてくれ」

「わかりました」

 俺の仕事ぶりに満足した事務員のおじさんは、役場へ向けて引き返していく。


 俺は、2杯目の馬糞を集めるべく、先ほどの作業中断場所まで荷車を進めるのだった。







 次回は未定です。

 正直、ここで完結する可能性もあります。

 あるいは悪評が多いようなら削除もあり得ます。

 そのときはごめんなさい。

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