第二十七話 因縁の再戦
今回はうんこスキルを使います。閲覧注意!
「礼には及ばない。正直、迷惑だ」
にじり寄ってくるジャーク達に対して、俺は怯むことなく言い放つ。
今までの数々の経験が、今の俺なら奴らとやり合っても何とかなるという自信につながっている。
「ふっ、言うようになったじゃねえか……
礼は礼でも、お礼参りだ。
お前のおかげで3ヶ月以上も臭い飯を食うことになったんだ。
お前達は殺す!
その前にアリーにはたっぷりと楽しませてもらうがな!」
ジャーク達は、ぶれないゲスっぷりだ。
「相変わらずだな……
俺がそんなことさせるわけないじゃないか」
「へっ、うんこ野郎が言うじゃねえか!
前の時は剣もなかったし不意打ちを食らったが、今度はそうはいかねえぞ!
なんてったって、俺のスキルは豪剣術だ。
剣さえあれば負ける道理はねえ」
ジャークはそう言うと剣を中段に構える。
「コーター、お前のスキルはうんこを操ることだと言うことはわかっている。
この森には見たところお前が操れそうなうんこは見当たらない。
諦めて剣のさびになりやがれ」
喚きながら斬りかかってくるジャークだったが、俺の目の前で剣を上段に振りかぶったところで固まったように正視する。
その視線は俺の後方に行っている。
そう、俺はジャーク達と話している間に、藪の向こうに隠しておいたうんこ雲に働きかけていた。
荷車も乗せることができるほど巨大なうんこ雲は、スキル「うんこ操作」でふわりと浮き上がり、今、将に頭上からジャーク達4人めがけて突撃しているところだった。
「な、何だこりゃ!?」「「「ひーーーーっ」」」
ジャークは叫び、取り巻きのコーシー、ギーン、チャークはうんこ雲の進行方向からそれようと横に飛ぶ。
ジャークだけは逃げることなく、上段に振りかぶった剣の狙いを俺からうんこ雲に変え、猛烈な勢いで斬りかかる。
「くらえぃ!!
豪剣術!!!!!」
ジャークは自分のスキルを信じて、巨大なうんこ雲に斬りかかった。
ガキンッ!!
ジャークの剣が中ほどから折れて刀身が回転しながら後方へ飛ばされる。
うんこ雲は、その質量差からか全く勢いが衰えることなく突き進む。
当然、剣を構えていたジャーク自身もうんこ雲によって吹き飛ばされ、後方へ飛んだ。
俺はスキルでうんこ雲を操作し、上空へ待機させる。
「ば、バカな……
なぜあんな訳のわからないもので鉄の剣が折れる……」
ジャークは呆然としているが、あのうんこ雲は俺のスキル『うんこ変化』によって超硬いうんことなっている。
鉄の剣ごときでどうこうできる硬度ではないのだ。
俺はジャーク達が立ちつくしているこの時間を利用し、万全の態勢を構築することにする。
上空に待機させたうんこ雲を材料とし、俺とアリーはうんこアーマーとうんこ棒で武装した。
奴らからすると、液便と化したうんこ雲が滝の水のごとく俺達に降り注ぎ、奴らの視界から一旦消えた俺達が再び目の前に現れたとき、茶色いフルアーマーを纏った俺とアリーが佇んでいたというわけだ。
「な、何だそれは……」
「お前に答えてやるつもりはない」
ジャークの質問を相手にせず、俺はうんこ棒を構える。
「ええい、コーターのくせに生意気な!
ギタギタにしてやる。
おい、コーシー。お前の風魔法には剣はいらないだろ。
その剣を貸せ!!!」
ジャークは折れた剣を捨て、手下のコーシーから剣を奪うように受け取ると、再び俺に斬りかかってくる。
俺はジャークの剣筋にうんこ棒を置いて構える。
バキンッ!
うんこ棒とぶつかると、金属的な衝突音とともに再び剣は折れた。
もちろん、うんこ棒の材質も超硬いうんこに変えている。
「ええいっ、なぜだ。なぜ切れん。
そんな訳のわからん茶色い棒が、なぜ切れんのだ!!!」
見た目はただ長いうんこにしか見えないうんこ棒が鋼鉄をもしのぐ硬さになっているとは、流石の豪剣術使いでも見抜けなかったと見える。
「こうなったら、肉弾戦だーーー!!!」
何をどうしたら、剣でも傷つかない俺に、素の拳でダメージを与えることができるなどと思えるのだろうか……。
折れた剣を投げ捨ててつかみかかってくるジャークに向かい冷静にうんこ棒で突きを放つ。
「ぐへっ」
見事に無防備な腹に一撃が決まり、ジャークは苦悶の表情を作り後退する。
「くそー!
コーターのくせに!!
許さんぞ!!!」
ジャークは流石に真っ直ぐ突っ込むのはやばいと思ったのか、姿勢を低くしてこちらをよく見ながら再度突撃してくる。
そして俺が繰り出したうんこ棒をかいくぐって躱すと、俺の鳩尾をうんこアーマーの上から素手で殴ってきた。
走り込んできた勢いも乗っており、普通であればうんこアーマーで防げたとしても俺が吹き飛ばされることは必定という渾身の一撃だ。
ベキッ、グシャッ……
結果は……、俺は微動だにせず、邪悪の拳が砕けた。
俺はうんこ雲を液便へと変化させた際に、地面に広がった段階で超硬いうんこに変えておいた。
いわば超硬いうんこで地面が覆われている状況だ。
そして、ジャークが殴りつけてきた段階で腹部から下のうんこアーマーを地面に広がる元うんこ雲と一体化し、超硬いうんこに変えたのだ。
ジャークは俺ではなく、地面とつながったうんこアーマーを叩いたのだ。
もちろん俺に衝撃が伝わることはない。
作用反作用の法則や運動量保存の法則はここでも健在なようで、圧倒的な大質量の超硬いうんこを殴りつけたジャークは、その殴った力と同じ力を殴った場所から受けるとともに、固定されたうんこアーマーによって拳を破壊されたわけである。
「ぎゃーーーー!
痛い、イタイ、いたいーーーー!!!」
右拳が原型を留めないほど複雑骨折したジャークは絶叫するが、全く同情する気になれない。
俺は容赦なくジャークの腹に本日二撃目となるうんこ棒を突き立てる。
「ぐふっ」
腹を押さえてうずくまるジャーク……
その瞳には未だに恐怖はなく、闘争本能が垣間見える。
「おい、お前ら!
何してるんだ。お前らもコーターをやれ!!」
一対一では不利と見たのか仲間に呼びかける。
「そそれが、ジャーク……
俺達動けないんだよ!」
ギーンが情けない声を出す。
実はこの辺り一帯に広がったうんこ雲から作った液便は奴らの足下まで広がっており、奴らの足を固定する形で、俺が超硬いうんこへと変質させておいたのだ。
取り巻きのコーシー、ギーン、チャークは足首まで固定され、一歩も動けなくなっている。
「コーシー、お前スキルは風邪魔法だろ!
魔法で打て!!」
尚も取り巻きを使おうとするジャーク。
「無理だよ、ジャーク。
スキルをもらってからすぐに強制労働させられたから、まだ一つも魔法を覚えていないんだ」
「この、役立たずが!!!」
ジャークは取り巻きのコーシーを怒鳴りつける。
「チャーク!
お前のスキルは弓術だろ。
早くこいつらを射殺せ!!!」
次は弓術を持つ取り巻きに攻撃を促すジャークだったが、声をかけられた取り巻きは悲しげに首を横に振りながら小さな声で答える。
「ジャーク、無理だよ。
俺達ここまで来るのに、かっぱらえたのは剣だけだ。
矢を射かけようにも、そもそも弓も矢もないじゃないか……」
なるほど、チャークの言うことはもっともだ。ない袖は振れない……。
と言うか……、ここまで一緒に来ていながら、弓矢を仲間が持っていないことを把握していないジャークの方がおかしい。
「ジャーク、どうやらもうお終いらしいな……
ここからはお仕置きの時間だ」
俺が低い声で言うと、始めてジャークの瞳に怖れの感情が宿った。