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第二十六話 帰ってきた男


 故郷の村に届ける荷物は午前中で買いそろえることができた。

 俺達は道路清掃のつてで役場から荷物運搬用の荷車を無料で借り受けることができ、その荷車に満載の生活必需品や食料を積み込んで昼過ぎに街を出発する。


 最初からうんこ雲を使わないのは、あれを町中で飛ばすことがどれほどの影響を与えるか、悪い予想しかつかないためだ。


 まず、あんなものを飛ばせば、それが何なのかうわさになる。

 次に来るのは、うんこ雲を飛ばしているものの詮索だろう。

 何回かは、俺達のことがばれないかも知れないが、何度も飛ばしていれば必ずばれる。

 そうなれば、俺達は奇異の視線を浴びせられ、とても住みづらくなることは必定である。


 そういうわけで、俺とアリーは街から離れて人通りが少なくなるところまで、役場の荷車で移動した。


 30分も歩くと人通りはまばらとなり、辺りは閑散としている草原地帯の景観である。

「このくらい離れれば大丈夫だろう」

「そうね」


 俺はアリーと相談すると、すぐに『うんこ創造』のスキルで大量のうんこを作り出す。

 続いてうんこ雲の語りに整形すると、超硬いうんこに変質させ、乗っても壊れないようにする。


 うんこ雲ができあがると、さっそく荷物を満載した荷車ごと乗り込み、俺達は空中遊覧飛行を開始する。


 空路は陸路と違い直線で村を目指せる上、出せるスピードも馬車よりかなり速い。

 うんこ雲の最大の欠点、うんこの臭いも、空中を移動するため空気が入れ替わり、ほとんど気にならない。

 本当はもっとスピードを出すこともできるのだが、風が凄くなるのでそこまでスピードは上がらない。

 それでも馬車で2時間ほどかかる道を1時間かからずに移動できた。


 村の近くにうんこ雲を着陸させると、そこからは荷車を下ろして押していく。


 うんこ雲に乗ったまま村の中央広場に着陸するという手もあるのだが、村のみんなを驚かせることになるし、何より臭いが村中に充満して苦情が出る。

 そういうわけで、村の風下にうんこ雲を下ろして、そこからは荷車を押しての移動となったのだ。


 村に着くと早速物資を村長に届け、母さんとアリーの家には魔道コンロを配達する。

 今日はこのまま村の実家に泊まり、明日の朝、次回の注文を受けて街へ戻る予定だ。


 母さんとアリーの母親からは魔道コンロの礼を言われ、とても感謝された。

 そしてその晩、仕事から帰ってきた父さんから俺はありがたくない話を聞くことになる。



「コーター、実は昨日、街の兵士が来てジャーク達が脱走したことが判明した」

「えっ……

 何でそんなことが……」

 俺は驚いて声を大きくしてしまう。


「どうやら、奉仕清掃活動中に監視の兵の隙を突いて殴り倒し、監視兵の剣を奪って逃走したようだ」

「なんてことを……」

 あいつら、バカだバカだと思っていたが、ここまでバカとは……

 俺は絶句してしまう。


「ああ、全くだ。

 ちゃんと刑期を勤め上げて出所すれば、兵士にはなれなくてもあいつらのスキルが生かせるそれなりの職業には就けたはずだ。

 こんなことをすれば即お尋ね者で、再びつかまれば今回以上の重い刑罰になることは確実だ」

 父さんの言葉を聞きながら頷く俺に、父さんは更に話しかけてくる。


「そこでだ、コーター……

 お前とアリーはこれから先、より一層気をつける必要があるぞ」

「何でだい、父さん?」

「兵士がこの村に来たのは、脱走後に村の縁者を頼って現れないかと言うことと、恨みを買っていそうなものに注意喚起するためだったようだ。

 あいつらに恨まれていると言うことなら、間違いなくコーター、お前が一番だろうからな……」

 なるほど、理解した。


 あいつらは連行されるときも俺とアリーをものすごい目つきで睨んでいた。

 俺達が街で活動していることを知らないあいつらは、俺達に復讐するため村に来るかも知れない。

「わかったよ、父さん。

 気をつけるよ」

 俺は頷きながら返事をする。


 この晩は、ジャーク達のことを考えるとなかなか寝付けなかった。


 あいつらはこの4ヶ月、自分のスキルを鍛えることはできていないだろうから、レベルは1のままだろう。


 対する俺のスキルはマックスの10……

 まあ、うんこのレベルが10だからといって、攻撃力が上がるわけではないが……


 いずれにしても、これまでの経験から、奴らに不意打ちされることさえなければ、スキル『うんこ』でも十分に戦える。

 しかし、もし不意を突かれたら……


 奴らのスキルは4人とも戦闘向きだ。

 一瞬でやられれば、スキルを使うことすらできずに意識を持って行かれるかも知れない。


 俺は、これからは活動中も細心の注意を払おうと心に決め、眠りについた。




 翌日の朝、村長から今回の商品の代金と、村の換金用特産物である毛皮や農産物を受け取り、俺達はうんこ雲を止めておいた村の西側へ移動する。

 うんこ雲を止めた木立に到着したところで、俺達は後ろから声をかけられた。


「探したぜ、コーターにアリー……

 お前達にはたっぷりと礼をさせてもらう」


 振り向くと、将にジャーク達4人が剣を抜いてこちらに迫ってきているところだった。


【次回予告】

 ついにコーターは因縁の相手、ジャークを対峙する。

 ジャーク達は手に手に武器を持ち迫ってくるが、コーターとアリーは武装していない。

 果たしてスキルを使う時間はあるのか……、このピンチを逃れることはできるのか……

 次回、『もらったスキルがうんこなんだけど……』、

 第二十七話 『因縁の再戦』 お楽しみに!








【後書き】

 リアルの職場の配置転換で、仕事が忙しくなってしまいました。

 執筆スピードが遅くなると予想されます。

 ご容赦ください。


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