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第二十四話 街への帰還

今回の表現は温和しめです。


 翌朝、俺は両親にいとまを告げて、俺の家まで迎えに来たアリーと合流する。

 と言っても家は隣同士なので、たいした距離ではない。


「コーター、アリー、次はいつ顔を見せるんだい」

 母が心配そうに俺とアリーに声をかける。


「母さん、次はそんなに間が空かないはずだ」

「お義母かあさん、私たち、犯罪者になってしまったアコーギの代わりに、必要なものを街から運ぶことになったんです」

「ああ、だから2週間後くらいに街から物資を運んでくる予定だ。

 必要なものがあったら、今言ってくれれば買ってくる」

 俺とアリーの説明に、頷いたあと、母は少し考え込んで口を開く。


「欲しいものはあるんだけどね……

 今年の収穫では余裕があまりなさそうなんだよ」

 なるほど、今年は不作というわけではないが、作物を換金して儲けるほどには豊作ではない。

 しかし、今や俺もアリーも新人冒険者の中では群を抜いた収入を誇る。

 うんこスキルで掃除すれば、ベテラン冒険者を上回る稼ぎになるからだ。

 掃除のないときの薬草採集も、アリーのスキルのおかげで新人の稼ぎとは思えないほど稼いでいる。


「金なら心配いらないよ。

 俺もアリーも今では立派な冒険者だ。

 少々のものなら俺達が買ってくる」

「そうですよ、お義母さん。私たちにまかせてください」

「うーん、それなら甘えてもいいのかね……

 実は最新式の魔道コンロができたって聞いて欲しいと思っていたんだよ。

 二口の加熱部分に加えてグリルまで付いてるヤツで、スライムの魔石1つで10日も動くらしいんだ。

 だけど、値段が25万ギルもするからどうしようかと思っていたんだよ」


 ここまで聞いて、俺達は買ってきたお土産は渡したが、仕送りに用意した50万ギルを渡していないことに気がついた。

「しまった。仕送りの金を渡していなかったんだ」

「あっ、あたしもだわ」


 俺とアリーの様子に、母が不思議そうな表情で覗きこんでいる。

「仕送りってなんだい?」


 母の疑問に俺はバッグから金を出して説明する。

 臨時収入の100万ギルを俺のうちとアリーのうちで半分ずつにすることを告げると、母はとても喜んでいた。

「たった三ヶ月でこんなに立派になるなんて……

 お前達の稼いだ大切なお金、ありがたく使わせてもらうよ。

 このうち半分でコンロを買ってきておくれ」


 俺は50万ギルのうち25万ギルを再び受け取ると、次に魔道コンロを買ってくることを約束する。

 アリーも一旦家に戻って50万ギルを母親に渡したが、うちの話をすると、アリーのうちでも魔道コンロを買うことになった。


 俺達は両家の両親の見送りを受けて広場へと向かう。





 広場に着くと、牢の前には昨日よりも強烈になった悪臭に鼻を摘まむ村長の姿があった。

 俺はアリーと連れ立ち、街へ帰る報告を村長へとする。


村長むらおさ、こいつらは俺のスキルで街まで運ぼうと思います」

 俺のうんこ操作でうんこ牢ごと空を飛ばせれば問題なく移動できるのだ。


「コーター、そんなことが可能なのかの!?」

 村長が驚くが、俺は頷きながらうんこ牢を浮かび上がらせてみせる。


「このように、うんこでできているものなら浮かび上がらせて運ぶことができます」


「これは驚いたわい……、すごいものじゃな」

 一辺4メートルを超える巨大な立方体のうんこ牢が宙に舞い上がった様子に、村長は驚きの声を上げる。


 中の男達は昨日の激闘による疲れのためか未だ目覚めていない。


「村長、中の奴らが起きると色々うるさくなりますから、このまま街まで運んでいこうと思います」

「それは助かるのう。

 なにせ、このまま日が高くなれば気温が上がってくさいにおいが村中に拡散するからのう」

「それでは、俺達はこのままこいつらを連れて行きます。

 次は二週間後に先ほど依頼された物資を購入してこちらまで来ますので、よろしくお願いします」

「ああ、それじゃあ今後もよろしく頼むとするかの」

「お任せください。行ってきます」


 俺とアリーはうんこ牢を飛ばしながら村を後にする。

 少し離れたところに置いてあったうんこ雲に乗ると、うんこ牢とともに大空へ舞い上がった。


 俺達はできるだけ急いで移動する。

 行きは半分ほど歩きだったので随分時間がかかったが、帰りはスキルで空を飛んだためものの30分で街が見えてきた。時速に換算すると60キロは出ているだろう。


 空を飛ぶ茶色い雲と立方体は遠目にも目立つ。

 街から少し離れた草原にうんこ牢とうんこ雲を下ろすと、街の衛兵を呼びに行く。


 衛兵に4人を引き渡すとき、アコーギは疲れ切った表情でこちらに視線を向けることはなかったが、護衛の冒険者三人はキラキラした視線を俺に投げかけている。


 不気味だ。

 引き気味に冷や汗を流していると、リーダーの長剣士が声をかけてくる。

「コーターさん、うんこ牢の中で話したんですが、俺達三人はコーターさんの強さに惚れました。

 罪の償いが終わったら、俺達を是非子分にしてください」

「「お願いします!!」」

 三人から最敬礼をされてしまった。


「いや、俺には子分とか……」

「コーターさんが迷惑なら、俺達が勝手に子分にならせてもらいます。

 これからはコーターさんのことを親爺さんと呼ばせていただきます」

「「よろしくお願いします、親爺さん!!」」

 どうやら拒否権はないようだ……


 こうして俺の配下が3人増え、俺は遙か年上の冒険者3人から親爺さん呼ばわりされることになった。



 彼らは半年間の強制労働が終わったら俺の元に集うことを勝手に決め、おとなしく衛兵に連行された。


「ちっ、次はもっとマシな連中を雇ってくるからな」

 ただ一人、最後まで俺達のことを睨んでいたアコーギは、物騒な捨て台詞を残して3人に続く。

 どうやらお仕置きが足りていなかったようだ。

 あいつが出てくるまでに、新しいお仕置き方法を考えておくことにしようと思う。







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