第二十二話 取りあえず、うんこスキルで閉じ込めよう
今回は比較的おとなしめですが、うんこスキルは使用します。
村に着いた俺達はうんこ雲を少し離れた場所に下ろし、歩いてそれぞれの家へ挨拶に行く。
俺の両親も、アリーの両親も心から俺達のことを祝福してくれた。
まあ、アリーが俺と一緒に街へ行ったときから、遠からず俺達は結婚するだろうと思われていたようだ。
アコーギ達については、村に牢屋がなかったため村長に相談したところ、街から衛兵を呼ぶのがよいだろうと言うことで、それまでは村長の家の道具小屋へ詰め込んでおけばよいと言われた。しかし道具小屋では脱走の怖れがある。
それならということで、俺のスキルで奴らをぶち込むところを用意すると申し出る。
「コーター、本当にお前のスキルでそんなことができるのかの」
村長のソルベー爺さんは『うんこ』の有効利用について疑っているようだが、俺はこれまでの経験からスキル『うんこ』が単なるネタスキルではなく、状況によってはかなり有効だと思えるようになってきている。
「まかせてください。
取りあえず、村長の家の前の広場に作っていいでしょうか。
あそこなら人目もあるので脱走とかしにくいと思います」
俺の提案に村長が頷く。
俺はレベルアップしたスキル『うんこ創造』で大きなうんこの塊を出現させる。
続いて硬さをやわらかくし、形を整え立方体の箱を作る。
箱の全面だけは鉄格子のようにうんこ棒を組み合わせて中が見えるようにする。
仕上げに硬さを超硬いうんこに変えればできあがりだ。
「どうですか、村長。
俺のスキルで作った即席留置場です。
剣で切っても切れませんよ」
村長は恐る恐るうんこの格子に使ったうんこ棒を触り、形を確かめる。
「なるほどのう……
確かに、硬いな……」
「でしょ。
既に、剣も矢もはじき返すことがわかっています」
「確かにこれなら、脱走は無理じゃろう。
しかしな、コーター……
奴らをどうやってこの中に入れるつもりじゃ?」
なるほど、出入り口を作るのを忘れていた。
しかし問題ない。
「大丈夫です、村長。
俺のスキルでほら……」
俺はそう言うと、側面の硬さを変えて壁に穴を開ける。
「そうしておいて、奴らを入れてから、再び閉じます」
「なるほど……
では早速、咎人どもをこの中に入れておこう。
しかし、これ……
一旦入れてしまうとお前がいない限り出せないんじゃないか」
「ははは……
そうともいいますね……」
俺は村長のもっともな指摘を笑って誤魔化す。
さて、村の若い衆によって引き立てられてきたアコーギ達だが、反省しているのかと思ったが、俺を睨みつけてくる目つきに反省の意志が全くくみ取れない。
「さあ、この中に入るのじゃ」
村長に促されてイヤそうにうんこ牢へと入り、その材質に気がついたとたん、俺への眼力が一層強まったように感じた。
現状、こちらの方が人数も多いし、手かせで拘束されているので反抗の意志は示していないが、隙あらば何かしてきそうな雰囲気だ。
「おい、ソルベーさん。
俺をこのまま衛兵に引き渡せば、この村に商品を持ってくる奴はいなくなるぞ」
おとなしくしているかと思ったが、アコーギは村唯一の出入り商人という立場を前面に出して村長のソルべーを脅してきた。
「そうじゃのー……
まあ、それは仕方ないことじゃのー……
村の娘を娼館に売られるくらいなら、輪番で誰かが買い出しに行くこともやむを得ないわい」
どうやら村長は覚悟を決めているようだ。
「ふん、満足な荷馬車もないようなこんな村で、街まで大量の商品を買いに行ける奴なんているものか」
アコーギが吐き捨てるように言う。
ここは俺の出番かも知れない。
「それなら、俺とアリーで定期的に買い物を引き受けますよ。
俺達は冒険者なんで、指名依頼という形で、次回必要なものを今聞いておけば、日程を合わせて運ばせていただきます。
なんと言っても俺にはそれが可能なスキルがありますからね」
そう、俺にはうんこ雲に荷物を載せて運ぶという方法がある。
俺の話が聞こえたのだろう。うんこ牢の中のアコーギは悔しそうにこちらを睨む。
「ふぉふぉふぉ、そういうことならここはコーターとアリーに依頼しようかのう。
月に一度くらいは来れるのかのう」
「もちろんです。
要望があればもっと頻繁に来ることも出来ると思います。
手数料はできるだけ安くしておきますよ」
なんと言っても今の俺はうんこ雲をうんこ操作で飛ばせば、おそらく馬車よりもかなり早い時間で村まで往復できる。
午前中に薬草採集のどの依頼を受けて、里帰りついでに夕方から村へ帰ることも可能なのだ。
「ふぉふぉふぉ、それは頼もしいのう……
そういうわけじゃから、アコーギさんよ、おとなしく衛兵さんに引き渡されとくれ
ふぉふぉふぉ……」
村長は機嫌良く笑うと広場のうんこ牢の前を後にする。
少し離れてから、小声で俺に聞いてきた。
「ところでコーター、あれの臭いは何とかできないのかのう……」
そう、うんこ牢は頑丈といえども所詮はうんこだ。
その臭いはうんこそのものであることに違いはない。
そんな臭いブツが村の中央広場にでんと居座れば、風下になった家々は大迷惑なのだ。
「すいません村長。
所詮俺のスキルは『うんこ』なんで、臭いは何ともなりかねます」
「そうか……、まあ、致し方ないのう」
俺の答えに村長は鼻を摘まみながらぶつぶつと独り言をこぼし、自宅へと足を向けた。
明日はリアルの関係で投稿できないと思います。ご容赦ください。