第二十一話 婚約の報告へ行こう ~最強? うんこアーマー~
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本話もうんこスキルで戦います。
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うんこアーマーは完成した。
しかし、このままでは俺達は動くこともままならない。
なぜなら、関節まで超硬いうんこで固められているからだ。
そこで俺は関節を覆う部分と、腰や首回りなど、ある程度動かなければならない部分のうんこを再び液便に変化させ、取り除いたり少し大きくして動けるように調整する。
その状態で、再び超硬いうんこにした後は、残ったうんこを武器化する。
うんこの剣はいくら硬くても切れ味が悪そうなので、長さ150センチ、直径3センチほどのうんこ棒を作成し、超硬いうんこにする。
しっかり握って振り回してみるが、取り回しは良さそうだ。うんこだけど……
さて後は、全く防御されていない顔だけである。
「アリー、少し気持ち悪いかも知れないがちょっと息を止めて耐えてくれ」
「ええ、覚悟はできているわ」
俺の考えを読んだのか、アリーは一旦目をつぶる。
俺はアリーの頭がすっぽり覆われる中空の球状液便を作り、アリーにかぶせた後、うんこ鎧の肩の部分に接合し、目の部分を開けて視界を確保した後、超硬いうんこへと変化させる。
フルフェイスうんこヘルメットの完成である。
「もう、目を開けていいぞアリー」
「臭いわ、コーター」
うんこにすっぽり覆われたアリーは流石にこれだけの至近距離でうんこを臭っているため嫌そうだ。
「我慢できるか」
「何とか耐えるわ」
頼もしいアリーの言葉を確認すると、俺は自分もフルフェイスうんこヘルメットを装着した。
「戦闘準備完了だ。覚悟はいいか」
「いいわ、あいつらを叩きのめしましょう」
うんこ円盤に視界を遮られていたため、アコーギ達は俺とアリーが全身うんこアーマーの戦士へと変身したことに気がついていない。
俺は、まず火の魔法が使える魔法使いの冒険者を潰すべく、うんこ円盤を操作して呪文を詠唱している小柄な男へ突撃する。
上空から急降下するうんこ円盤を、長剣の男と弓使いは避けたが、呪文に集中していた魔法使いは躱しきれずに右肩を痛打して地面に転がる。
そこで俺とアリーは円盤から降り、うんこ棒で魔法使いをしたたかに打ち据える。
「ぐえぇ」
奇怪な悲鳴を上げて魔法使いは意識を手放した。
「ああ、よくもチョーダをやってくれたな」
弓使いの男が矢を放ってくるが、火炎を纏わないただの矢は、俺達のうんこアーマーの敵ではない。
キンッ
矢が俺のうんこアーマーの胸部に当たり、金属音をたてて地面に落ちる。
「ちくしょう」
弓使いは次の矢をつがえつるが、そのときヤツの右後ろから、先ほどまで俺達が乗っていたうんこ円盤が弓使いの背中を直撃する。
「ぶふぉ」
変な声を漏らしながら弓使いは俺達のいる方へ吹き飛ばされてくる。
俺は飛んでくるヤツの鳩尾めがけてうんこ棒を突き出した。
「ぎゅっ」
男はうめき声を一つあげるとその場に崩れ落ちた。
「おのれーーー、ホルンモの仇だーーーー」
長剣使いが長剣を上段に構え、俺めがけて走ってくる。
俺は奴の振り下ろしてきた剣を棒で受ける。
ガキンッ
大きな金属音がして剣を受け止めたうんこ棒は無傷だが、いかんせん元の俺と長剣使いの体力や力が違った。
俺は徐々に押し込まれていく。
まずいと思ったそのとき、アリーが動いた。
アリーは後ろに回り込み、長剣使いの頭頂をうんこ棒で力一杯ひっぱたく。
「げひょっ」
一撃だった。長剣使いは頭から噴水のように血を噴き出しながら白目をむいてその場に仰向けに倒れた。
「大丈夫だったコーター」
「ああ、助かったよアリー」
さてこれで残る敵は諸悪の根源、行商人のアコーギのみである。
「ば……、ばかな……
センマまでやられただと……」
アコーギはへたりこんだ姿勢のまま何か呟いている。
俺はそんなアコーギに一撃をくれるべく一歩踏み出す。
「ひっ、た……、た、た、た、助けてくれ……」
アコーギはへたりこんだ姿勢のまま後ろへと膝行り下がる。
「ここまでやられたんだ。
このまま済ます分けないだろ」
「ぐえぇっ」
俺は脳天へ容赦なくうんこ棒を叩きつけ、アコーギの意識を刈り取った。
「やったね、コーター」
アリーがこちらへ駆け寄ってくる。うんこアーマーを着込んだまま……
流石にこのまま抱きしめ合うわけにはいかない。
俺は素早くうんこアーマーを液便化して解除し、アリーと抱きしめあう。
解除したうんこはアコーギ達を拘束するのに再利用だ。
手かせ、足かせとして奴らの手足を固め、超硬いうんこにする。
「ねえ、コーター……
こいつら、このままここに捨てておくの」
アリーの言葉にしばし俺は考える。
今まで道路掃除以外であまり役に立たないと思っていたうんこスキルだが、今回のアコーギ達の襲撃で、以外と応用が利くことが判明した。
こいつらをこのままここに放置しておけば、危険な魔物はあまりでない地域だが、肉食の獣はかなりいるのでその内奴らの胃の中に入ることは確実だろう。
許せない奴らだが、奴らに殺意がなかった以上、こちらもアコーギ達の命まで取ってしまうのは躊躇われる。
何とかこいつらを村か町まで連れて行けないものか……
拘束を外して歩かせるのも手だが、何かの弾みに反撃されるかも知れないと思うと、手かせはもちろん足かせも外したくはない。
「そうだな……
何とかこのままの状態で運びたいと思っているんだが……」
「でも、私たち二人でこいつら4人を担ぐなんて無理よ」
「そうだよな……」
アリーのもっともな意見に頷きながら、俺は考える。
そのとき、ふと、弓使いを後ろから突き飛ばした超硬いうんこの円盤が目に入る。
そうだ、これだ。
いや、これを応用すれば村までの移動も早めることができるかも知れない。見た目は悪そうだが……
俺は思いついたことをアリーに告げる。
「そうね、コーターのスキルを使えば出来ると思うし、移動も楽になるけど、見た目がちょっと気になるわね。
そうだ、見た目をもっとかわいらしくしたらマシにならないかしら。
例えばね……」
俺はアリーの意見を取り入れて、早速作業に入る。
まずはうんこ創造スキルでうんこを大量生産する。
次に、うんこ操作で形を雲のようにし、みんなが乗れるサイズにする。
そしてうんこ変化スキルで超硬いうんこに変えれば、運搬用うんこ雲の完成である。
俺達は身動きが取れないアコーギ達をうんこ雲に乗せると自分たちもうんこ雲に乗り込む。
そしてうんこ雲をうんこ操作スキルで空中へ浮かべ、そのまま大空へ飛び立った。
雲一つない青空に、茶色いうんこ雲だけが空を飛ぶ。
眼下には草原と森がどこまでも広がる。
このままうんこ雲で村までひとっ飛びだ。
この形なら、うんこの円盤よりかなりマシだろう。
雲に乗って空を飛ぶとか、とてもファンタジーだ。うんこ雲だけど……
とその時、俺の脳裏に例の声が聞こえてきた。
「スキル『うんこ』がレベルアップしました。
スキル『うんこ』はレベル7からレベル8になります。
スキル『うんこ操作』がレベルアップしました。
スキル『うんこ操作』はレベル6からレベル7になります。
スキル『うんこ変化』がレベルアップしました。
スキル『うんこ変化』はレベル2からレベル3になります。
スキル『うんこ創造』がレベルアップしました。
スキル『うんこ創造』はレベル0からレベル1になります。
スキル『うんこ化』レベル0が派生しました。
スキル『うんこの下僕』は条件を満たしていませんのでレベルは3のままです」
また、レベルアップしてしまった。
しかも一番高いスキル『うんこ』はレベル8だ。
伝説の勇者と言われた聖剣使いと、レベルでは肩を並べている。
このまま行けば、不可能とされたカンストレベル10になる日も近いのではなかろうか。
うんこだけど……
普通、レベルが8と言えば伝説級の偉人になれるレベルなのだ。
しかし俺のレベル8スキルは『うんこ』……
笑いのネタにはなっても伝説の偉人にはなれそうにない……
理不尽だ……
おれは改めておのれのスキルの不幸を呪う。
空はどこまでも青く澄み渡り、俺達はぽつんとうんこ雲に乗って青い空に浮かんでいる。
のどかだ……
この身の不幸さえなければ……
しばし呆然としたがふつふつと怒りがこみ上げてくる。
「蒼い空の…………
ばっかやろーーーーーーーー!!!!」
俺は思わずまっ青な空へと八つ当たりする。
「コーター
貴方には私がいるわ。
大丈夫よ……」
いつの間にかアリーが寄り添い、俺を横から抱きしめてくれる。
「ありがとう、アリー……」
「どういたしまして。
さあ、コーター、涙を拭いてあげるわ」
アリーはポケットから取り出したハンカチで、いつものように俺の頬を伝っていた涙を拭いてくれた。
例によって、俺が見たことのない高級そうな布きれでできているハンカチだ。
アリーさん。いったいいくつ拾っているんですか……
「アリー……
そのハンカチは……」
「大丈夫よコーター
まだたくさんあるから……」
俺はもはや突っ込むことを諦め、代わりにアリーを抱きしめた。
雲一つない青空に、俺のスキルでできた茶色いうんこ雲だけがぽつんと浮かんでいる。
このときの俺は、人類最高到達レベルにスキル『うんこ』が到達した衝撃から、新しく派生したスキル『うんこ化』の恐ろしさに気がついていなかった。




