第二十話 婚約の報告へ行こう ~うんこスキルで戦えるか?~
本話もうんこスキル全開です。ご注意ください。
「アリー、しっかりしろ。
頑張れ……」
「うん、コーター。私、ガンバルゥゥゥ……」
俺達は首から下をうんこボールと化しながら青空に舞い上がる。
「おい、お前ら、何をしている。
弓使い!
あの糞玉ごと弓で射落とせ!
魔法使いは魔法で落とせ」
アコーギががなり立てる。
まずい。
このまま弓で射られれば、初戦はうんこ……、貫通して中の俺達に矢が刺さるかも知れない。
どうする、コーター……
考えろ……
打開策は必ずある……
自分を信じるんだコーター……
俺は自分を奮い立たせ、脳みそをフル回転させる。
弓使いが矢をつがえ、俺達に射かけてくる。
放たれた矢が迫る。
時間がない……
「そうだ、これだ!」
俺は思いついた方法を即実行する。
スキル『うんこ変化』超硬いうんこを発動……
瞬間、俺達を取り囲むうんこボールは流動性を失いガチッと固まる。
キンッ
うんこらしからぬ金属音を響かせ、鏃がはじかれて矢は地面へと落ちる。
「ウインドカッター」
魔法使いが詠唱を終え、風魔法を放つが、金属の鏃でも傷一つ付かない超硬質うんこは、風邪の刃も当然のようにはじき返す。
「ええい、こうなったら火だ!火を使え!!」
アコーギの命令一下、魔法使いは火炎の魔法を、弓使いは鏃に布を巻いて油をしみこませ、火矢を準備し始める。
まずい。
実はうんこは乾燥させると燃料になるくらいよく燃える。
現状の超硬いうんこは、将に火に弱いと推測できる。
「火矢を喰らえ」
「ファイヤーアロー」
弓使いと魔法使いの火炎攻撃がほぼ同時に迫る。
迫り来る炎……
このままでは俺もアリーもうんこボールと一緒に燃え上がることになる。
アリー燃え上がるのは夜のベットだけにしたいものだ。
いや、冗談を言っている場合じゃない。
何か策はないか……
そうだ、これだ。これしかない。
俺は超硬いうんことなっているうんこボールの表面だけを瞬間で「液便」に変える。
ジュッ…… ジュジュッ……
液便に激突した火矢と火魔法は、液便を燃え上がらせることなく鎮火する。
そして……
ぶつかった衝撃で液便が飛び散る。
飛び散った液便は当然真下から攻撃していたアコーギ達4人に茶色い雨となって降り注ぐ。
「ぐえっ」「何じゃこりゃー」「く、臭い」「ぐへへへ」
4人は液便の豪雨に奇声を発する。
これで取りあえず、奴らの攻撃は防いだ。
うんこボールの中身は超硬いうんこなので、流動させなくても俺達がうんこボールから落ちてしまうことはない。
いや、むしろ流動性がなさ過ぎて、俺達は超硬いうんこのおかげで、ぴくりとも動くことができない。
体をうんこで撫で回されることはなくなったが、これでは反撃できない。
このまま飛び去るのも手だが、路地裏のチンピラと違い、こいつらはしつこく俺とアリーを狙ってくる可能性がある。
奴らをこのまま放置するわけにはいかない。
何か手はないのか……
俺はうんこボールに包まれながらひたすら考える。
アコーギ達も下から上空のうんこボールへ弓と魔法で攻撃してくるが、超硬いうんこと液便の組み合わせは鉄壁で、俺達にダメージを通すことはできていない。
膠着状態が続くこと1分、敵の弓使いの矢が尽きた頃、俺の脳裏を本日3度目のひらめきが稲妻のごとく駆け抜ける。
今日の俺は冴えている。
俺は一旦うんこボールとともに上空高く舞い上がり、弓と魔法の射程外へと移動する。
「逃げるのかーーーー」
下からアコーギ達が叫んでいるが、別に逃げるつもりはない。
俺のアイデアを実践するには一旦うんこボールを解除する必要があるため、上空へ移動したのだ。
射程外へ逃れると、まずは足場として、俺達の足下に直径2メートルの超硬いうんこでできた円盤を創造する。
足場をうんこ操作で空中に固定したところでうんこボールを液便化して、一旦身の回りから離す。
円盤はしっかりと俺達の体重を支え、壊れる様子はない。
しかし、この状態でこのまま反撃するのはリスクが伴う。
なんと言っても、うんこ円盤の上の俺達は無防備で防御力ゼロなのだ。
「アリー、ちょっと不快かも知れないが、10秒でいい。我慢してくれ」
そう言うと俺は、自分たちに液便となったうんこボールをぶつけ、首から下を液便塗れにする。
いや、正確には、自分たちの体を厚さ5ミリの液便が覆うようにしたのだ。
「うえぇ……
コーター、流石にこれは気持ち悪いよ」
アリーが正常な反応を示してくれたことに少し安心しながら、俺は『うんこ変化』で液便を超硬いうんこへと変化させる。
これが世界初のうんこアーマー完成の瞬間であった。