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第一五話 使えるのか? このスキル……


 厳つい3人の男が顔を赤らめながら最敬礼するのに見送られ、俺とアリーは冒険者ギルドを出て、薬草の採取に向かう。


「「「アニキ、行ってらっしゃいませ」」」

 後ろから距離感も考えずに大きな声で綺麗にハモって叫ぶ連中に、釘を刺しておく。

「お前達も、まじめにやれよ」

「はい、アニキの仰せとあらば!」

「アニキの舎弟として恥ずかしくない仕事をします」

「アニキに認めてもらえる仕事ができましたら、最高のご褒美をお願いします」


 最後のヤツの台詞にどん引きしながら、俺は急いで冒険者ギルドを離れる。




 街の門をくぐり、城壁沿いに移動して街道からそれると雑草が生い茂る緑の草原となる。

 俺は薬草の採取場所に到着する前にスキルの確認をしておく。


 スキル『うんこ変化』レベル1

 自分の周囲2メートルまでのうんこを変化させることができる。

 レベル1では『とても硬いうんこ』『硬いうんこ』『普通のうんこ』『やわらかいうんこ』の四つに変化させることがでる。


 うん、期待していなかった。というか、期待のしようもないスキルではあるが……

 変化先に『とても硬いうんこ』が増えていた。

 憎たらしいヤツのうんこをこれに変えれば、糞づまり確定である。


 続いて新しく派生した『うんこの下僕』も確認する。

 まあ、確認するまでもなくあれなんだろうが……


 『うんこの下僕』レベル3

 スキル『うんこ』を信奉し、『うんこ』のためなら何でもできる者を従えると発生する派生スキル。

 このスキルを持つ者の有効スキル範囲に下僕がいた場合、その下僕にスキルレベルに応じた補正がかかる。

 レベル3では、スキル保持者の周囲30メートルまでの下僕に、全ステータス30%アップの補正となる。


 なんと言うことだ。

 もしかしてそうなんじゃないかと思っていたが、あの三人組は俺の、いや正確には俺のスキル『うんこ』の信奉者となっていたのだ。

 しかも奴らが俺の周囲にいると、奴らのステータスに30%もの補正がかかることになる。

 今のあいつらは俺を崇拝しているらしいから、アップしたステータスで俺に害をなすことは考えなくても良さそうだが、これは俺があいつらと行動を共にするというフラグなのか?

 俺にあいつらをどうしろと言うんだ……

 神は一体何を考えているのか……


 俺は歩みを止めてしばし呆然と立ち尽くす。

 辺りは青々とした牧草もどきが俺の膝丈まで生えており、見渡す限り緑一色だ。

 快晴の青空にはぽっかりと大きな白い雲が浮かび、のんびりと風に流されている。


 のどかだ……

 どこまでものどかなのに、なぜ俺はこんなにも満たされない……

 なぜ俺だけがこんな目に会う……

 なぜ俺だけがスキル『うんこ』なんだ……

 なんだか無性に腹立たしい……


 こんなにも理不尽な状態にもかかわらず、何故に雲はあんなにものんびりしているのか……


「白い雲の…………

 ばっかやろーーーーーーーー!!!!」

 俺は思わず人気のほとんどない草原で空の雲に向かって絶叫していた。


「大丈夫よ、コーター

 私が貴方と一緒にいるから」

 アリーは俺に寄り添い、いつの間にか頬を伝っていた涙を優しくハンカチで拭いてくれる。


「ありがとう、アリー

 もう大丈夫……」

 俺はアリーに礼を言い、ふと彼女の手元を見て言葉が止まる。


 あれ……。

 アリーさん?

 君、こんな高そうな布のハンカチ、持っていましたか?

 まさか、これ……

 まだ、持っていたんですか……

 昨日の伯爵邸でトイレタンクからサルベージしたおしりを拭く布を……


 しかし、さすがは伯爵邸。

 おしりを拭く布まで庶民と違って高級感に溢れている……


 いや、そうじゃない。

 今はその布が……

 昨日まで糞尿にどっぷりとつかっていたその布が……

 俺の頬を撫で回していることの方が問題なのだ。


 しかし、これは本当に例の布なのか……???

 俺は怖くてアリーに確認することはできなかった。

 今は、一刻も早くこの状況を脱することだ。

 あまりの衝撃で涙は既に止まっている。


「大丈夫……

 もう大丈夫だアリー、先を急ごう」


 俺はやっとの事で言葉をひねり出し、アリーのハンカチから逃れたのだった。







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